117.5章-第11話 ”一つ目の到達点 変質と進化 #3/6”
“すべての制限が一時的に解除され、まずは、お三方の存在の核が形成されます”
先ほどまでの団欒の空間が薄れゆき、私達は無限に広がる真っ白な空間の中に、浮かんでいました。
そこはちょうど、Steps to Elysium Online開始前、アーリーアクセス空間と同じよう。
胸の高さに浮かぶ”不朽の束縛”を中心に見つめるように、白い翼と黒い翼の私が向かい合い、その両隣、ちょうど正四角形を成す位置にルナリスと、紗雪の少女体がドール体を抱っこした姿で。
不朽の束縛からピンクダイヤモンドが外れ、中央に浮かび上がり。
ルナリスの眼前に光が透過するとまさに彼女の蒼銀色の瞳に類似した、ブルーダイヤモンド。
紗雪の眼前に、彼女の翡翠色の瞳を思わせる、グリーンダイヤモンド。
それぞれ、同じ大きさの、大きな60ct(3㎝×2㎝サイズ)はあるオーバルミックスカットに、コンケーブカットが施された神秘的な輝きを秘めています。
金銀2色の茨で形作られたチョーカー”不朽の束縛”の前面に新たに2つの石留めが形成され、3つの異なる色のダイヤモンドが、ピンクダイヤモンドを中心として隣り合って収まる形で装飾されました。
さらにその3つの美しい宝石を彩るように、透明な輝きを宿すダイヤモンドがちりばめられ、最高の美しさを秘めるチョーカーが完成されました。
【パーテイーアナウンス:”ナオ”、”ルナリス”、”紗雪”の魂核が”不朽の束縛”に統合されました。以後3名の成長リソースが共有されます。インベントリが統合、共有化されました】
【パーテイーアナウンス:3名の拡張スキルスロットを全てリセット。保有スキルスロットエンハンサー計6個が追加消費されました。一部重複スキル結晶をリソースへ転換。共有スキルスロットが4個、生成されました】
【パーテイーアナウンス:”ナオ”のスキル”☆5 顕現”、 “☆8 二重性”、 ”不朽の束縛における呪い”が、統合されます。スキル”☆7 統合スキル-多重顕現”が生じ、共有スキルスロットに習得されました。ナオの魂核に対し制約 “☆8二重性の恵みと呪縛”が課されました】
“こんな感じになりましたね。ナオさんにとって封印体であることは変わりませんが魔核が変質。さらに皆さんの魂核が生成され、存在の根源その物、本体たる魂が永遠に離れず、共にいられるようになりました。各自のステータスは今は表示できない状態になっています”
そろって目が点になった3人の、目の前に表示されたステータス画面。
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名称:不朽の束縛
種別:装飾品
レアリティー:☆8 禁忌級
形状:チョーカー
状態:不壊
Lv:100 ※共有-ナオ、ルナリス、紗雪
ステータス傾向値
MP :25
<装備>
装飾1:☆7 Lock:魂核 ※ピンクダイヤモンド
制約-スキル”☆8二重性の恵みと呪縛”を顕現体に強制Lock
装飾2:☆7 Lock:魂核 ※ブルーダイヤモンド
装飾3:☆7 Lock:魂核(紗雪) ※グリーンダイヤモンド
装飾4:☆5 Lock:茨の首飾り (神銀/ミスリル)
装飾5:★6 Lock:茨の首飾り (呪われた神金/オリハルコン)
※各魂核の形状:60ct/オーバルミックスカット+コンケーブカット (約2cm×3cm)
※各魂核への付加効果:老化停止、不死
<共有スキルスロット>
※拡張時必要なリソースについて、Slot番号+10と同等とみなされ、さらにその2倍のリソースが必要
(例:共有Slot5の解放に必要なスキルスロットエンハンサー=5×5×2=50個
共有Slot1:☆7 Lock:多重顕現
複数のアバターを顕現体として設定、同時顕現する事が可能
顕現方式は顕現体ごとに個別で、実体顕現と幻影顕現の選択が可能
顕現に必要な魔力リソースは共有され、その回復量は、各顕現体の魔力回復量の総量に比例する
☆8 老化停止
☆8 不死
★6 制限:顕現体-スキル帰属化
※習得したスキルが帰属化される。つまり、結晶化し、販売、譲渡することができない(換金も不可)
※テイム、眷属等の対象のスキルも帰属化される。
※テイム、眷属等の対象へは貸与可能。貸与先から第三者への譲渡は不可。
共有Slot2:☆8 Lock:魔力変質:神代魔法適正
共有Slot3:☆8 Lock:神威-領域規定
共有Slot4:☆5 Lock:意思疎通 (対象制限:ナオ、ルナリス、紗雪)
<ナオの封印体-制約“☆8二重性の恵みと呪縛”>
”☆8二重性”、”不朽の束縛の呪いとスキル”を踏襲。以下、従前との差分のみを以下表示。
・新規追加制限
顕現体の上限が表/裏の2体に制限される
・効果増強
☆7 特化効果強化(魔術、武術) ※効果量SLv×10% ⇒SLv×20%に上昇
☆7 反属性強化 ※効果量SLv×10% ⇒SLv×20%に上昇
・以下スキル効果が消滅
顕現体の切り替えに関わる制限の全面的な削除(顕現体の表裏切り替えで自動的に装備も変わる、等)
★5 Lock:呪い:装着者-魔力(MP)吸収 SLv8
★8 Lock:呪い:装着者-強制契約/眷属化 SLv8
★8 Lock:呪い:装着者-身体虚弱 SLv8
★6 制限:強制契約 SLv8
★7 制限:獲得経験値半減
★6 制限:顕現体-装備枠Lock×1:封印の楔
<その他:共有インベントリ>
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「つまるところ……3人とも”魂核”が本体になった。これは、私の封印体が本体だったのに近い状態ですね。インベントリが共有されるようになった。ルナリスからすると大幅に容量が増えたことになりますね。代わりにプライバシーがどうしても必要な場合、空間拡張ポーチを使いなさいと」
「紗雪の本体は元々現実の演算領域でしたから、さして変わらないですね。一番影響が大きいのはルナリスちゃんかな」
当のルナリスは首を傾げ
「3人で……常に、一緒に……いられる。離れ離れに……もう、ならない。……嬉しい、です」
と、むしろご満悦。確かにこの前みたいに、ばらばらに連れ去られるようなことがもうない、という事ですね。肉体が顕現体となるのはいいのか……と思いますが、魂の在り所がそもそも果たしで、どこであったのか。という問題に対して、体外に魂が明確に存在するようになった。という点以外、問題ないのかもしれません。……いや、問題はある気がしますが。
「メリットとして大きいのが、スキルの共有、呪いによるルナリスちゃんの身体虚弱がなくなる、ルナリスちゃんも神代魔法の素養を獲得。顕現魔力に関しては、ナオさんは相変わらず魔力回復がほぼできないので、ルナリスちゃんと私の回復依存です。が、問題ないでしょう」
「うん、紗雪の言うとおりだね、そして私に関しては、二重性の制限とメリットはそのまま踏襲っと。実質デメリットがかなり解消されたに等しい気がしますね。スキルスロットにしても、各自の拡張分がリセットされましたが、スキルスロットエンハンサーの数的には16個分、得をしています」
と、問題がないことを確認し合っている中、ルナリスだけが、顔をわずかに曇らせ。
「”不朽の束縛”を、わたくし……は、もう……担えないのでしょうか。いつも、首元に……ナオ……様の束縛……を感じられる、幸福……は」
え、そんな風に思っていたのですか? と、びっくりするとともに、
「確かに、魂核が1個の装備品に統一され、さらに全員の肉体が顕現体になってしまうとすると、不朽の束縛の存在は、どうなるのでしょう」
一応私の本体で、今後は3人全員の共通の本体になるという事だと思うのですが。
“はい。ルナリスさん、安心してくださいね。ここまでを飲み込んでいただいたところで、その不安解消のためにも、次の段階に進みましょう“
創造神様の眷属さんが促すと、3人の魂核が宿った”不朽の束縛”からなんと、5つの完全に同じ形状の分身が発生したではありませんか。
そして、新たに生まれた分身のそれぞれが、ルナリス、私の顕現体表/裏、紗雪の少女体とドール体の首に装着されてしまいました。
【パーテイーアナウンス:”ナオ”、”ルナリス”、”紗雪”エンゲージメントアクセサリとして、”不朽の束縛”が登録されました】
“以後、皆様の本体。実態として唯一本物の”不朽の束縛”はどこかに保管していただくことになります。皆様の領域であるここ、”悠久の楽園”の中が良いかと思いますよ”
つまり、誰かが本体を装備し続けるという必要はないわけですか。
“ある意味、本来的な魂に近い扱いですね。魂核同士での会話は、本体の魂核を介して行われます。皆さんの顕現体が装備する”不朽の束縛”はそうですね、基地局とか、トランシーバーとか、そんな感じの扱いとなります。あるいは、クラウド上のサーバーみたいなものが本体。皆さんの顕現体に装備される”不朽の束縛”は、相互に入り込むことを許可した携帯端末やPCといったところでしょうか”
まだいまいちピン来ないので、ゲーム的に考えれば。
「つまり3人そろって、本体である魂核がプレイヤー。顕現体がゲームのアバター。という関係性ですね? プレイヤー(魂核)は同じお部屋、”不朽の束縛”に常に一緒にいると」
“はい。ですので、全員が顕現体を消した状態であれば、あくまで本体の周りだけが知覚可能になります。1人でも顕現体を現出させていれば、その顕現体の首元の”不朽の束縛”を、実体として知覚する事が可能です。Lockされている”意思疎通”のスキルは、3人の本体の魂核同士を介した会話、意思疎通を可能としていますので、一般的な念話とは別物です”
「絆を……いつでも感じられる……幸せです」
ルナリスが本当に心から嬉しそうに、首元に嵌めなおされたチョーカーを、優しく撫でていますね。
「ですが、戒めは少し……弱くなりました。それは……ちょっと悲しい……です」
内向きの棘が、以前は首に刺さる勢いであったのが、かなり緩和されています。少なくとも自傷してしまう事はないでしょう。
「ルナリスちゃん、その分は、睦み合いの中で満たしてもらえばいいんですよ」
「それが……よろしいです……ね。ナオ……様は……もっと、わたくしを……いじめてほしい……です」
ちょっとおかしな会話を2人がしていますが、気にしない事にしましょう。
と、1つ気になったことを確認しましょう。
「アレイスター王国内でのように、外部との接続ができなくなったとき。例えばこの本体と、紗雪のドール体が”悠久の楽園”にいて、私達が封鎖された以前のアレイスター王国内にいる。みたいな時はどうなりますか?」
“3人の間の意思疎通や顕現に対して、そのような影響を回避できるようになります。封鎖された空間内の全員の顕現体が消失しない限り、”悠久の楽園”との間の相互意思疎通や、顕現体の操作が可能です。強みが増えたと考えていただいてよいかと。そもそも、あれは、ナオさん達だからこそ強い制限となってしまいましたが、現実を介してプレイヤー間で会話や情報交換する事は制限のしようがありませんから。いちいちログアウトしなくてよい。という意味での強みになりますね。顕現体の出現可能な場所は、誰かしらの顕現体がある場所か、直前まで自身の顕現体がいた場所、に制限されています”
要するに、リスポーン地点は、”不朽の束縛”の本体か5個あるコピー品のどれでも選べるようになったと。
何とも難解なことになったかと思いましたが、一応一通り3人ともが納得したところで、いよいよそれぞれの顕現体。要するにアバターの変質と進化に移ることになりました。




