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街への帰り道

 暗闇の夜の中、一人の少女の小さな寝息が静寂な夜に響き渡る


 「んぅ…………すぅ…………くぅ…………」

余程疲れているのか、ぐっすりと眠っているみたい。

すぐ横にいるのが、今回の騒動の元凶だっていうのにね。


 「本当に無防備なのね~」

そんなことをフィニアは小さく呟く

私もそれには同感。

こいつ相手にこの子が警戒してもどうにもならない実力差があるとはいえ、もう少し警戒をした方がいいと思うのにね。


 そんなことを2人に心配されているのに、少女は心地よさそうにスヤスヤ眠っている。


 「この子が寝てる間に聞いておきたいことがあるんだけど」

起きてしまわないように、小声で話す。

今はこの子が寝ているから今回の事をようやく聞ける。


 「…記憶関係は黙秘するわよ~」

それぐらいわかっているってのに・・・まったく、この子の記憶をどれだけ聞かれたくないのよ。

過剰なまでに念を押すフィニアに悪態をつきたくなるのを我慢する、この子が起きたらいけないわ。


 「どうして誘拐なんて奇行に及んだのよ、あんた馬鹿みたいに生きているんだからもっとやりようがあったでしょ、家だって飛び出したままで放置されてたし、あれじゃ物を盗み放題よ」


 「ゆっくり準備なんてしていたら、フレアちゃんが帰って来るじゃない~、そしたらややこしい事になるかなって思ってね~」

わたしがいないうちに事を終わらせようって…確信犯じゃない。


  「それに~、家に置いてあるものなんてたかが知れているでしょう~、それよりも保護を優先したかっただけなのよ~」


 「保護ねぇ、私ではまるで守れないみたいな言い方ね」

頑なに誘拐とは認めないわね、相変わらず妙なところでこだわるのよね、家にあったよくわからない盆栽とか。


 「フレアちゃんならこの子をきっと守れるわよ~、でもねこの子はあなたを苦しめるような気がする…う~ん違うわ、あなたを裏切るような結果を望まずにしてしまうような気がするの、それでわたしが代わりに面倒を見てあげようと思ったのよ~」

苦しめるって…

いや、こいつがこんな言い回しをするんだから、何か意味があるはずね。

単純に物理的な苦痛はこの子じゃ無理に決まってる。

貧弱、鈍感、そしてかわいい。 うんやっぱり無理ね。

となると、精神的な苦痛? でも街でデートみたいな買い物してた時、すっごく楽しかったからそれもないわね。

まぁでも、あの時は楽しかったけど、男どもがクリューちゃんのドレス衣装にいやらしい視線を向けてなければ、最高の買い物だったのにね…まったく思い出しただけで反吐がでるわ。

…………それにあの子もあの子よ、男のやらしい視線に鈍感すぎるのよ! あんなに恥ずかしそうにもじもじしてたら男どもが調子に乗るに決まってるじゃない!!!


 「フレアちゃん~、今の顔は乙女がしていい表情ではないわ~」

…そんなにひどい顔だったのかしら。

それとわたしを乙女扱いするのはなんか嫌ね。

可愛くない自覚はあるんだから。


 「それで苦痛? そんな曖昧な言い方をされてもわからないわ、伝えたいことがあるならはっきり言いなさいよ」


 「そうねぇ~、あんまり近づきすぎないように過ごしてほしいの、うっかりで取り返しのつかない事になりかねないわ~」


 だ・か・ら! はっきり言えって言ってるでしょうがああぁぁぁぁぁぁ!!!!!

そんなんじゃわかるわけないでしょうが!!!

なんなのよ、苦痛? 裏切り? 近づくな? ぁぁ、もう!あやふやなことばかりで話にならないわ。

これ以上は考えても無駄ね。


 「急に言葉遣いを無理して変えようとしてたり、微妙に女の子っぽくなかったりおかしなところだらけなのは理解してる、そのこととあんたの隠してることが繋がってることもなんとなくわかるわ、だからそこは詳しく聞かないでおいてあげる…………その代わりにそこで寝てる子私にちょうだい」

一瞬キョトンとした表情になったけど、すぐに満面の笑みに変わり答えた。


 「………だ~~~め♪」

……………………どうやらあの時にこいつを倒しておいた方がよかったみたいね。

これ見よがしに抱き着いているのが腹立つわ。

ここで暴れてもしょうがないから、今日はもう寝よう。

…今日は結局にゃんにゃんできなかったわね。

まぁいいわ、明日になれば家を買って2人きりで生活する予定だもの、そうなれば機会なんていくらでもあるわ♪









 う~ん、よく寝たなぁ。

あんな状態で寝てたから、眠りが浅くなるかなっと思ってたけど、案外ぐっすり眠れたみたいだ。

単純に疲れるような出来事が多かったからだとは思うけどね。


 「それで街まで戻るんだよな?」

俺が起きた時には2人とも既に起きていて、出発する準備も整えていたみたい。


 「ええ戻るわ、こいつがいなければ今頃冒険者登録も終わって、家も買って2人で生活する準備も出来ていたと思うのにね」

フレアはそう言いながらジト目でフィニアを睨めつけている。


 「文句は街に戻ってからでいいでしょ~、それじゃ出発すわね~」

特に準備するようなこともないから、「大丈夫だよ」と出発を促す。

それを聞いて、フィニアは馬車を出発させた。


 なんやかんやで人生初の野営だったからな、なんの変哲もないただの街道で景色なんて楽しめなかったし、そもそも俺は眺めていただけで、なんも手伝えなかったけど、すっごく楽しかったなぁ。火を囲んでわちゃわちゃしながら焼き魚を食べるとか、いかにも冒険って感じがするし、これからは自力でこういうことをやっていきたいなって思う。


 って違う違う、楽しんでばかりで大事な目的忘れてた。

まずは体を奪ったあいつを探さないと! 街に戻って、金稼いで、居場所を見つけて、ぶん殴る。

これが今の俺の大事な大事なメインクエストだからな。

他のことにうつつを抜かしてばかりではダメだよ。


 そんな感じのことを考えながら到着を待っていたら、馬車が止まる。

なにごとだろうか? とりあえず外に出て様子を見るべきかな。

そう思って、外に出ようとしたらフレアに魔法らしきもので拘束される


 「当たり前のように出ていこうとしないでよ、まったく」

なぜかため息をつかれる。


 「止まったってことはなにかあったんだろ? 泥とかに(はま)ったとかさ」

俺の発言を呆れた様子で答えるフレア。


 「その程度でフィニアが馬車を止めるわけないでしょう、魔法で泥を消し去るぐらい無詠唱でやってのけるわよ、あいつならね」

ふぁ~~~、すんごい魔法使いなのはどうやら本当みたいだな。


 「とりあえず私が見てくるから、絶対に馬車から離れないでよ」

そう言って、馬車から飛び出すフレア。

なんかこども扱いされてるような気がするけど、役立たずなことは自覚してるからジッとしてるつもりだ。

………戦闘以外ならね。

ここまで面倒見てもらっているからには、戦闘ぐらいは役に立ちたい。

男らしく振る舞ったら色々とまずいけど、フレアが戦っているならそれを見ているだけってのは、さすがにダメだろう。

この少女の体では戦闘は厳しいだろうけど、黙ってみてたら男としてのプライドが死んでしまうからね。


 ちらり、外の様子を伺う。

どうやら、フレアの懸念(けねん)どうりの襲撃みたいだ。

ここから見える分だと6匹? いや8匹ほどの狼の群れが馬車を取り囲んでいるみたいだ。

体格は大型犬と同等のサイズだから、飛びかかられたらゲームオーバー間違いなしだな。


 さてと、まずは落ち着くために深呼吸をする。

すっすっふ~すっすっふ~。

うん、無理、戦いたくない。

どう考えても無理や、あのサイズ相手に戦える自信はやっぱりねぇよ。

それに見るからに獰猛やんかあの顔。


歯がゆい気持ちで剣を構えているフレアをこっそりと見守る。


 (今すっごくクリューちゃんに見られてる気がするわね、ここはカッコイイところを見せて、「すごいなフレア抱いて!」って言わせてやるわ!!!)


 勝負はあっさり決まった、狼の一頭が先陣を切って突撃したけど、一歩だけずれて、これを回避。

横を通り抜ける瞬間に首元を一閃。

胴体と頭が今生の別れを告げる。


 周りの狼はそれをみて敵わないと察したのか、全員尻尾を巻いて逃げ出していった。


 ちょ! 今の剣技めっちゃカッコイイよフレアさん。

これは絶対に俺も冒険者になって一緒に戦いたいな。

強いし、頼りになるし、なにより可愛いし。

最高のパートナーやんか。

…元の体の持ち主云々は後回しでいいか。

メインクエストは更新されました♪



 

 「なぁフレア、俺も冒険者になる予定だからさ、一緒にやらないか?」

狼を撃退した後は、特に問題もなく街へと向かっている。

今はまだ移動中だから、一緒に活動したいってことを伝える。


 「…もしクリューちゃんが生活のことで足を引っ張りたくなくてそんなことを言っているなら、私は全力で止めるわ」

もちろん生活するにはどうしたってお金がいる。

それを意識しているかって聞かれるともちろんと答える。

…………けどそれ以上に冒険者に憧れているからな。

旅をしながら実力を上げていって、名声と富を得るのはロマンだろう。


 「それもあるけど、単純にフレアと旅したいからな、冒険したり助け合ったりしたいから、今は弱くて頼りないけどいつかパートナーにふさわしい存在になりたいから…なんか恥ずかしいな、コレ」

最後のほうはなんかプロポーズみたいな感じになっちゃったし。

自分の顔が赤くなる感覚がする。


 「…………………そう、なのね、一緒に旅したい、ねぇ、ならいいわよ」


 どこかちぐはぐな回答だけど俺は疑問を抱けなかった。

羞恥心からか顔を上げられなかったからな。

だからお互いに気づけなかった。

まるで付き合いたてのカップルみたいな表情を、2()()でしていたことに。


 …でも思わぬ所からストップがかかる。


 「それはまずいんじゃないかしら~? ただでさえ有名なS()()()()冒険者が身元不明の少女を贔屓したら、嫉妬とかやっかみとか色々とあると思うのだけど~?」

 ん? Sランク? あれ? Cランク冒険者って前に言ってなかったっけ?


 

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