謁見 その5
周りがザワザワとしている。
なんか結構偉い人らしい。
「もし違ったら」どうのこうの。
「勘違いでしたでは済まない」とかどうのこうの。
結構怪しい雰囲気である。
いや、わたしは彼が犯人だとは一言も言ってないのに。
どうも「ウソぴょーん」で済みそうもない。
「勘違いでした」もダメっぽい。
「ドッキリ大成功」はこの世界でも通用するのだろうか。
彼の冤罪を晴らしつつわたしは嘘を言ってない。
ただ真実を言っただけです。ってことを周知せねば。
わたしの灰色の脳細胞が唸り声を上げる。
「わ、わたしはイノウエ大臣が毒を盛ったとは言っていません。
王に盛られた毒とイノウエ大臣と昔会った巫蟲術師から
同じ臭いがしたと言っただけです」
うん。完璧な言い訳である。
これならばイノウエ大臣も巫蟲術使いだから
偶偶ニオイが同じだけだと弁解も出来るだろう。
そして虫の専門家として王を救い
更に出世するに違いない。
ウィンウィンである。
後ろの方で「巫蟲術?」「蟲毒?」という声が聞こえる。
巫蟲術や蟲毒のことを知ってる人もいる様だ。
これならば丸投げでも大丈夫そうだ。
イノウエ大臣は巫蟲術などワシは知らんと白を切る。
本当に男らしくない。
彼もわたしと同じくスローなライフの信奉者なのだろう。
そりゃぁ王の毒を特定し治療するのは面倒くさい。
だけどなんの関係もない平民の小娘が働いているのである。
大臣なんだし高い給料を貰っているのだから
王のために少しは残業も厭わず働くべきである。
わたしはペストマスク越しに睨みつける。
村長もペルデクスも周りのみんなも睨んでる。
怠け者にはツライ世界である。




