↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『運命の供犠姫』私のVRMMO生活は、運命値極振りから始まる百合ライフ。呪いの装備は絆の証?  作者: malka
第1部 - 第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/203

104.4章-第20話 ”門”

「今度はこっち」

 フォークに乗せた苺のムースを紗雪にあーん。

「私も私も」

 ちょっとまだ照れが見える。でも優しい微笑みの紗雪に、桃のケーキを食べさせてもらう。


「なんだか幸せだね~」

「そう、ですね。ええ、とても、とても幸せです」

 昨日の夜は欲求不満がたまった私が見た、夢だと思うのです。あんなエッチなことをルゥちゃんにさせるだなんて。

 けしからん、私!


 というわけで、今日は朝からネグリジェのまま、紗雪とベッドでイチャイチャ。

 もうすぐお昼だけれど、知らない。


 キスまではさせてもらったよ! ケーキを食べていたから、すごく、甘い口づけ。

 紗雪もだんだん我慢できなくなってきたみたいで、今は密着して、すごくいちゃいちゃ。

 もうちょっとで、この先も……なんて思っていたら。


「お邪魔してしまってごめんなさい、なの。でも、大変、なの」

 音もなく部屋に入ってきたサフィーロが、ものすごく深刻な表情で、話し始めたのです。


「どうしました」

 一気にきりっとした表情に戻る紗雪。あ、でも、抱っこから逃げるのは許さないからね。後ろからぎゅーってしたまま、難しいお話が始まる気配に身構えます。


「王都を囲む壁の外に大量の屍喰鬼が出現。続々と集結。これに対し王国側は一切の反応を見せず、なの。さらに王城外壁正門が開門され、王城前広場に大量の国民が集結中。周辺の道全てをふさいでいます、なの。このホテルの従業員も、生命反応で調べる限り、誰もいません、なの」

 すごく怖そうなお話をしてる。いやだなぁ……紗雪のツーテールになった髪の部分をこっそり指に絡めて現実逃避しましょう。


「逃走経路は」

「上空には”シャンタク鳥”と、”忌まわしき狩人”が群れを成していて、空を飛んで逃亡は不可能、なの。ナオ様が……」

「それは勘定に入れません。地下は?」

「地下水路にも何かが大量に蠢いていて。調べることもできませんでした……なの。たぶん、粘性の何か……としか。核も本体も見えないからか、解析で情報を見る事もできませんでした……なの」


 紗雪は振り返り、じっと、翡翠の瞳で、私の金の瞳を見つめます。

 でも、いつもは優し気に笑っている唇が、今は軽く引き結ばれたまま。

「ね、ねえ、紗雪? ど、どうして何も言ってくれないの」


 それでもじっと私の金の瞳を見詰めた後。 

「ナオさん。私が力及ばず、ごめんなさい」

「え? な、なにを急に……」

 そっと唇に指を優しく触れさせて、言葉を止められてしまいました。


「ナオさんを、ナオさんの記憶を、心を、癒してあげることが今度はできませんでした。予兆は何度も見えました。でも、私では、だめ。辛そうなナオさんにそこから先を強いることができませんでした。ここから先へ進むなら、覚悟が必要です」

 紗雪の手が、唇から、ほっぺたに撫でるように添えなおされて。


「ナオさん、貴女は戦えます。貴女のその身には誰よりも強い力が秘められています。少し、ほんの少しだけ。勇気を出して前に踏み出すだけでいいんです。貴女の魂が、身体が、覚えています」

「な、何を言ってるの、ほら、ほら見てよ。戦闘不可設定って、書いてあるでしょ!」

 訳の分からない事を言い始める紗雪に、思わず可視化モードにしたステータス画面を叩きつけるように表示してしまいます。


「スタータス画面すら、ご自身の認識を歪めて誤認識してしまっている、今の貴女自身。心が拒否してしまっているんです」

 そっとその画面に指を添えて。


「どこにも。”戦闘不可設定“なんて書いてありませんよ……そもそも、Steps to Elysium Onlineの戦闘不可設定は、ステータス画面そのものが別物になります。ナオさんが指さしているそこに書いてあるのは”運命値:100”の表記ですよ。貴女の全ての始まり。ルナリスちゃんとの出会いのきっかけ、私と一緒に悩み、作り上げた2つのアバターの切っ掛け」

「いやぁぁ!! なんで、なんでそんなおかしなこと言うの、いやだ、いやだよぉ」


 紗雪の髪に顔を押し付けて、何も見えないように、とっても落ち着く紗雪の香りに縋りつくように。

 駄々っ子みたいってわかっているけれど、何も知りたくない、何も見たくない。


「ナオさん!」

 耳元で大声で呼ばれて、思わずびくっとしてしまいます。

 黒い髪が、黒い翼が跳ねて。

 驚く私の唇に、重ねられる、ほのかな温もり。そして、湿り気を帯びた艶めかしい舌が、私の唇を強引に割り開いて。


「ん……ゃ……ゃぁ」


 うそうそうそ、あれだけ嫌がっていたはずなのに紗雪の手が、私の太ももを強引に広げて、膝を間に挟まれて。

 手が、手が敏感なところに。

 口の中を舐られながら、押し倒されて。


「ぃ……ぃた」

 翼がベッドに押し付けられて痛いのに、全然気にしてくれなくて。

 それどころか、背中に回された紗雪の手が、敏感な翼の付け根をコリコリって。

 頭が真っ白になっちゃう……!

 え、え、私の身体どうしてこんなに敏感なの、おかしいよ、おかしくなっちゃう、狂っちゃうよ!!


「相変わらず、とんでもなく感じやすいですよね、ナオさん。ねえ、判っていますよね、判ってくださいよ、何度私たち肌を重ねたんですか。ルナリスちゃんと一緒に、ルナリスちゃんとなんてもっともっともっと。ずるい、ずるいですよ。私じゃダメなんですか? 私が欲しいって言ったのはナオさんでしょう? ずるい、ずるいよ!! ”血姫繚乱”の感覚倍加で異常に快感に弱いくせに。心が壊れないように、ずっと、二人きりなのに、ずっと、我慢していたのに。なんで、なんでなのよ! めちゃくちゃになって、もう全部忘れて全部思い出しちゃうくらい、滅茶苦茶に狂わせてあげるんだから、快楽で蕩けさせて、ぐちゃぐちゃにしてあげるんだから!!」


 それからはもう訳が分からなくて。 何度も何度も頭が真っ白になって、泣いて紗雪に縋りながら、紗雪も何度も泣きながら私の上で果てて。


「それでも……それでも、わからないよぅ。紗雪は大好き、紗雪を愛してる、紗雪とつながれてうれしい。でも、判らないんだよぅ……」

「私も愛しています。もう……もう私も楽になってしまおうかな……こうしてずっと二人で、蕩けて。現実にも二人だけで……そうよ、それだって別にいいじゃない」

 紗雪の目が、ちょっとぐるぐるし始めて、昏く、昏く陰っているような気がして。

 必死で舌を絡め合いました。




 お互いに、何度も何度も果てて、起き上がる気力も失せて、ベッドで抱き合って寝ていました。

 そこに、サフィーロの部下にあたる少女人形の子達2人が飛んで入ってきました。

「緊急につき、ご報告します、です」

「王城前広場にルゥ様の姿を確認。王都市街ではなく、王城内部側から出現したように思われますが、断定できず」

「市民の様子が尋常ではなく、ルゥ様に一斉に群がっています、です」

「離脱する寸前、広場奥、王城正門前の祭壇と思しき場所へ少しづつ移動していました」


 ルゥちゃん!?

「え、ルゥちゃんが!? なんで。と、とにかく助けに行かないと」

「ナオさん……。そう、ですね、ダメ元でも……」

 超特急で汗と幸せの名残と残り香だけ、シャワーで洗い流して、インベントリ操作でドレスにお着換え。

 そういえばこのドレスも、天上の生地って言われても疑わない着心地の良さだけれど……どこで……。

 って、今はこれ以上時間を無駄にできない。飛び方はなぜかわかったので、窓からひとっとび。


「あまり高度を上げすぎないでください、なの」

 調子に乗って上に上がったら、前はずっと上空を飛んでいるだけだった怖ろしい化け物たちが、こっちに近寄ってきたので、慌てて屋根くらいの高さに降下。

 みっちり詰まったみたいな大量の人の群れの上を飛び過ぎて、王城を囲む大きな壁を越え、見えた。王城前広場。


「何、これ」

 そこは詰め込みに詰め込まれた人でぎゅぅぎゅぅ。あんな中にいたら押しつぶされるのが確実。むしろ、圧死していないのがおかしいくらいの密集状態。

 そんな異常な状態をさらに異様にしているのが、全員が、同じことをずっと、のどがかれそうな大声で叫んでいる事。


 Ia! Ia! Yog-Sothoth!

 Ia! Ia! Yog-Sothoth!

 Ia! Ia! Yog-Sothoth!


  ひたすらそれだけが、永遠、永遠と。

 鳥肌が立つのを我慢して、奥を見れば、確かに祭壇みたいなものがある!

 黒い、巨大な石の祭壇。

 これ、どこかで見た覚えが……肉色の壁……触手。


 祭壇の上に、昨日の碧いドレスを着た、海のように深い碧色の髪の美少女。ここからでもあの特徴的な色で分かる。

「ルゥちゃん!」


 祭壇の上は誰もいなくて、彼女が横たえられているだけ。

 意識は失っているのか、ぐったりと横たえられたまま。

 広がる、膝下まである長い長い髪の毛が、祭壇の上に海を広げたみたいに綺麗。


「急降下して掬い上げて離脱、うん、それなら私でも行けるよね」

「援護は私がします」

 4丁の古めかしい、けれど美麗な、フリントロック式拳銃が、紗雪の周りに浮かぶ。

 さらにその手には、流麗だけれども怖ろしい、対物狙撃銃。


「じゅ、住民を撃っちゃうのは」

「ナオさん、あれはもう……簡易鑑定で見ましたか?」


 言われて下に視線を移し。

「え、レアリティーはまちまちだけれど、全員が屍喰鬼!?」


 その時。

 心の底から縮み上がりそうな、怖ろしい気配があたりに満ちる。

「さ、紗雪、なに、なにがおきたの」

「何ですか、これ」


 私達が見つめる先、王城が、純白の綺麗な王城と、外を囲む壁、石畳。

 全てが漆黒に染まる。


 王城から黒い靄みたいなものがどんどんあふれ出して来る。

 甘い、腐ったような、それなのに永遠にかいでいたくなる匂いが、溢れてくる。


 下の住民たちが、ますます声を大きくする。


 Ia! Ia! Yog-Sothoth!

 Ia! Ia! Yog-Sothoth!

 Ia! Ia! Yog-Sothoth!



 やがてその叫びが最高潮に達したとき。

 あたりは全て漆黒に染め上がられ。


 祭壇の奥に、巨大な扉が、出現していた。

 太い2本の神殿の柱。

 その間に設けられた、巨人用と言わんばかりの高さ10mを超える扉。

 全てが漆黒のその扉。

 上部、柱と柱の間に施された銀の彫刻。

 見ているだけで不安になる、縮みあがって、ひれ伏して、今すぐ許しを請わないといけない。そう確信させられる。

 恐怖で圧倒される、一目で邪悪だと、あれはこの世にあってはいけないものだと、魂が断じる。

 神々しいのに、邪悪で悍ましい、巨大な扉。


 急いでルゥちゃんを助けなきゃ。

 とにかくそれだけで頭がいっぱいで、祭壇に向かって急降下し始めた。


 そんな私の視線の先。急速に迫る祭壇と扉の前に。

 一人の男が現れた。

 金髪碧眼の美の化身が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。