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男が2人,項垂れる

 はぁ~~~、ホント嫌になるわ。

私達の目の前に現れたこのどうしようもない男。

なんども言い寄ってくるから今までは適当にあしらっていたけど、せっかくフィニアが気を利かせてくれて、この子と2人きりで街を歩いていたっていうのに、そのタイミングで邪魔してくるなんて、本当に間の悪い男ね。

もちろん相手になんかするわけないわ。


 「邪魔よ、どっかいきなさい」

なんども来るから、あしらい方も慣れたわ。


 「そんなつれないところもかわいいなぁ~、でもさ、俺これでもAランクの冒険者だぜ? そんなこと言ってばかりでいいのかなぁ~?」

………本当にむかつくわね。

それになにがAランクよ、どうせ不正でもしたのでしょう?

あんたみたいな絵に描いたような淫獣がAランクまで来れるわけないでしょうに、立ち振る舞いがとてもAランクだなんて思えないし。

こんな奴の相手は時間の無駄ね、適当に切り上げてここを離れましょう。


 「Aランクっていうなら、それに見合った言動をしないと女の子にはもてないわ、これを機に少しは反省したらどうかしら?」


 「あ゛ぁ゛!? 俺がもてないだと!? この俺様になんてことを言ってくれやがる! 女だからってもう許さねぇ、覚悟しろよ!」

…………ダメね、せっかく2人きりで出かけているのに邪魔されたせいで、適当にあしらうつもりだったのに思いっきり煽っちゃったわ。

後悔はしてないけど。


 それにしてもこの程度の煽りで激怒するなんて、こいつの頭の中空っぽなのかしら?

あんたはただでさえあんまり顔がよくないんだから、せめて性格ぐらいなんとかした方がいいよ、っていう善意による忠告を言ってあげたのに。

それに、ギルドの中では戦うことを禁止されているのにね。もしも戦った場合はその場で制圧されても文句は受け付けません、って事を登録したときに説明されたでしょうに。


 私が煽ってしまったせいで、周りも騒然としている。

面倒ごとになりそうだから、クリューちゃんに端っこの方に隠れていて、と伝える。

…何か言いたいことがありそうな感じだったけど、今は構っていられない。


 「あんたねぇ、ホントにこんな場所で戦うつもりなの? 野蛮すぎてとてもAランクだとは思えないわ、それにそっちがやる気なら私も黙ってやられるつもりはないから…わかったらそこを退きなさい」


 「舐めた口ききやがって、負けたら覚悟できてんだろうなぁ?」

男は舌なめずりしながら、こちらを見てニヤニヤしている。


 …………………心底不快ね。

大体、あんたなんかに私が負けるわけないでしょうに。

まぁ、そっちがやる気みたいだから、こっちも構えるしかないわ。

あんまりクリューちゃんの前では戦いたくないのよね。

暴力的な女だと思われたら今後2人で生活するにあたって距離をとられちゃうかもしれないし…もし、そうなったら最悪ね。

だから出来れば穏便にすましたいんだけど…………

ダメね、あれは止まらないわ。

もう剣も抜いちゃってるし。

 一瞬即発のこの状態に、ここにいる冒険者達も全員臨戦態勢をとり、受付の人は2階のギルマスの部屋に向かっている…これは穏便には無理そうね。


 「あんたみたいに実力を誇示して偉そうにする男が私は大嫌いなの、大人しく退いてくれればこんな面倒ごとにはならなかったのに、そっちの方こそ覚悟しなさいよ!」


 2人は剣を構えて、向かい合う。

最初に動いたのは男の方だった、フレアに飛びかかるように切りつけた。

フェイントも一切無しの先制攻撃、だけどAランクを名乗る割にはあまりにもキレが無かった。

飛びかかって来た男をまるで先読みしてるかの如く、これを軽くいなして相手の腹部に鋭い蹴りを放つ。


 強者が見れば実力差は一目瞭然(いちもくりょうぜん)であったが、相手の男は蹴り飛ばされて大きく吹き飛ぶものの、怒りに満ちており冷静に実力差を見極めることをしなかった。


 「ックソが! ぜってぇ許さねぇぞ、てめえ!!!」


 「はぁ~、まだやるのかしら? こんなあっさり吹っ飛ばされてまだ戦うの?」

呆れるわね。

周りの人たちも男を非難するような顔をしているっていうのに、この状態で戦ってもあいつの立場がどんどん悪くなるだけなのにね。

…そもそもあいつ周りをまったく見ていないわね。

どうやらあいつの言っていたAランク発言はやっぱり噓みたいね。

どんなに激しい戦闘でも周りの様子を気にしないといけないのは常識でしょうに、それを怠ってしまったら不意に何かが起こっても対応できないでしょう。


 …………例えばギルマスの登場とかにね。


 「おい!おまえらこんな所で戦闘してんじゃねぇぞ!!!」


 唐突のギルマスの登場で、全員が動きを止める。

…でも、あいも変わらずうるさい所は何とかしてほしいわね。


 「それで、なんでこんな事になったんだ? 誰か説明をしてくれ」

…誰も言おうとしないから仕方ないので私が説明した。

 

 この男に絡まれて適当にあしらったけど、粘着してきたのがうざくて煽ったら先に剣を抜いてきたから、相手をした。ってな感じだと説明した。


 ギルマスは頭を抱えて言った。

「そんなくだらねぇ事で一々ケンカすんじゃねえよ、吹っ飛ばしたせいで壁に亀裂(きれつ)ができてんじゃねえか、相変わらずの馬鹿力なんだからもうちっと手加減してくれ。ギルドが壊れちまう」

……………………馬鹿力って女性に対して失礼な。

でも、壁を見たら割とシャレにならない亀裂ができていて、気まずいわ。

これは弁償(べんしょう)コースを逃れられないわね。

ここ数日出費が重なっているからなんか割のいいクエストがあったら受けないとね。あと半年ぐらいなら何もしなくても大丈夫だけど、何かあってからじゃ遅いものね。


 「おい、そこのボロボロの男、ランク詐称(さしょう)は軽い罰が下ることになっているはずだよな、こんな田舎のギルドにはAランクの冒険者なんて常駐(じょうちゅう)していないはずなんだが…なにか言いたいことはあるか?」


 男は諦めたようにガックリと項垂(うなだ)れてしまった。


 これにて騒動は終わりを告げたけど、ギルドの破壊をしたのは一応私の扱いなので弁償は私がすることになった…納得できないけど。

それと軽く注意もされた、ケンカするならよそでやれって、私だって好きであんな場所で戦ったわけじゃなかったのに。

やっぱり納得がいかないわね。


 「なぁ、やっぱフレアは、その、男にモテるんだよな?」

私たちはようやくギルドから離れられるようになったから、今度こそ家を買いに向かっているんだけどその道中でそんなふざけたことをのたまうクリューちゃんをどうしてやろうかと考える。

結果から言っちゃうと、まぁ、うん、男に何度も言い寄られたことはあるのよね、さっきの男みたいなのに何度かね。

護衛の依頼で命を救ったら変な貴族に付きまとわれたり、知らない街に行ったときに冒険者ギルドで変な男に絡まれたりとかで色々と大変な目にあったのよね。

私なんかのどこがいいのかしら? 男性に対しては意図して雑に扱っているのに、向こうの方からやってくるのよね。

嫌われるように仕向けているのになんで言い寄ってくるのか、私には一生理解できないわ。


 コホン、話を戻してと。

この子はあんな淫獣ばかりの男なんかに私が現を抜かす(うつつをぬかす)とでも思っているのかしら?

イチャイチャするなら可愛い女の子がいいに決まっているじゃない♪

それとも、もしかして私があんな感じの男に取られちゃうとでも思ったのかしら? 


 「男に何度か言い寄られたことはあるわ、全部断ったけど。でもどうしてそんなことを聞いたのかしら? もしかして私が誰かと付き合うなんて思っちゃったのかしら?♪」

私の問いに真っ赤な顔をしてうずくまる。


 「いや、その、あれだ、今は好意を抱いている相手はいないってことなんだよな、そっか、なら、そのさ、いつかさ生活する準備とか色々終わったら、その2人でどっか遊びに行きたいなって、これはその、一応デートのお誘いなんだけどさ…………」


 今まで、私は何度かクリューちゃんに対して、過度なアプローチをかけていたけど、それはこの子がどこか私から距離をとってるような気がしたから、それを取り除きたくてしていたことなのよね。

だからこそ返答に困ってしまう。

…いや、深く考えなくていいじゃない、ただのデートのお誘いだもの。

別に付き合って欲しいと言われたわけじゃないものね、それなら答えは簡単よ。


 「もちろんいいわよ♪ しっかりエスコートしてあげるから楽しみにしててね♪」

満面の笑みで答えたら、意外な言葉が返ってくる


 「いや、そのエスコートは俺がするから大丈夫だ、ここまで世話になりっぱなしだからね」

…………嫌に決まってるじゃない。

私がクリューちゃんに連れていかれるのはなんか(しゃく)なのよね。


 「クリューちゃんはまだまだ子供なんだから、私にエスコートされてればいいのよ♪」


 …………どうしてかしら、私がそう言ったらこの子はガックリと項垂れてしまった、その様子は今日どっかで見た男とそっくりだった。


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