102.4章-第18話 ”海のように深い碧色の髪と瞳の少女 #1/2”
「ねね、お姉ちゃん、自分のも買わないとじゃない?」
意外とぐいぐい来る、深くて碧い、海色の髪の少女。
「ね、貴女も。ペアアクセとか、いいよね!?」
紗雪にも迫っていく少女。
「え? え、ええ。そうですね、ナオさんにもなにか」
「ほらね~? お姉ちゃんには、これとかいいと思うの!」
いきなり手を引かれ、彼女が先程まで見ていたらしき、別の一角にあるショーケースの前に連れてこられてしまいました。
「お姉ちゃんの綺麗な黒い髪には、こういうの、似合うんじゃないかな」
彼女が指し示していたのは、純白の羽根をモチーフにした、白金色の髪留め。
白い羽根になぜかすごく強い忌避感を覚えて、半歩後退ってしまいます。
「あれ~お姉ちゃん、嫌いだったかな。んー、うん、そうだよね。こういうのはやっぱり恋人に選んでもらわないとだよね! ね、あなたはどれをお姉ちゃんに着けてもらいたい?」
「え、そ、そう……ですね?」
珍しくたじたじな紗雪が可愛い。この子、距離感がものすごく近いものね。でも、不思議と嫌な感じがしなくて。
むしろ、彼女の髪と同色の碧い瞳がそう思わせるのかな、広い穏やかな海に揺蕩っているような、ふわふわとした感覚。
「これ……ですかね?」
あ、紗雪が選んでくれたみたい。買っちゃお♪
「わー紗雪、ありがとう! 買ってくるね♪ でも、これ、2つセットみたいだよ、紗雪とつけるの?」
「いえ、私はもう素敵な髪飾りを買ってもらっていますから。ナオさんの、ですよ」
「ふーん?」
紗雪が選んでくれたのは、2つのバレッタが1つの箱に収められていたの。2個同時に使うのはかなり無理があるし。
髪型も、ハーフアップとかにしたら、使いやすいかな。でも、今の黒髪にはハーフアップより、姫カットでストレートに下ろしたままがいいから、そのままつけようかな。あれ、でも私ハーフアップにもしていたような? 白い、純白の髪に、ハーフアップ……うーん、それもすごく、私好みだな~。
こっちの、蒼と銀色のベースに、深い青のサファイアで彩られた方は黒髪よりも、もっと薄い色。そう、白い髪とかだとすごく映えそう。さっき買ったイヤリングともちょっとお揃い感があるよね。宝石も同じだし。
今の黒髪になら、もう1個の、黒と金色のベースに、深紅のルビーで彩られた方かな? 紗雪の、黒基調に、赤の刺し色なゴシックドレスともだし、さっきの蝶々の髪飾りにあしらわれた、綺麗な深紅のルビーともまさに、お揃いじゃない?
「ねね、これさっき買ったアクセとお揃い感もあるよね。こっちは紗雪の、もう1個は……なんで買ったのか自分でもわからないけれど一緒に使ってもいいし……」
「そうですね、ええ、きっとお揃い感があっていいなって、そう思ったので。ナオさんも同じ気持ちで嬉しいです」
「えへへー」
うん、なんだかすっごくうれしい気持ちがあふれてきちゃった。
人前だけど仕方がないよね。紗雪をぎゅーって抱きしめたら、あ、顔が赤い。照れてる。可愛い~。
「それにしても、お姉ちゃん、あのお店でも一番良いアクセサリーをポンって買っちゃうの、すごい! さすが、戦う人だね」
確かに全部で60億GOLDもしたからね……高級店だったし。でも悔いはないのです!
「って、私は戦う人じゃないよ~」
て言ったら、ものすごくびっくりした顔をしている少女。
「え……? そんなガチガチの戦闘スキル構成で?」
「鑑定スキルとか、かな? んとね、来訪者って言ってわかるかな。私は、戦闘NG、戦わないよーっていう制約をかけてるんだ。だから、戦えない人なんだよ?」
もう。紗雪にも帝都に来る途中に、私は戦えるよ、戦っていたよって、言われたんだよね。でも、痛いのとか怖いのなんて、絶対に嫌だもの。私が戦いOKの設定でSteps to Elysium Onlineをプレイするわけないじゃない。このゲーム、痛覚完全再現っていう、かなり頭のおかしいゲームなんだよ? 世界初のVRMMOとはいえ、無いよね~。
でも、かっこいい武器には憧れたのかな。かなり中二病チックなハルバードをなぜか手に持っていたんだよね。現実にはあり得ない、完全にファンタジー作品の中のハルバード!
今はインベントリの肥やしになってるけれど。めちゃくちゃ重いんだよ! びっくりして地面に放り出したら、地面がえぐれてびっくりしちゃったよ。王都に来る前でよかった……王都の綺麗な石畳を壊したら、衛兵さんに捕まっちゃってたかも。
まだ不思議そうな顔をしている少女だったけれど
「ふーん。重症なのね」
ってすごく小さい声で呟いているの、聞こえちゃった。どういう意味だろう? 紗雪には聞こえなかったみたいだから、聞かなかった事にしておこうっと。
「ね。お姉ちゃんたち、王都にあまり慣れていないよね。良かったら案内してあげる!」
「いえ、私達は……」
紗雪が断ろうとしたけれど、地元の人しかわからないものとかきっとあるもの
「ね、紗雪。嫌じゃなかったらお願いしようよ」
「ナオさんが、そういうなら……」
「えへへ、2人きりじゃなくなるって拗ねてる?」
「ちが! そうではなくて、ですね……」
また思いつめたみたいな顔してる。
ここのところずっと何かを思い詰めて、私に極力聞こえないように、サフィーロ達メイド人形少女達とこそこそ何かをしている紗雪。
この子、ぐいぐい来てくれるから、いい気分転換になるかなって思うの。
「じゃあ、お願いね。私はナオ。この子は紗雪よ」
「私はルゥ。うん、ルゥだよ!」
「よろしくね、ルゥちゃん」
それから、王都のいろいろなところを一緒に回りました。
可愛いお洋服のお店では、いろんなお洋服にお着換えして、皆でファッションショー。自分では選ばないようなお洋服を着てみるのも楽しいね。
綺麗なお花が一面に植えられた公園。黒いお空に月もお日様も遮られているけれど、その代わりの魔導街灯がたくさん設置されていて、幻想的な美しさだったよ。
隠れ家的なスイーツのお店にカフェもあるよって、進められたけれど、紗雪が、お食事は課金ショップの物がいいですって。
だから、代わりに噴水公園に案内してもらって、そこで好きなものを注文してお取り寄せ♪ 美味しい物をいっぱい食べたよ。ルゥちゃんがすっごく嬉しそうだった。ほっぺが落ちそうに美味しいって。
紗雪は嬉しそうなのに、なんだか陰のある表情をしていて。
そんな風にどこか心ここにあらずだから、唇の端についた生クリームをペロッと、なめとってあげたら、あわあわしてた。
王国全土を覆っている黒い結界の増幅装置の一つが設置された城壁上部。
絶対に立ち入り禁止だと思うのに、ルゥちゃんたら、衛兵さんを誑しこんで。いや、本当にこの子、誑しこもうとするんだもん。
どこであんなエッチなこと覚えるの……止めようとする間もなく、蠱惑的な笑顔で揶揄って……。でも体には触れさせてなかったからぎりぎりセーフ? なわけないよ!
まあでも、黒い巨大な球体の周りに、なんだかすごく怖い感じがする魔法陣がいっぱい、多層構造みたいに浮かんでいたのは、かっこよかったかな。
近寄ると、脱力するというか、何かを吸われている感じがして、やっぱり怖かった。
紗雪が、怖い顔をして近寄ったら、真っ黒の兵隊さんが球体から、ずずずーって、水面から現れるみたいにして、いきなり出現したのはびっくりしたの。防衛機構的な召喚装置とかが組み込まれているのかな?
ルゥちゃんが、慌てて紗雪を引き戻したら、また黒い球体の中に、黒い兵隊さんは消えていったよ。
「なんで無防備に近づくんですか!」
「いえ、これは良くないもので」
「だったらなおさら!」
って、2人で軽い言い争いをしてた。難しい事はわからないけれど、仲良くしてほしいな~。
ついでだからって、本当は昇っちゃいけないんだよ。って、お茶目に笑いながらルゥさんに案内された城壁の上。
10mくらいあるのかな、信じられないくらい高い城壁の上から見下ろす町は、なんだろう……魔導街灯はすごくきれい。うん、幻想的。
でも、こうして上から見ると、町全体が暗く、澱んだ雰囲気に感じられて。道を歩いている人たちもちょっとふらふらした感じ? 視点を変えてみると違って見える。っていうのかな。
ちょっと……ううん、かなり、不気味。
空をいろいろな生き物が飛んでいてファンタジーだなって、思っていたけれど。この距離で見たら、全然鳥さんじゃなかったよ……。
大きな翼はそうなのだけれど、鬣の生えた馬の頭に、身体をうろこに覆われて気色悪い象みたいな身体。鳥? 象?馬? いったいなんなの?
黒い巨大な蛇に、1枚しかない翼、大きく開かれた口から、もう一つ蛇の頭が舌の代わりに伸びていて……うげぇ……。
プレイヤー標準の簡易鑑定で見たら”☆4 シャンタク鳥”、“☆5 忌まわしき狩人” 名前からしておかしいよ、モンスターだよ。全然綺麗な鳥さんじゃなかったよ。
「ね、ねぇ……あんなのが飛んでいたの……? 気色悪いよ」
「ナオさん……? 今まで見えていなかったのですか?」
「え、どういう事、紗雪には見えていたの? ずっと綺麗な鳥さんが飛んでるなって、思って眺めてたよ?」
「……」
そんな私達のやり取りをじっと、碧い瞳で、水底のような瞳で見つめている、ルゥちゃん。
「ナオお姉ちゃん。怖いなら、私が傍にいてあげようか? 私の傍にいる? そうしたら、怖くなくして、あげるよ?」
「あはは……だ、大丈夫だよ。でもありがとうね」
「そう? でも、怖くなったら、逃げたくなったら。いつでも……言ってね? いつでも……」
すごく蠱惑的な表情で、唇をペロリって舐めながら言う、ルゥちゃん。女の子同士だけれど、密着して、ちょっとお股の間に足をさしはさまれて。すごく、いやらしい事をしている気分になってきて。
息が荒くなって……ルゥちゃんがすごく、すごく……溺れたい。この子に……全部捨てて、忘れて。もう嫌……嫌なの……。
「ナオさん?」
「あ、いけないいけない。そろそろ降りようか、やっぱりちょっと怖い」
「ナオお姉ちゃん、怖がりだなぁ。でもそうだね! あ、すごくかわいい小物がいっぱい置いてあるお店があるんですよ!」
そうして、紗雪とのデートを意識しながら、すごく積極的に懐いてきてくれるルゥちゃんと、仲を深めながら。
昏い天蓋に覆われた王国の、幻想的な魔導街灯に照らされた王都を。現実逃避するようにはしゃぎながら、子供のようにいろいろな物に目を輝かせ。疲れて眠くなるまで、遊びまわりました。




