橘 弥生
橘弥生。
それがそこに記されていた次の客の名である。
聡のクラスメイト。
眼鏡の掛けてはいるがギリギリ美人といえる。
ただし、いわゆる無表情で根暗。
そして、校則を守ることを生きがいにしており、今はほぼ死文化している「スカートは膝が隠れる長さ」を学校内でただひとり実践している貴重種である。
当然、校則を破る者は男女を問わず、その行動を咎めるため、男子は揶揄い、女子は近づかない。
むろんクラスに友人もおらず、昼食もいつもひとり。
だが、弥生にはそのようなことなど気にする様子など全くない。
そして、聡は弥生と対極の存在ともいえる規則破りの常習犯。
当然弥生とぶつかる。
一日に数度はふたりはやり合う。
それがクラスの日常だった。
どのような時でも表情を変えない弥生が聡をどう思っているかはわからないが、聡は弥生を、「学園生活を楽しむことができないウザったいだけの鉄仮面女」と表現しており、その言葉どおり、「転校でもしてくれればこれ幸い。病気にでもなり長期欠席してくれれば赤飯を食べる」と本人の前で堂々と公言するくらいに嫌っていた。
本来であれば、自分の手で目障りな女に引導を渡せる。
悩むことなど何もないはず。
だが、なぜかそうはならない。
「自死。自死とはどういうことだ」
「あいつは自分の行動に絶対的な自信を持ち、硬い信念を持ってやっていたのではないのか」
「ふざけるな」




