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追いかける猛獣とのんきな2人

 「………………なによコレは」

今さっき調査の報告を終えたから、嫌な予感がするからと全力で戻って来たんだけど


 「なにが「クリューちゃんのことは私に任せてね♪ この子のお世話は私が引き継ぐからのんびりしてていいわよ♪」よ! まぁ、いいわ。あんたが何を考えてこんな奇行をしでかしたのかは理解できないしする気もないから。ただあの子は私が面倒を見るって約束したから、あんたのいうことに従うつもりなんてないのよ!!!」

あいつの部屋に残されたこの手紙にそう吠える


 とりあえずあいつが何処にいったのか、彼女一人なら転移魔法を使われて追いかけるのは非常に困難なことになるが、今回はクリューちゃんがいるから転移魔法は使えない。

となると移動はおそらく馬車ね。

前もって準備していたら他の可能性はあるだろうけど、今回の誘拐はあいつにとってもイレギュラーな事態なはず。

それなら馬車での移動で決まりね、この街で馬車が借りれそうな場所に行って、馬鹿でかい胸のエルフが借りた馬車が何処へ向かったかを聞けば、追いかけることができるはずね。


 「大きい胸のエルフですか……………ああ、あの人ですか、ええ、来ましたよここに」

よし! 見つけたわ。

ちなみに今のが尋ねた店の2件目で、早くに見つけることができたから大幅なタイムロスにはならなくて済んだわ。


 「それでどっちの門から出て行ったのかしら?」

この街には東と西の2つの門があるけど、もし西なら世界樹の国(エルフの国)に行ってる可能性が高いわね。むしろそれ以外だと心当たりがないから追いかけるのは絶望的なのよね。

でもどうやら予想は当たりみたいね。


 「ええっと、たしか、西の門の方から出て行ったはずですよ、それで、その方を追いかけるようでしたら馬でも貸しましょうか?」

馬ねぇ、ありがたいけど今回はパスね。

今回は本気で追いかけたいから、馬だと邪魔になるのよね。


 「今回は遠慮しておくわ、情報ありがとね」

情報料で金貨を握らせる


 「はわわっ、そんな大金いただけませ――――ってあれ、もういない?」

 

 日がすでに傾き始めているから急がないと

2つクリューちゃんと約束したからね。

1つ目は、当分の間は私が面倒を見るってこと

2つ目は、今日は寝かせないって約束したことよ!

絶対に今日中にあの子を食べてやるんだから!!!












 「それで、聞きたいことはいくつかあるって言ってたわよね~、ほかに何かあるのかしら~?」

吞気(のんき)な感じで会話を続ける2人

その後ろをものすごい勢いで追いかけている人物がいるなんてまだ誰も気づいてはいない。


 「いやさ、もう暗くなってきてるだろ、ここじゃ食べ物とかないし、野営とかってどうするのかなって?」

一応馬車の中を確認したが、彼女はバックみたいな物を持ってきていないんだ。

それだと、火おこしや食料、寝る場所なんかがまずいと思うんだけど…


 「ああ、それなら問題ないわ、さっきも言ったでしょ、私はすんごい魔法使いだって♪」

そう言うと、彼女は何もない空間からパンを取り出して、俺に渡してくれた。


 「うおっ!!! 今のすごいな! もっかい!もっかい見せて!!!」

何もない空間から物を取り出すとかすごいやん!


 「これはね、アイテムボックスっていう魔法なんだ~、私のは特別製でほぼ無限に入れられるから、旅をするときは、すっごく便利なのよ~♪」

そう言いながら2個目のパンを渡して来る

…………いやパンを2個も渡されても困るんだけどな。


 それにしてもあの魔法はカッコイイし便利だしで俺も使いたいなぁ。

形はどうあれ、せっかくこんな異世界に来たんだから、楽しく過ごしたいからな!


 「なぁ、それ俺も使えるようにはならないのか? めっちゃ(あこが)れるんだけど!」


 「もちろん努力次第では使えるようになるわ~、でも努力する前にやらなきゃいけないことがあるの、だから少しだけジッとしててもらえるかしら~」


 「ん? なんだかよくわからないけど、ジッとしてればいいんだな」


 「ええ、そのままでお願いするわ~」

彼女はジッとしたままの俺に向かって右手を伸ばしてきて、なにやら詠唱を始めた。…すると右手がほのかに明るくなってきて、それを俺の胸の位置に当ててきた。

触れたとたんに温かい何かが体を巡ったような感じがした。


 「ふぅ、これで大丈夫ね」


 「ん? 今のはなんだ?」


 「ええっと、さっきまで魔力を貯める体の機関が壊れていたみたいだったから、今ので直したのよ。別に壊れていても体に問題はないんだけど、魔法が一切使えないままになるから直しておいた方がいいと思ってね~」

おお! これで俺も魔法を使えるようになるのか!


 「それにしても、あなたが起きたら軽く説明して、その後また馬車を進めようと思っていたのだけど…………もう暗くなるわね~、今日はここで野営しましょうかねぇ」

…確認したいことがいくつかあったとはいえ、移動の邪魔をしていたことを思い出す。

彼女曰く、安全面は大丈夫とのことだが長い時間街の外にいるのはあまりよくないだろう。


 「野営するんだよな、なら俺も何か手伝った方がいいよな?」

野営なら男が仕事を色々とするべきだと思うから、率先して動きますよアピールをするけど…


 「う~ん、ありがたいけれど、あなた野営とかしたことないでしょう? その、馬車で待機しててもらえないかしら~?」

…戦闘でも戦力外は野営でも戦力外みたいです。


 「えっと、そのクリューちゃん、これでも食べて元気出して、ね♪」

そう言うと彼女は3個目のパンを渡してきた。

…………もう持てないよ、それにこの体じゃ食べきれねぇよ。

俺のそんな想いは届くことはなく、彼女は淡々と野営の準備をしているのだった。


 

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