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花にまつわる怖い話  真夜中の花屋 Pantalea   作者: 東雲大雅


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22/30

幕間その2 ーーある一家の家庭環境について

 Pantaleaの女店主は静かに新聞をめくる。


 紙面の片隅。


 一家心中事件について書かれた記事が目に留まった。


 『一家心中の裏には歪な家庭環境が原因か』


 見出しの下には、取材によって明らかになった内容が並んでいる。


 ――父親は不倫関係にあった。


 ――母親は精神的な不調を抱えていた。


 ――近隣住民によると、母親は長女に精神的な問題があると思い込み、頻繁に病院へ連れて行っていたという。 


 女店主は、その一文をしばらく見つめた。



 さらに記事は続く。


 ――母親は長男の教育に強い関心を示していた。

 ――一方で長女個人への関心は薄く、会話も少なかったのではとの証言もある。


 ――近隣住民からは、長男が長女をいじめていたのではないかとの声も上がっている。


 ――長女は夜になると、一人で近所のコンビニへ向かう姿が度々目撃されていた。


 ――いつも同じ服を着ており、腕には痣もあったという。


 ――十分な食事を与えられていなかった可能性も指摘されている。


 ――警察は日常的な虐待の有無についても調べている。


 記事の最後には、


 『事件からおよそ2週間経っているが、未だに長女の遺体は見つかっていない。』


 と締め括られていた。



 女店主は新聞記事をじっと見つめる。

 

「あなたがここへ来るには、もう少し時間がかかりそうですね……」


 ぽつりと呟く。


 その眼鏡の奥の瞳は、どこか寂しげだった。

 

 そして顔を上げ、店の隅に飾られた一輪の花に視線を向ける。


 夜そのものを花にしたような、完全な黒の花弁。


 その花に語りかけるように、女店主は口を開く。


「本当に見えていたのは、ほんの一部分だけだったのでしょうね……」



 店内には花の香りだけが静かに漂っていた。


 再度新聞記事に視線を落とすと、一人の女性客が店に入ってくる。


 女店主は新聞を閉じ、顔を上げる。


「いらっしゃいませ。どうぞ、ごゆっくり」


 その女性は、ダリアの花を買っていった。

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