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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第5章

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124/200

121.5章 - 第15話 ”現実への準備 #1/3”

 すごく久しぶりに感じる現実世界。前回のログアウトからゲーム内時間2か月が経過していますから、それも当然ですか。浮遊するドローンカメラに映るのは以前の病室……?

「サイバーな医療ポッド? が、4台に増えている?」


 前回来た時に2台に増えていたのは、ルナリスのためかなと思いましたが。4台?

 どなたか、現実で過ごせることになった住民の方の分でしょうか。


「お久しぶりですナオ様」

 戸口には、お久しぶりな、スーツ姿の上に白衣の斎賀さん。

 部屋の片隅には前回もあった机とモニターが置かれています。

 さらに今回はその席にさらに2つのドローンカメラが。

 完全な球体に、回転ローターのような飛行機構が何も見当たらない、まさに近未来のイメージそのままな形状だったのですねこれ。今まで自分がこれに入っている状態でしたから、外見を終ぞ知りませんでした。


「今回はお時間について無理を申しまして」

「いえ、このためであれば当然のことかと。むしろ早い時間に、こちらこそ申し訳ないです」

 実は今回、ルナリスと紗雪も呼ばれているのです。紗雪は私と同じで問題ないのですが、ルナリスは夢の中でこちらに召喚されるという形をとるため、進化が終わった夜。明け方4時にこちらに来ているというわけです。現実では8月17日(日)の午前7時ですね。


「いえいえ。では、彼女達とつなぎますね」

 ふわりと浮かび上がる2台のドローンカメラ。互いの姿は映し出されませんが。


「ルナリス、紗雪、聞こえますか?」

「紗雪は問題なく~」

「はい……聞こえ……ます。ここが……?」

「そうです。すでに伝えていましたが、私のこの世界での身体も蘇生中です。ですので、この視界を映し出す機械、使い魔のようなものを私も使っています」

「はい。わかり……ます。こちらが……治療施設の一室……ですか」

「そのようなものだと思います」

「私の本体がある施設もここですよ~」


 しばらく慣れるのを待ってくださった斎賀さんがそこで

「失礼しますね。私が、創造神様。Steps to Elysium Online運営であり開発元でもあるDeus ex Machina Corp.の、こちら側での眷属でナオ様の担当も務めております。斎賀と申します」

「よろしく……お願いいたし……ます。ルナリス、でございます」


「まずは、私共がお出ししたクエストの達成、おめでとうございます。ルナリスさんがこちら側へと移住いただく条件クエストを無事完遂いただいた事を確認しました。また、想像を超えて、しがらみの大部分を消し飛ばすという段階まで進められましたので、ルナリスさんの移住に障害は事実上なくなりました」

「クロウロード王とルゥさん関連でまた何かありそうですが」

「そこは、今後の新たなシナリオとして、プレイヤー目線で挑んでいただいて問題ないと判断しております。皆様の異論がなければ9月の初めにはお三方ともに、身体のご用意が完了する見通しが立ちました。対外的な移住の発表はまだ調整中ですが、こちらでの身体に慣れていただく意味でも、ご用意ができ次第、現実へのルナリスさんの移住。そして、ナオさんの蘇生を完遂させていただきたいと思います」

「いよいよ、なのですね。ルナリス、紗雪、どうでしょう? そのような流れで決定してしまって大丈夫ですか?」

 顔も姿も見えない今の状態ですが、彼女達の表情も仕草も、目に浮かぶようですね。


「はい……待ち望んで……おりました。是非に」

「私はもちろんこちら側の存在ですから。ただ、今のお話ですと少し違和感が?」


「前回はナオさんへも多少、ぼかしてお話せざるを得ませんでしたが。無事、目標を達成いただきましたので、詳らかにお話いたしましょう。元々、紗雪さんについては、他のナビAIと同じ扱いを予定していました。しかし、魂が芽生えた。これは本当にめでたい事でして、Deus ex Machina Corp.としても、最大の課題の一つであった難題に、成功例が生み出されたことになります。我々は魂の有無を、マナを生み出すことができるか否か、をもって判定しています。まず、住民について。ボトムアップ型と申しましょうか。精神的構造、魂の在り方について、ヒトが生み出したマナを元に、疑似的な生殖過程を繰り返すことで、一定レベル以上の生育に成功しています」


 と、そこで点灯されるモニター。映し出されたのは3つの段階に分かれた三角形の図。いわゆる、ピラミッド型図形と呼ばれるもの。その1番上の三角形の部分が強調表示され。


「ルナリスさんをはじめ、極めて特殊なユニークNPCとして配置されている住民は、そうして生まれた中でも、完全な魂を持つ存在です。それゆえサーバー毎に異なる性格、容姿を有する、別の存在。同じ存在が2人と存在せず。複製を行ったとしても、魂が再現されません。こうした住民はアーリーアクセス空間で、金銭目的や一般的なゲームプレイにはお勧めしないと、一次ふるいにかけた上でなお、運命値50以上を選択し。なおかつ、その中でも、入念な調査に合格されたプレイヤーとのみ、初期の接点を持ちうるように配置されています。実はあのアンケートの裏で、全プレイヤーへの簡易スキャンとは別次元の。魂の在り様そのものを精査する施策がとられています」

 またも、しれっと明かされるDeus ex Machina Corp.の超技術なわけですが。


「紗雪から聞いていた事、ルナリスとの出会いに、干渉したという点とは?」

「それも事実ですが、ナビAIにもこの情報は開示されていませんので、事実の一部。ナビAI自身も思い込まされた背景に基づいた情報ではありますね。ほぼ完全な魂を有する住民に関しては、後付けの変更が不可能です。ナビAIが条件に完全に適合する住民を検索し、偶然。それこそ運命的に、完全適合しあったのがルナリスさんとナオさんという事になります」


 ふわーり、ふわーりと、少し所在投げに浮遊する1台のドローンカメラ。

「なんでしょうね、こう、居心地が悪いといいますかですね。私がこう、生み出してしまったのでは? とか、干渉したとか、ひきあわせた的な発想からの、嫉妬的なあれとか、あれぇ……」

「紗雪が真摯に引き合わせてくれたことに、何一つ相違ないと思いますよ。ありがとうございます」

「紗雪ちゃんの……おかげ……です」

 くるくるくるーっと器用にその場で回転し。

「そ、そういう事にしておきましょう!」


 そんな様子を微笑ましそうに見ていた斎賀さんが、あえて触れず、続きを語り始めてくださいます。

「そして2段目、残念ながら完全ではないものの疑似的な魂を有するに至った存在。彼らが世界を構成するほとんどの住民となります。彼らは現実の人間や1段目の特別な住民達程でこそないものの、ある程度のマナを生み出せることが確認されています。そしてそこからさらに、人との関わりの中で魂が昇華され、完全となる事を期待されています。事実、その兆候が見えている住民も多数、観測されています。最後に3段目。最も高い比率を占める層です。これは魂の創出が認められず、機械的な反応、プログラムにすぎない存在。住民としては、”始まりの街”周辺に配置されているのが彼らであり。また、ほとんどのモンスター等のAIがこれにあたります」

「なるほど」


「住民型のアプローチはこのように魂の創出段階において既に一定の成功をおさめ、次の段階。肉体への適合が実証事件段階をクリアし、社会実証へと進みました。これがルナリスさんに参画いただく今回の移住計画ですね。そうしてお話が戻り、ナビAIについてです。彼らは住民とは逆。徹底的に作りこまれた、トップダウン型のAIです。演算領域等の基盤こそマナを活用していますが、その生成過程はマナ技術によらない方式がとられています。残念ながらこれまでこのアプローチで魂の創出。マナを生み出せる存在の創出に至ることはできませんでした。ナビAIに現実世界でもプレイヤーの傍に寄り添う機会をつくる。オーダーメイドの疑似的な身体を現実に用意する。そのようにイベントで発表したプロジェクトは、このトップダウン型AIに魂を生み出すプロジェクトの一環です。ゲーム内ではない。現実での人間との相互作用において、魂が創出されるかを試すわけですね。そうこうしている間に生じた初の例外であり、成功例が、紗雪さんなわけです」

「わ、私、実はすごいんですね!」


「ええ。現状、複製も再現もできない唯一の例外です。そこで、紗雪さんにはナビAIの機械的な身体ではなく。住民、ルナリスさんと同様、生身の身体を創出するべきとの結論に至りました。以前ナオさんにはお伝えしましたが、生身と申しましても、現代における人間基準ではなく。そうですね、Deus ex Machina Corp.が誇るマナ技術を、惜しみなくつぎ込み生成する、肉体です。詳細はいよいよ、目前に迫ってきたその日を、お待ちいただければと思いますが」


「何と申しますか、ただでさえ命を救っていただき、さらに蘇生というだけでも感謝することしきりの中、申し訳なさすぎるように思うのですが」


「いえ、当然の事です。なにより私共としましても、紗雪さんの件を筆頭に、大いに益がある事ですので。むしろ、そのように進めさせていただけないと困ってしまいます」

 安心させるような朗らかな笑みを浮かべる斎賀さん。


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