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『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第5章

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115.5章 - 第9話 ”一つ目の到達点 変質と進化 #1/6”

###### 筆者前書き ######

 ルナリスの魂/精神の状態への疑問を感じられるかもしれませんが、きちんと理由があり、次話で明かされます。どうか、少しだけ、お待ちいただけますと幸いです。

### 以上筆者前書きでした ###



「なんか、一人勝ちされた感じで腹立たない……?」


 そう、声をかけてきたのはルゥちゃんでした。


 正直なところ、神代魔法の扱いに圧倒的な差がありすぎて、通常魔術も物理攻撃も時空を上書きして無効化される中。今の私達がどれだけ頑張っても、勝てる方法が思いつかないのが本音です……。

 腹立たしくないかと言われれば嘘になりますが、最終的に3人が無事で幸せになれるなら。

 誰もかれも殺して回って、はい、おしまいって。私達には本質的に合わないと思いますし。


「ルゥさんに助けていただいていなければ、終わっていましたから。今はとにかく安堵しかないのですよ。そして、貴女への感謝を」

「ふーん。まあ、ナオお姉ちゃんがいいならいっか」

 淡々として様子から、

「で? 私のものにはなってくれないの……?」

 別人のように急に、婀娜っぽく振舞うルゥちゃん。


 この二重人格のような様子、気がかりですが。


「ごめんなさい。私は私の大切をもう決めてしまっているので」

 寄り集またままのルナリスと、紗雪に視線を巡らせ、きっぱりと。


 それを見てため息をつき

「本当、嫌になっちゃう。あの時、地下までナオお姉ちゃんが来られたら……2つ目の祭壇まで、来てくれていれば……。まあ、いいわ。今はあきらめてあげる。クトゥルフの復活はまだ、鍵を得ただけだからね。でも覚えておいて」


 蠱惑的な、しかしどこか恐ろしさを感じさせる、笑みを浮かべるルゥちゃん。

 あたりに海の香りがことさら強くなり。


「私は貴女を待っている。星が巡り、時が来たとき。貴女を私のものにする。貴女がたとえどこにいようとも。それが異なる世界であったとしても。だから、待っていてね?」

 あふれ出した水に溶けるように、触手の塊を大切そうに抱え、碧い供犠姫のドレスをまとったルゥちゃんは消えていました。


 そうして誰もいなくなった空間に、唯一の宙に浮かぶ、虹色の球体。

 邪神ヨグ=ソトースの意思とされたもの。


「てっきりクロウリード王と共に消えたものかと」


 あの初まりの時、アレイスター王国王城、塔の地下で邂逅した、名前すら判読できないほどまでに劣化した断片。

 今はあれが、ヨグソトースの断片の成れの果てだとわかるが、あのただ悍ましいだけであった肉の触手の群れとは違い。

 邪悪ながらも、神々しい、確かな神威をまとった気配に身構える以前に、膝を折りたくなってしまう。


 『仔細違えたといえど、約定の本意を守りし一族の末裔。労甚だしく、功高き者は我が神官たるを望んだ。孕みし偽りの供犠は子を産み落とし、その巫女となるを選んだ。汝の望みを聞こう』


 それはルナリスへと、下された神意。

「これなる御方にわたくしを捧げ。この2人と、悠久に共にある事。ただそれのみを望みます」


 部屋中に残っている触手が、蠢き、とんでもない黒い感情……嫉妬? が、私に浴びせられた気がします。

 神のそれのなんと怖ろしい事か……思わず、おもらしを又しそうになりますが、未だに刺さったままの偃月刀の激痛に意識を向け、懸命に耐え。

 いや、抜くと大量の血が失われ続けるので、今は、どうしようもないのですよ……血姫繚乱の効果で傷すら塞げませんから。6時間を安全にやり過ごせる状態になるまでは。治療できないのがつらいです。それ前提で、とる覚悟を決めたスキルですから甘んじて、痛みを受け入れるしかありませんが。


 『よかろう。認め、加護を与えよう。これよりの汝らの変化にこの場はそぐわぬ。去ることを認める。だが……何故(なにゆえ)この”時”に……なるほど』

 何やら疑問を感じ、勝手に納得した様子の邪神ヨグ=ソトース。

 不意に強烈な視線が私に注がれたのを感じると、やおらインベントリから急に実体化した、黒い光を纏ったスキル結晶。


【スキル結晶:☆8 ■■<未開示>■■】


 邪神ヨグ=ソトースの意思、虹色の球体から注がれる光輝。


【パーティーアナウンス:”☆8 ■■<未開示>■■”が、邪神ヨグ=ソトースの加護に染まりました】


 そして、スキル結晶であった物はゆっくりとルナリスの胸元へと漂い。

 すっと溶け込むように彼女の中へと吸い込まれ。

 ルナリスが髪と瞳に纏う虹色の輝きが、その純度を増し、さらに透明感と神々しさを増します。

 元々の美貌に一段と磨きがかかった、腕の中の彼女に思わず見蕩れていると。



 ――気が付けば、まるで先ほどまでの出来事が全て夢であったのではないかと思うほど唐突に。

 一面大地が消え、奈落が永遠と広がる中、ぽつんと残された。今や崖に囲まれた山の頂上のような、取り残された土地。アレイスター王国王都、王城前広場の中心部。ヨグ=ソトースの領域へと繋がる巨大な扉があった場所に戻されていました。


 ただ、そこにはもはや何もなく。

 扉も、消失しているのでした。



【パーティーアナウンス:変質と進化が保留されています。安全な場所への移動を推奨します】

 と、私達の前に浮かぶ表示。



 そういえば、長く続いてきたこの、”☆8禁忌級連続クエスト 「供犠姫」”の完結。その報酬としてのクエストって書いてありましたね。”☆8 禁忌級クエスト 「供犠姫-可能性の先へ」”。何がどうなるのでしょう。



「安全なところと言えばやっぱり私たちの領域、”悠久の楽園”ですよね」

「はい……戻り……ましょう」

「どれくらい保留状態が維持されているかわかりませんが、お城のプライベートエリアに戻りましょう。接続も復帰していて、ドール体で、襲撃も少し前にピタリと終わったことを確認しました」

「戻りましょう、私たちの、”我が家”へ」

「「はい」」



 悠久の楽園は、先日のアレイスター王城前の攻防の時に勝るとも劣らない激戦であったそうで、疲労困憊の皆にお休みを言い渡し。

 魔力たっぷりのお湯に満たされた大浴場で身を清めた後、不朽の束縛を首元に飾り、誇らしげなルナリス。

 一緒に疲れをお湯に溶かし、さすがに、気の抜けた表情でドール体を膝に乗せ、ソファーに横たわる紗雪。

 さすがに激痛が耐えがたく、お風呂も幻影顕現で疑似いちゃいちゃという苦渋の決断をした私。

 アールヌーボー調の自然な曲線が優美な家具でそろえられた、プライベートスペースのリビング。向かい合わせのソファーで、リアルコラボのチョコレート菓子とフルーツを摘み、くつろぐ中。



【パーティーアナウンス:安全かつ安定した状態にある事を確認しました。変質と進化が再開されます】

 いよいよ、保留されていた変化。変質と進化が開始される旨がアナウンスされました。



 うちの子達も見守る中、城内のホールで盛大にやる方が良いのでは? という案もありましたが、あまりにも深い想い出の結果、集大成。そして何より、一筋縄でいくのかという不安もあり。やっぱりこの3人で、まずはしっかりと受け止めようという事になったのです。


 思えば、今日はSteps to Elysium Onlineの内部時間的には、サービス開始から189日目の昼。

 約半年にも及ぶ、邪神をも相手取った、大冒険。

 それでも、リアル世界ではまだたったの約1か月半しかたっていない、8月17日の日曜日。

 常時ログインで、住民と同じ生活の私にとっては、ゲーム内時間が全てですが。こうして考えると、あまりに濃密な日々でした。一般的なプレイヤーからすると、第1回大規模イベントの最終日。内部時間的にあと3日半ですね。


 これで斎賀さんに託された、ルナリスが現実の世界に一緒に来られるようになる条件を無事、満たせるでしょうか。

 本当に想像もしなかった、ただのゲームとは到底いえない。世界初のVRMMOにおける濃密で、特別な運命に導かれた私達の軌跡の、1つ目の到達点。


 結果やいかに……。

 そしてそれは次のどんな運命へとつながるのか……。


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