雲間から差す光
「あ、ああ」
そう言いながら、聡は爪で額に傷をつける。
「血が」
「ああ。本当だ。ちょっと顔を洗わせてくれ」
「もちろんです」
そして、手にしていたボールを手渡す。
こんなボールが当たったくらいでこれだけ血は出ないが、まあ、信じてくれるのならこれ幸い。
顔を洗い、絆創膏を貼り付けてもらいながら、聡はカレンダーを見やる。
もしかしてあれか。
赤く「試合」と書かれているのはあの日だ。
「……試合?」
「あっ。はい。その日はソフトボールの試合に行くことになっています」
「子供たちも……」
「その日は父と母が子供たちの面倒を見ることになっています。実は趣味なんです。ソフトボールが」
「なるほど」
「試合をするところまでは電車で?」
「いえいえ。友人が車を出してくれることになっているのです。荷物がそれなりにあるもので」
読めた。
その場所への行きか帰りかは知らないがそこで交通事故に遭うのだ。
この人は。
「晴れるといいですね」
「はい」
つまり、行かせなければいいわけか。
だが、性根の腐った天使どもなら、予定を変更させてでも交通事故に遭わせることは十分に考えられる。
ということは、家から出さないようにすればいいのか。
だが、これ以上長居すると別の目的があると疑われる。
止むを得ない。
「試合勝つといいですね」
そう言って別れた。
必ず手立てを見つけてやる。
そう誓いながら。
そして……。
「蒲原さん」
「俺でもあの人の心に話しかけることはできるのか?」
その夜、蒲原を呼び出すと聡はそう問うと、蒲原は薄く笑う。
「できなくはないが、反応はないと思ったほうがいいだろう」
「だが、できるのだな」
「ああ」
「では、その方法を教えてもらおうか」




