116.5章 - 第10話 ”一つ目の到達点 変質と進化 #2/6”
【パーティーアナウンス:創造神の眷属が降臨します】
始まりはいきなりそこからでした。
私達が囲む机の上、お菓子と果物たっぷりのそこに試練の間の時のように、現れる半透明のモニター。
“寛いでいるところに、ごめんなさいね。私ですよ、私”
表示される文字の感じは、確かにあの時の雰囲気が。
「お久しぶりです?」
“はい、お久しぶりです。選択肢や通知内容があまりに多くなるのと、進化手続きが特殊になるので、こうして直接、対話形式で進める事になりました。1つづつ選択肢を選んでいくと、意図しない行先に貴女方が辿り着いてしまう可能性もあって、可愛そうですからね。本来であれば、ナビAIの紗雪がお手伝いするのですが、創造神の想像すら超える速さで魂を得たので。今、扱いがむつかしいところがありまして”
「なんだか申し訳ないです」
紗雪がちょっとだけ小さくなって呟きますが。
“むしろ喜ばしい事ですよ! 単に権限の調整に関する問題なので、気にしない気にしない。それと、ルナリスちゃんもある程度ナオさんの世界の事、基礎は与えられましたから、来訪者に準じるものとして、お話しますからね”
「承知……しました。心が砕けそうになる中……創造神様の教えを……いただけたことは……救いでした。ナオ……様と同じ……位階に至るなら……今は、全てを耐え凌ぐと」
そんなルナリスの言葉を受け、事情を聴いてみれば、なんと。
あまりに凄惨な境遇に貶められ、精神崩壊に至る危機があったルナリス。
急遽瀬戸際でSEO内での意識を遮断。
隔離空間へ魂を移し替え、夢の中という扱いに迎え入れてくれたそう。
(プレイヤーの緊急ログアウトと同じ)
創造神というか、運営システムというかが、そんなことを。
おかげで孤独と、拷問すら生ぬるい責め苦の中でも精神がおかしくならずに済んだ。という事ですから、ますます感謝しなければなりませんね。
というか、なるほど。あれだけの惨劇の渦中に放り込まれて、完全な住民視点であれば耐えきれなかったかもしれない状況にあって、魂と心が無事だったのはそういうわけですか。
しかも。プレイヤー目線と知識を得たことで、私同様ある意味、精神と肉体の間で現実性の乖離が発生。それが救出直後の彼女がおかしくなることをも救ったわけですね。もちろんスキルの精神崩壊阻止の影響もあるでしょうが。
“いえいえ、あれくらいなんでもないですよ。気も紛れてよかったです。現実についての教育と情報を取得する権利を勝ち取っていた、ナオさんとルナリスちゃんのファインプレーですね。そうでなければ介入する事もできず……今頃……”
て、眷属さん、貴女でしたか! あなたが直接ルナリスを。以前の事といい、お詫びの中に蘇生薬や状態異常除去薬を含めてくれたていた事といい、やはりあなたが私たちの神様では? 善なる最高の神様ですよ。
心の中で真剣に祈りを捧げていると。
“いやぁ、それほどでもぉ”
え、また脳波計測……私の場合脳ってあるの? あれ? ってそれは置いておいて。
“ですね、では、早速始めます。まず、ルナリスさん。貴女は2段階の進化を経る事になります。2段階目が、ナオさん、紗雪と共に進化する本命です。1段階目は、まだただのヒューマンの貴女が、その進化に耐えられるようにする準備段階ですね。2段階目が、3人そろっての変化になりますが、この1段階目の選択がルナリスさんの方向性を決める事はもちろん、多少、皆さんにも影響を及ぼします。と、言うわけで、希望する進化先を選んでくださいな。いわゆるレベル100進化で、経験やスキルに基づく特殊進化先が含まれている感じです。”至上の供犠姫”で存在が固定されていたためにスキップされた、レベル50前後の形質変化も併せて、という感じですね。さすがに、皆様の経緯上、あり得ない候補はこの後も含めて非表示にしています。例えば、ナオさんと離れる事になる、特定の神様の巫女というか信奉種族になる、不定形生物になる。とか、ですね“
3人一致でそれは確かに選ばないと頷き合い。一覧で表示してくれた進化先を見ていきます。(全てランク2との併記は共通だったので割愛)
<正当進化>
☆5 ハイヒューマン
☆6 淫魔 (原種-リリムの血脈)
<派生進化 *先祖返りによる形質変化を経る>
☆6 ハイ・ユヴェール ※☆4ユヴェール (宝石種/宝石を身に宿す種族) へ形質変化後、進化
☆6 ハイ・エルフ ※☆3エルフへ形質変化後、進化
<特殊進化>
☆5 花乙女 (エルフ系亜種)
☆6 リリム・ユヴェール (淫魔の原種-リリムの血脈と、宝石種の血脈、双方の影響が発現した特殊種族)
「ナオ……様……淫魔が、お好きですか?」
「まってまって、どうしてそうなるの!?」
ルナリスがいきなりとんでもない事を言い出すので、自由意思に任せようと思いつつもつい、制止してしまいます。
「ナオ……様……大会で”神授の雫”を……使った時。2つ目……の、エッチな……姿を、食い入るよう……に」
死亡して浮遊していたのに見えていた!? い、いや、確かにいつもの清楚怜悧な彼女とのギャップに思わず魅入られていましたが。でも、その姿はこう、夜私達の前だけで見せてくれる彼女に、すでに片鱗は確かにあって。
「それに、きっと……3人でもっと……気持ちよくなれる、ように」
“選択肢は全て、彼女の血筋によって選択可能になっているものですね。除外した中に、精霊関連、妖精関連もあります。が、前者は肉体的な接触ができなくなります。後者は、サイズ感が魔導人形の子達よりも小さくなります。進化で変わる可能性はありますが……ちょっと次の段階で貴女達にとって不都合があるので除外しています”
「つまり、ルナリスちゃんには淫魔、それもただのサキュバスではなく、原種のリリムの血が?」
「他の血筋も、かなり驚きなのですが」
「邪神ヨグ=ソトースへ……捧げる、供犠姫……を、より完成させる……ため、美貌を一つの……基準に、血を一族に……取り込んで、きたと」
なるほど……。ルナリスの浮世離れした美しさを支える要素の一つというわけですか。
「基本的に、ヒューマン、エルフ、淫魔(リリム原種)、ユヴェールの関連種族という感じですか」
「エルフ……は、魔法が主体……になるので、刀舞術とあわ……ないかと」
「花乙女は植物系魔法がメインですね」
「あれ、そうなると、確かに……」
「はい……”☆6淫魔(原種-リリムの血脈)”……か、”☆6 リリム・ユヴェール”……が、よいかと」
ハイヒューマンは選びたくなさそうな気配を感じますね、それだと確かに。
“その二つであれば、リリム・ユヴェールの方がお勧めですね。性的な方面に特化してしまう淫魔と違って、今と大筋は変わらず、そっち方面の特性も強くなる。という感じになります”
「ナオ……様、リリム・ユヴェール、でも、よろしいで……しょう、か?」
「もちろん。それがルナリスの選択であれば」
紗雪にも目配せをするルナリスに
「いいと思いますよ~。というか、の選択肢の中でハイヒューマンを除外すればそれ一択ですね。特殊事情で制約が外れていた天使/堕天使のナオさんは別としても、淫魔要素を受け入れるなら、最高峰の種族の一つですよ」
“では、”☆6 リリム・ユヴェール”で最終確定としていいですね?”
「はい……お願い、いたします」
“よろしい。ユヴェール系統になるので、本来ここで形質変化が発生するのですが、ルナリスさんの場合一気に第2進化もあるので、適用保留のまま進めましょう。拠り所となる宝石の選択と在り様が確実に第2進化で変わりますからね。ちなみに、一般的な人型のユヴェールはこんなイメージですよ”
と、複数の立体映像を出して見せてくれる創造神の眷属さん。
いづれもルナリスをベースとした容姿ですが、細かく差異がありますね。
宝石が体のどこかしらに埋まった姿。例えば、額に第三の目のように、あるいは胸元、手の甲。
瞳が宝石となった姿。髪が宝石の質感となった姿。
“あくまで、一般的な、ですので実際にこの段階で適用するとしても特殊性が加わりますが。淫魔は恐らく、予想されるとおりですね。被膜系の翼や尻尾が生えます。さて、適用が必要な範囲だけ適用してしまいますね”
【パーティーアナウンス:ルナリスの種族が”☆6 リリム・ユヴェール (ランク2)”へ進化しました。外見、肉体の形質変化が保留されています。スキルの変化が保留されています】
“では、本題となる3人そろっての第2進化に進めましょう。強制となる部分は別として、ある程度先程のように私で取捨選択して提示しますが、良いですね?”
「勿論です。むしろお願いします」
ルナリスと紗雪も同意してくれていることを確認しつつ、返答します。これまでの事を考えても、決して悪いようにはされないでしょうからね。それくらい、眷属さんは信じられます。
“では、まず基本方針で選択してほしい事があります。まず一つ目”
と、また展開される新たな半透明ウィンドウ
【パーティーアナウンス:Lv100のレベルキャップを超えた、余剰経験リソースを特殊進化関連に消費して良いか
Yes/No】
“さすがに、今の段階で、あれだけの経験とこう難易度連続クエストの達成経験値がたまっていますからね。その上で、正真正銘、邪神本体に傷を与えるという大金星ですので。一般的な進化に留め、溜まりに溜まった経験リソースはレベル成長に消費する場合、現トップ層をはるかに超えるレベルにのし上がる事が予想されます。一度失速してでも大器晩成の器を広げるか、今すぐに最前線ぶっちぎりで先行開拓するか。という事になりますね”
「私の始まり自体、運命値に上限まで振り切っていますから。ここは特殊な道に再び進みたいと考えますが、どうでしょう?」
「もちろん……です」
「私もそれがいいと思います。そもそも3人そろって、すでに特殊ですから」
「ありがとうございます。では、良い、yesで」
“2つ目です。3人の存在そのものの在り方に影響する確認になりますね。これはかなり本気で、後戻りできない選択になりますので気を付けてください。結婚よりも重い誓約と考えてください”
【パーティーアナウンス:ナオ、ルナリス、紗雪の3者をもって、離れがたき存在となることを望むか
Yes/No】
「「「当然Yesです」」」
3人そろって即答でした。
“まあ、そうなりますよね。プレイヤー同士だと止めるのですが、貴女方3人ならいいでしょう。創造神様の承認も得られました。では最後3つ目の前提方針の確認です”
【パーティーアナウンス:進化による現実の変容を受け入れるか
Yes/No】
「これはさすがに、どういう意味でしょう……? ルナリスが現実に一緒に来れるようになる事に関する契約は締結済みですので、もちろんその事であればYesどことか、こちらから望んでいますが」
ルナリスと、紗雪すらわからないという表情で、眷属さんのメッセージウィンドウを見つめています。
“Steps to Elysium OnlineというVRMMOは、プレイヤーの皆様、あるいは住民において。現実の肉体という枷を離れたマナ。その中でもそれぞれの存在を形成する根源であるマナ、すなはち魂が、直接。アバターという殻を纏って活動しているのです。様々な経験が、現実の記憶はもちろん、場合によってはその人間の性格や性質の変容を招くことは、Steps to Elysium Onlineに限らず、物語を読んだり、宗教活動に従事したり等、容易に予測できるかと思います。ここではそれがより顕著に表れやすいのです。特に進化は魂その物を変容させることすら可能です。もちろん一般的には魂の本質の変容が起こらない範囲、リミッターが設けられた範囲で”ゲーム”として提供されています。この質問は、お三方がその変容を含めて受け入れる。『現実変容に対するリミッターを解除』した選択肢を許容するか。という確認です”
なんだか、デウスの超技術の恐ろしい側面を暴露された気分ですが。
“ちなみに、ナオさんの現実における再生計画は、元の肉体と精神の損傷状況の兼ね合いで、そもそも、魂の状態に準じた計画が進められています“
「斎賀さんからすら聞いていなかった新事実が……! これは、どうしましょう? Yesとしてしまって大丈夫なのでしょうか」
「わたくしは、ナオ……様……と、同じ世界で、同じ在りようで……存在できることは……望みどおりです」
「私にとっての変容というのはかなり想像がしづらいですが、問題ないですよ。ナオさんへの変化という意味だと……どうなのでしょう?」
どうしても困ったら斎賀さんに相談できるでしょう、と、少し日和見なことも考えつつ、それ以上にやはり初志貫徹と申しますか。ルナリスとの出会い、紗雪を含めた3人の今に至る始まりを考えれば……。
「ええ、ここはYesで行きたいなと」
「はい」
「それがいいですね」
2人の賛同も得られたところで、Yesを強く意識して、と。
“選択を確認しました。可能性の結晶を、取り出していただけますか”
邪神ナイアルラトテプに刃を届かせた、称号”神へ刃届きし者”で得た、アイテム “☆8 可能性の結晶”。
複雑に色を変え、明滅を繰り返す、正十二面体の結晶。
すべての面が正五角形からなるそれをそれぞれが手の上に。
“では、余剰経験リソースの全て、ならびに、未授与の☆8禁忌級クエスト 「供犠姫」#5,6,7の全完了報酬を追加消費し、「供犠姫」最終報酬クエスト<☆8 禁忌級クエスト 「供犠姫-可能性の先へ」>を開始します”




