シンプルな焼き魚が1番だと思う
非常にまずい状況になったな。
見つめる先は殺気を隠そうともしないフレアと臨戦態勢を維持するフィニアが睨み合っている。
止めた方が絶対にいいと思うんだけど…
あの中になんも武器を持たずに割って入るには勇気が足りない
こうなるならどっかの店で勇気を買っておくんだったな。
どこで売ってるのか知らんけど。
…なんて現実逃避しても仕方ないよな。
「あら~フレアちゃんじゃない~、どうしてこんな所にいるのかしら~? せっかく書置きを残したのに、ここに来るなんてね~? もしかして~、ついに文字も読めないほどに頭がおバカになっちゃったのかしら~? 扉を壊して進むフレアちゃんだものね~、そんなおバカちゃんだからここまで来ちゃったのかしら~?」
ブフッ!!!
落ち着いた口調で話してたから、まずは無難な感じで会話を始めようとするのかと思っていたら、フィニアさんが初手からいきなり煽りやがった。
それもかなりキツイ言葉で。
これは非常にマズイ事態になる予感がする。
「………あんなどうしょうもない一言だけの書き残しで私が納得すると思うなんて、そっちこそどうかしてるんじゃないかしら? 私を納得させたいなら直接言葉で伝えなさいよ。それにね、あんたの残した紙には、たった一言「あの子は私が面倒みるからあとは任せて」みたいな一文だけしか書いてなかったじゃない! あんなので納得するわけないでしょうがあぁーー!!!」
デスヨネー。
そりゃ、怒ってる相手に煽ったら当然燃える。
フレアの持っている剣も物理的に燃えてる。
…剣に炎を付与する奴、めっちゃカッコイイな! 俺も魔法使えるようになったらしいし、後で教えてもらおう。
ってそれどころじゃないんだった…
とにかく俺には、今やるべきことが2つあるんだ。
1つ目は、目の前で繰り広げている争いを止めること。
これの達成は極めて難しい。
単純に片方は剣を片方は杖をもっている危険な状況だ。
下手に関わると事故って一撃で倒される、なんてことになりかねないからな。
2つ目は、さっきまで食べていた焼き魚の残りが、まだいくつか残っているからそれの回収だ。
あの焼き魚さっき1本だけ食べたんだけど、めっちゃうまかったからな、もう一本食べたいんだ。
夕飯はあれしか食べてないからまだお腹空いてるし。
ただ問題が1つ、焚火を向かい合うようにして2人が睨み合っているから、非常に回収しずらいんだ。
まぁ、ばれないように近づいて、こっそり取ればいけるだろ。
てなわけで、焼き魚の回収ミッションスタートだ。
そろ~り、そろ~り。
そろ~り、そろ~り。
そろ~り、そろ~り。
よし、確保!!!
そして迅速に撤収。
の前に焦げてないかチェックのため、少しだけ味見。
「あちっ、はふはふ、んぐ、もぐ、この焼き魚はホントにうまいな♪」
う~ん堪能♪ それにしてもこいつはめっちゃうまい、鮎っぽい見た目で、サイズも鮎っぽいこの魚、こいつは気に入った、是非とも自分用に欲しいな。
っとと、食べてる場合じゃないな、今度こそ撤収。
ん? そういえば、2人の争いが気づいたら止まっている、どうしたんだ?
気になって2人の方を見て見ると俺を見て、すっごくほっこりしていた。
なぜだ???
てか、気づかれないように、コソコソしてたんだけどな。
ステルス系の魔法も覚えたいな。
「なんか争いがいつのまにか終わってたけど、もういいのか?」
「…………あなたが急に居なくなったから私は追いかけてきたっていうのにね。はぁ~、緊張感がなくなるわ」
そんなこと言われてもな~、誘拐っぽいことされたけど、悪意とかを全く感じなかったからな。
やろうと思えば、ずっと気絶させた状態で運んだりもできただろうに、それをしないうえに自由に動ける状態のまま俺を放置していたからな。
むしろ旅をしている感じを味わっていたからな、野営とか見てるだけでも楽しかったし、緊張なんてどっかいっちゃったからなぁ。
「それでフィニア、どうしてこの子を連れ去ろうとしたのかしら? 理由次第では戦うことになるんだけど?」
一応怒りは静まった様子のフレア。
剣の炎も無事鎮火したみたいだ。
「クリューちゃんの記憶を少し覗かせてもらったのよ~、それでこの子を自由にすると色々と危険があるから私が保護しようと思ったわけよ~」
合わせたい人がいるって言ってたし、なにかフィニアさんにもやんごとない事情がありそうなんだよな。
危険があるとかも言ってたし、その辺も後で詳しく聞きたいな。
「どうして危険があるの? そこが知りたいんだけど」
俺の代わりに聞いてくれたフレア、やっぱり俺の心が読めてるんじゃないかなって思う。
「それは…詳しくは言えないわ、でも私にこの子を傷つける気がないのは信用してほしいの」
真剣な様子でフレアに訴えるけれど…
「詳しく話してくれないのにどうして信用しろ、なんていえるのかしらね? 無理に決まっているわ。私はクリューちゃんと約束したのよ、私が面倒を見るってね」
そう言って、俺を見て微笑むフレア。
フレアのカッコ良さ、どんどんレベルが上がっていくな~。
俺のカッコ良さ、どんどんレベルが下がっていくな~。
名誉挽回のチャンスはまだ来ないのか! そろそろ情けなくて死んでしまうよ、俺の中の男の部分がね。
「そう、よね。なら仕方ないわ」
フィニアが覚悟を決めた様子でそう言うと、フレアの持つ剣が再び燃える
「クリューちゃんに決めてもらいましょう、私か、フレアちゃんか、どっちについていくのかを、ね♪」
あ、炎がまた鎮火した。
「ふ~ん、やけに自信があるみたいだけど、あんたはまだ出会ってから数時間でしょう? 私はもうクリューちゃんとは同じ屋根の下どころか、同じベットで寝た仲なのよ!」
どや顔で不純な関係みたいなことをこ示唆するような言葉は使わないでほしい。いやらしいことは一切なかったんだからさ。
でも今日の朝起きた時に、なんかドレスに違和感があったんだよなぁ、なんでだろ。
「…………それは一体どういうことかしら~? クリューちゃん、あなたその体だからってフレアちゃんにナニかイケナイことしてないわよね~?」
うげっ!!!
フレアが余計なこと言うから俺に飛び火したじゃねえか!
でもなんやかんや争ってたけど、やっぱり2人は友人なんだって思う。
俺みたいな奴に変な事されてないか心配してるってことだからね。
「違うって、あの時は疲れてたから速攻で寝たから」
紛れもない事実だ、えん罪は勘弁だぞ!
「じとーーー、まぁいいわ。フレアちゃんもあまり無防備になりすぎるのはいけないと思うわよ~」
なんとか回避できたみたい、だな。
「…あんたが私の心配するなんて、この子は悪いことするような子じゃないでしょ。…でもそれを分かったうえで私の心配をしたってことよね? だとしたらあんたが見たクリューちゃんの記憶に犯罪をするような何かがあったってことよね?」
…おいこら、人を勝手に犯罪者扱いしないでくれよ。
でもあのやり取りの中で情報を得るとかすごい洞察力だな。
「ええ、そうね。詳しく話すことはできないけど、あなたが強いことも理解した上で無防備な姿はさらさない方がいいと、私は忠告するわ~」
「そう、でも私は私なりのやり方でクリューちゃんと過ごすから、あんたの指図は受けないわ」
そう言って、吐き捨てるフレア。
多分もうカッコ良さのステータスはカンストしていると思う。
「…それで、考える時間は結構あったと思うから、クリューちゃん、そろそろ決めてほしいのだけど~?」
フィニアにそう言われて、ハッとする。
でも、最初から答えは決まっているんだよな。
「ああ、俺はやっぱりフレアと一緒にいたい。まだ借りた恩が残っているからな、せめてそれを返さないとなって思ってるから」
もらった分はしっかり返さないと多分俺の中の男はもう再起不能になるだろう。
「だってさ、フィニア諦めなさいよ~♪」
そんなことを言いながら勝ち誇った顔をするフレア
「しょうがないわ~、今回は諦めるけどいつかあなたには必ずエルフの国に来てもらうからね~」
どうやら山場は通り過ぎたみたいだな。
「それとクリューちゃん~? 一緒のベットで寝た件についてお話したいことが沢山あるの~、わかるよわね~?」
…どうやら山場はこれからみたいだ。




