処分は回避できなさそうです
色々とお世話になってばかりだったので、男を見せようと頑張ってデートに誘って成功したけど…………なんでかエスコートされることに決まってしまった。
「違うんだよなぁ、連れまわされるんじゃなくて連れまわりたいんだよな…………今更気にしても、もう遅いか」
そんなことを言うのも仕方ないだろう、男なんだからさ。
「なにをそんなに落ち込んでるのかしら?」
いまはまだこのままでも仕方ないさ、でもいつか依頼とかこなして信頼関係を勝ち取りそしてまたアタックしてやる、こんなふがいない結果で満足なんてできないからな。
そんなやり取りをしながら歩いていたら着いたみたいで、お店の人に物件を紹介されてそこまで再び歩くことになった。
「2人で暮らすとのことでしたので、あまり大きくない家を選ばせていただきました。このような物件でどうでしょうか?」
そう言って見せてきたのが、目の前にある木造の一軒家だ。
2階とかはなく、言われた通りのそこまで大きくない家だ。
フレアも特に問題なさそうにしているから、後は家の内装次第だな。
「それでは問題なさそうでしたので、中の案内に移りますね」
そう言うと、鍵を開けて中へと案内される。
一通りの家具も揃っていて、雨漏りなんかの不備も見当たらないとのことで悪くないと思うけど、懸念が2つもあるんだ。
1つ目、寝室が悲しいことに1つしかないってこと、一緒に寝たらまたフィニアにどやされるのでこれは非常にまずい。
2つ目、大変ありがたいこと浴槽が家に用意されていることだ。これには風呂好きの日本人として最高のことだろう、同居人に女性がいることを除いて。
混浴? 覗き? ラッキースケベ? どれが起きてもフィニアにどやされる、この家に住んで何らかのイベントを起こさずに過ごせる気がしない、再びお説教をくらう自分の姿がなんとなく目に浮かぶ。
とは言っても選ぶのは当然俺ではないので、意見など言えるわけもなく、あっさりと今日からこの家で暮らすことに決まってしまった。
土下座の練習しておこうかな……………………ジャンプもつけたら説教時間半分になったりしないかな?
「それで夕食にしたいんだけど、私は家事が致命的にダメなのよね…クリューちゃんはどのくらいできる?」
「残念ながら料理は自信ないな、他の家事も正直厳しいと思う」
彼女は俺の答えに「そう」と小さく答えて思案し始めた。
これは夕飯抜きになる感じかな?
「こうなったら仕方ない、私が料理を作ってみるわ」
…………息まいてそう宣言するフレアになんだか嫌な予感がする。
「大丈夫なのか? 料理を作ったことないならどっかでご飯を買ってきた方がいいと思うけど」
やんわりと止めたが…………
「せっかく材料も用意してもらったんだし、なにごとも挑戦ってことで試してみようと思うの」
止まる気配はないみたいだ。
材料が用意されているのは、家を買ったときに商人さんが知り合いに食材を扱っているものがいるとのことでおまけでくれたんだ、だけど肝心の料理人がいないじゃどうしようもないんだよな。
しばらくして料理を完成させたフレアが出てきた。
微妙に部屋が焦げ臭いし、少しだけキッチンを覗いたけど綺麗とはとても言えない状況にだった。
「こんな感じになっちゃったけど、まぁ多分食べられるでしょ」
そう言われてテーブルに並べられた料理?をみる。
焦げまくっているわけでもないんだけど、野菜とか色々とダメになっちゃってて、匂いがとても食欲をそそる感じではない、これは正直無理かなって思う。
魚の料理と思われるこれは骨が爆散しているし。
「悪いことは言わないから、どっかのお店でご飯買った方がいいと思うよ」
俺がそう言うと、ガックリと項垂れてしまったフレア。
いつかの俺に似ていたけど、そこは言うまい。
結局店で買うことになったから再び外出することになったけど、料理に時間をかけてしまったからかもう辺りは暗く、すっかり夜になっている。
「それで、なんで俺はまたこの格好で外に行かないといけないんだ?」
今着てるのは買ったばかりのシンプルな服ではなく、最初から着ていた黒のドレスなんだよ。
なぜか、これを着てくれと若干不貞腐れた様子で言われたから、拒否できなくて仕方なく着ているんだけど…………。
「私の頑張って作った料理を食べもしないで酷評を言うクリューちゃんには罰が必要だと思ったのよ、今日は一日中そのドレスで過ごしてね♪」
…………そうだよな、せめて一口でも食べてから否定すれば良かったと今更ながらに思う。
せっかく作ってくれたんだし、あんな異臭の放つ謎の物体でも苦痛に耐えながら食べた方がよかったよな。
たとえわが身が朽ち果てようとも。
「ねぇ、今私の料理をボロクソに叩いたでしょ?」
ボロクソとか女の子が使っちゃダメだとは思うんだけど。
「ねぇ、聞いてるの? 絶対に叩いたでしょ? クリューちゃんは顔に出るんだから誤魔化しても無駄よ」
…………今まで何度か心を読まれてたけど、顔でばれていたのか。
さすがに申し訳ないので、弁解をする。
「悪かったって、でもあれを食べて翌日体調不良になったら元も子もないだろ。そもそも独学で料理をやろうとすることじたいが間違っていたんだよ、こういうのは上手な人にレクチャーしてもらわないと」
「うぐっ! 体調不良になる程の失敗作だったのね私の料理は、ぐすん」
…失敗した。フォローしようとしたらむしろ傷つけてしまったな。
「ねぇ今私の心はあなたのせいで傷ついたの、この傷を癒すには一緒に寝ないと治らないから、今日からずっと一緒に寝ましょうね♪」
…………あれ、これってもしかして嵌められた?
だってさ、料理できないことはフレア自身が理解してたと思うし、食べられない料理になってしまうのも予想がつく。
それで食べられなかったからと、不貞腐れて文句を言う。
そこで許す代わりに俺がずっと嫌がっている(本音は嬉しいけど一緒に寝るとフィニアに処分されるため抵抗している)一緒に寝ることを認めさせる。
…………これはさすがに狡猾すぎないか?
いや俺の考えすぎか? でもそれぐらいは平気でやってきそうなんだよなこいつは。
ニヤニヤと勝ち誇った顔でこっちを見ているし、これは確信犯かな。
「わかったよ、でもフィニアに気を許しすぎるなって言われたろ? そんな感じで簡単に懐に入れてたら危ないよ、フレアは可愛いんだから」
「一緒に寝るなんてクリューちゃんだけに決まってるでしょ! フィニアと一緒に寝るとか拷問でしかないし、他の連中もそこまで仲のいい人はいないわ、男はもちろん論外よ」
男は論外なら、俺も論外なはずなんだけどさ。
一応女の子らしく振る舞っているわけではないから、どこか男だと思われてもおかしくはないと思ってたけど、どうして疑問に思わないのだろうか?
ちなみにだけど、男だと疑問に思われたらその都度直して、男だとバレないようにするつもりだ、男だとばれたら今度はフレアに処分されるからな。
それでも自分から徹底して女の子のフリをして過ごすのはどうしても抵抗があるから、おかしいと思われたら直す、こんな感じで当分は過ごすつもりだ。
「フィニアとフレアって仲が良いのか悪いのかわからないな、一緒で寝るのは無理なのに、頼るときは頼る、う~ん、いまいちわからないな」
「私とフィニアの関係性ねぇ。大したことでもないわ、あいつには借りもあるし、貸しもある、それだけよ。そんなことよりも、今はここでご飯を食べましょ」
そんなやり取りをしていたらどうやらお目当てのお店についたみたいだ。
時間が時間だから居酒屋みたいなところしか空いていないみたい。
ここ以外の店はほとんど閉まっている。
ここ以外にも開いていた店は、不気味な感じの魔術師っぽい人のお店とかで、どこも初見では入れないような店ばかり、夜の街は昼の街よりも面白そうだったけど、どこか恐怖心を煽られる感じがするな。
当分夜の外出はやめておいた方がいいかな。
居酒屋に入ると当然だけど、むさくるしい男達の巣窟になっていた、まぁ、別に驚くことでもないので適当に空いている席に座る。
「この時間だと、どうしてもこんな人たちばかりなのよね、居心地が悪いと思うけど少しだけ我慢してね」
そんなことを言うけど別に居心地は悪くないんだよなぁ。
仕事が終わってここで一休みをしてから家に帰るであろう男たちの姿はうるさくも感じるけど、居心地が悪いとは思わない。
疲れた体にはお酒が薬なんだよ、とか友人も言ってたし。
まぁ、俺は飲めないタイプの人だから、ここでお酒は頼まないけどね。
…それにこの体ではお酒は飲めないだろう、となりの保護者に止められるからな。
「さっきからお酒の方ばかり見てるけど、クリューちゃんは飲んじゃダメだからね」
…………………ほらね。
そんなやり取りをしながら、料理の注文を取る。
選んだのは無難だけど、パンとスープのセットに頼んだパンにあう卵料理の2つだ。
届いたのでさっそく食べるけど、やっぱり量が多いな。
もはやテンプレと化した、ご飯を残してからの間接キスの流れだけど土下座の練習はしっかりやっておこうと思う。
…………ジャンプもつけたら罰が軽くなったらいいのになぁって再度思うよ。
そんなこんなでご飯を食べ終えたので、2人は帰路についた。




