誘拐?
ガタガタと揺れる感覚がする。
だが、その程度では俺の眠りは止められない。
ガタン!!! 今度は大きく揺れた。
「イテッ!!! ふぁ~? あれ、ここどこだ?」
大きく揺れたせいで頭をぶつけて飛び起きる。
先程までフィニアさんの屋敷にいたはずだがまったく見知らぬ場所に居て戸惑う。
とりあえず周りを軽く見渡す、部屋の広さは人が4人分座れる程度の広さで、窓が左右に付いている、なにより先ほどからガタゴトと揺れているので、おそらく今自分がいるのは馬車の中なのだと思う。
「それにしてもフィニアさん、あの人に眠らされたんだよな俺は…」
意識が途切れる直前にはっきりと「おやすみなさい」って言っていたのを覚えている
「なんで眠らせてきたんだ? フレアの紹介したい人っていうことだから油断してたけどさすがに問い質す必要があるよな…てか肝心のフィニアさんがいないんだけど、どこにいるんだ? 奥に御者のスペースがあったはずだからそこにいるのかな?」
とりあえず話を聞かないと。
何処にもいない、なんてことはなく普通に御者のスペースにフィニアさんがいた。
彼女はこちらに気づいたようで馬車を街道の端の方に寄せて停止する。
う~ん、どうやらこの馬車には俺とフィニアさんの2人だけしかいないようだ。何処へ行こうとしているのかは分からないが、2人だけ(1人は戦力外)での馬車の旅なんて危険すぎると思うが、今はそれよりも大事な話があるからその辺は後回しにする。
「ようやく起きたみたいね~」
「そっちが眠らせてきた癖によく言うよ」
相変わらずおっとりとした口調なので思わず語気が荒くなる
「ごめんなさいね、でもどうしてもあなたを放置することはできないのよ」
こっちが真剣な表情で彼女の挨拶を切り捨てたからか、フィニアさんのおっとりした雰囲気がなくなる
「俺を誘拐したのはフィニアさんの見た、俺の記憶のどこかに放置しちゃまずい何かがあるってことなのか? 俺は元の体を取り戻せればそれでいいから、現代知識で悪さをしようとかなんて考えてはいないんだけど」
「誘拐…………そうよねぇ、こんなやり方ではそう思われても仕方ないわね。私はあくまで保護したつもりなんだけどね」
少しだけ悲しそうな表情でそう答える
「悪いけど保護される筋合いなんてないし、見ず知らずの相手を信用なんてできないんだけど?」
いくらフレアが紹介してくれた相手とは言え、いきなり眠らせてくる相手に信用なんてできるはずもない。
「…言いたいことは、わかったわ、私を信用はできないってこともね。でもね、どうしても私の故郷、エルフの国に来てほしいの。あなたに合わせたい人、今の姿は人じゃないんだけど…とにかくあなたに合わせたい人がいるの」
う~ん、真剣な表情でこちらを見つめているフィニアさん…正直、彼女を信用することは不安だ。でも今ここが何処なのかなんてわからないし、ここで下手に抵抗してもこの体の貧弱具合は理解してるからな、まず間違いなくフィニアさんと戦っても勝てないはずだ。
ここは従うしかないか…でも聞いておきたいことがいくつかあるから聞いておこう。
「合わせたい人?ってのがいるなら今は従うよ、ここに放置されても生き残れる自信はないからな、でも聞きたいことがいくつかあるんだ、俺の記憶を見たならわかると思うが、俺は戦力外だぞ、こんな貧弱な防衛戦力で街道を2人きりで進んで大丈夫なのか?盗賊とかいたら最悪の事態になると思うんだけど?」
俺がそう言うと、彼女は苦笑いして答えた
「これでも私は魔法についてはそれなりに自信があるんだけどね~、そんなに私って頼りないのかしら~」
目に見えて落ち込む様子のフィニア
「そんなにすごい魔法使いだったのか…まぁ、簡単に眠らせてくる実力があるからそうなのかなっとは思ったけどさ。…………そういえばフィニアさんの豪邸はカギを掛けていなかったよな、あまりに無防備すぎると思ってたから気になっていたんだけど、なんかの魔法の仕掛けがあって、敵が侵入したら分かるようなっていたのか?」
「そうよ~♪ こうみえて私はすっごく強い魔法使いなんだからね~、この辺の盗賊なんてイチコロよ!えへん♪」
そう言って、たわわな胸を張るフィニアさん。 ッ!!! 胸を張った衝撃でプッチンプリンのようにプルンと胸が揺れる。嗚呼、その揺れ方は大変危険だ。
「? さっきから私の胸を見ているけどどうしたのかしら~、虫でもついているのかしら~?」
「あ、いや、虫はついてないけど、その、あまり勢い良く胸を揺らすと悪い虫ならついちゃうかもしれないから注意した方がいいと思いますよ、健全な男性としての忠告です」
あれはやばいですよ、一瞬驚いて、まばたきをしちゃったけど、たった一瞬なのにそれを後悔するレベルだったからな。ああ、眼福だった。っていかんいかん、最近煩悩がひどいな。
かわいい女性に美しい女性と2人きりの状況が多すぎる。
自分が女の子になったゆえの役得なんだけどいつか一線を越えてしまわないように、鋼の理性を持たないといけないな。
「悪い虫? なんのことかよくわからないけれど、胸を揺らすと大変なことになるのね~、覚えておくわ~♪」
多分俺は世界中の男を救ったと思う、あんな凶器がそこらへんに転がっていたら男性諸君はたまったもんじゃないだろう。
余計なナニかは溜まるだろうけどさ。




