どっかで見た光景
色々あったけど、無事街に戻ることになったみたいだ。
ちなみにあの後、フィニアにたっぷりとお説教を食らいましたよ、同姓でもそう簡単には同じベットで寝ないんだから、以後気をつけるように、とのことだ。
とりあえず、確保した焼き魚の残りを食べながら、これからのことを考える。
まず、これからもフレアと共に過ごすことになるだろうけどここで問題がある。
フィニア曰く、彼女は若い男が大嫌いとのこと。
これが俺に直撃しているんだ。
だとすると、なんらかの対策をするべきだろう。
最初に思いつくことは、これから彼女と異性とは決してしないことは、しないようにすることだ。
フレアからすれば今の俺は同姓のため、色々と踏み込んだことをして来るだろうけど、全力でこれを回避又は防衛することが大事だと思う。
もし俺が男だとばれた時、性別が同じなことをいいことに彼女に好き放題していたのを知られると、多分俺はあの炎の剣で斬られる。
ついでに縁も切られる。
ここまで助けてもらってるのに、裏切るような真似は絶対にしたくないからな。
そんでもう一つ、俺の中身は男であることは隠すべきだと現状は考えてるってことだ。
まだ何もやらかしていないなら、俺が男だとはっきり言ってこれからを過ごすべきだと思うけど…残念ながら回避も防衛もできなかったことが、既にあるからね。
現状しでかした罪は、間接キス罪及び、同じベットでの睡眠罪を訴えられる状況だ。
フィニア裁判官に無罪を訴えても、白い眼を向けられ呆れた様子で無情な判決が下ることが予想される。誰がどう見ても有罪だろう。
これ以上罪が増えないようにすることはもちろんだけど、男だとばれなきゃ訴えられることもないからね、全力で隠すしかないだろう。
ただ、今は男だと思われてないけど、ひょんなことからばれてしまうってこともあるからな。
できる限り、彼女の前では男らしい行動は慎むべきだろうな。
クズだな、とは我ながら自覚しているけど、今フレアの庇護下から離れたら多分生きていけないからな。
心の中で土下座しながら謝る。
…でも、いつか自分の体を取り戻す気でいるから、俺は男だと必ずばれるんだよな。
その時までに色々と覚悟は決めておいた方がいいな。
そんなことを考えながら、俺は最後の焼き魚を食いきった。
「それじゃ、俺はっとと、コホン、私はもう満腹だから馬車の中で寝てくるよっとと、寝てくるわ」
無様な自覚はもちろんある。
だけど自分で決めたからにはやりきるさ。
「…クリューちゃん熱でもあるんじゃないの!? あなたそんな言葉遣いじゃないでしょう? あの決して飼いならせない子犬みたいな言葉遣いはどこにいっちゃったの? フィニア! 早くこの子にエクストラヒールを使ってあげて!」
俺は子犬じゃねぇよ。
「は~い♪ それじゃ~エクストラヒールよ~♪」
………ホントに回復してどうすんだよ、俺は別にどこもおかしくねぇよ。
ん??? 回復するときにフィニアが近づいてきて、俺にだけ聞こえるように小声で話しかけてきた。
「フレアちゃんのために、言葉遣いを直したのね~、偉いわ~♪ で~も、まだまだ練習が必要みたいね~♪」
「直したって言い方はやめてくれ、演技をしているって言ってくれた方が精神的にマシなんだけど」
まるで前から女の口調だったみたいな言い方は勘弁してくれ…
「細かいわね~、で~も、ありがとうね♪ フレアちゃんのために色々と考えてくれたのでしょう? あの子とは結構長い付き合いだからほっとけないのよ、クリューちゃんよりも危なっかしい時期が、あの子にはあったからね~」
それは少し意外だな、あいつはしっかりしている印象を持っていたんだけどな、若い時無茶をしてたのか。
ってか、比較に俺を出すのはやめてくれよ。しかも危なっかしいって…俺のどこに危なっかしいところがあるんだよ。
深く追及すると痛い目に合いそうだから聞く気はないんだけどさ。
「とにかく、私はこれからお淑やかな言葉遣いで話すから、以後笑わないようにしてくれよ」
「う~ん、まだ若干お淑やかになりきれてないみたいだけど?」
フレアに厳しい指摘をされるけど、俺めげない。
「これから私、頑張るから応援よろしくね♪」
アイドルっぽくウインクもつけてあざとく言ってみたけど…………
「これは…ちょっと酷いわね、完全に目が死んでるウインクなんて初めて見たわ」
どうやら俺の中の男の部分が悲鳴をあげていたみたいだな。
「まぁ、これから頑張って言葉遣いを直していけば、いつかちゃんとした女の子になれるからね~、クリューちゃん頑張ってね~♪」
耐えろ、耐えるんだ俺。
「ちゃんとした女の子になれる」ってフィニアに絶対煽られているけど、耐えるんだ。
立派な淑女なら、こんなことで食らい付いたりしないからな。
「もう、フィニアったら私のこと馬鹿にして、もう知らないわ、先に寝るからね」
ダメね、煽り耐性ないから、す~ぐ食い付いちゃうわ。
…うげぇ、思考まで女の子っぽくなっちまってんじゃねえか、反省反省っと。
寝る場所はどうやら俺達が乗ってきた馬車みたいだね、フィニアのアイテムボックスの中にはテントもあるっぽいけど、せっかく馬車があるならそっちで寝ることに決まったみたい。
でもさ、馬車を見ると寝る場所が2ヶ所しかないんだよな。一応、床に寝れば3人寝れるけどさやっぱ嫌だな。
そんなことを考えていたら、寝る準備を整えた2人がやってきた。
「そういえば寝る場所が2つしかないわね~、どうしようかしら~」
まぁ、床で寝ますよ俺は…ん? この流れどっかで見たような?
「俺が床で寝るから大丈夫だよ」
「ダメよクリューちゃん! 明日は2人で生活するにあたって買いたいものとか冒険者登録とかするんだから、床で寝たら疲れちゃうでしょ」
あれ? やっぱりどこかで…?
「いやでも、2人分しか寝る場所ないなら諦めるしかないじゃんか」
「私と同じスペースで寝ればいいでしょ、前の時より狭いけど抱き合って寝ればいけるでしょ♪」
却下。
抱き合って寝るとか絶対に我慢できるわけないだろ
「…………なるほどねぇ~、この流れで同じベットで寝る流れになっちゃったのかしら~、これでクリューちゃんを責めたのは間違っていたのかもしれないわね」
悟ったような表情のフィニア
俺の気持ちを分かってくれたようでなによりだ。
「とにかく、どんな理由があっても俺はフレアと同じベットでは眠らないからな!!!」
約束したからな、もう同じベットでは寝ないと
これだけは決して譲れないから、強く言い放った。
裏切りたくないから、拒絶するのは結構堪えるな…
「……………………そんなに嫌がらなくたっていいじゃないのよ」
寂しそうな表情を隠す気もなく弱々しい声音で、そう答えた
これから先ずっとフレアに対して同姓なら許容できるスキンシップを拒絶していかないといけないか……仕方ないこととはいえ、さみしいな。
自分で決めたことなのにもう揺らぎ始めている。
ホントに情けないな俺は…もう男に戻る資格なんてないのかもな、なんてな、っははは。
乾いた笑い声が眠たい頭の中に響く。
「そうねぇ~、さすがに床で寝るのは私も許容できないわ~、クリューちゃんは私と一緒に寝ましょうか♪」
…………へ???
いやいや、まてまて、それじゃ、根本的な解決に至ってないでしょ?
俺は男だから、女性と軽はずみに一緒に寝てはいけないってことが問題なんだからさ、フィニアさんやそれは違うでしょう。
まぁ例によって疲れているからありがたい提案ではあるんだけどさ。
いや、まてこの流れで不用意なことを言ったら同じ轍を踏む可能性が…
ここは慎重に対応しよう。
「フィニアさんや、ありがたい提案だけどさ、その…事情が事情でしょ、だからダメだと俺は思うんだけど…」
困ったときはまず様子を伺う、しかし…
「私が気にしないっていってるんだから問題ないわ~、はいそれじゃ寝ましょうね~♪」
抵抗する俺をあっさりと捕獲したフィニアと、当たり前のように一緒のスペースで横になる。
もちろん狭いスペースなので抱き合うような感じだけど…これは俺が男だとわかったうえだから、not guiltyだよな?!
ああ、目の前の2つの果実が俺を狂わせる…
「そういえばクリューちゃん? 言葉遣いが割と早い段階で戻っていたけどいいのかしら~?」
…あ、忘れてた
女の口調で話すと思考まで女化してしまうのに、思考を男のままにすると今度は口調も男に戻る
詰んでないか、コレ?
そんなことを深く考えていたら、どうやら眠気が限界に達したみたいだ。




