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第6話 幼い男達の友情!!

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


前回、圧倒的な魔法の才能を持つソフィと、気弱な少年レイの隠された才能に気づいたアド。

今回は、大漁の魚を抱えて村へ凱旋するところから始まります。


前世の経営手腕と、徹底的に「期待値」を追い求めるゲーマー気質を持つアドが、いかにしてレイの才能を開花させるのか。

少し長めのエピソードになりますが、じっくりとお楽しみください!

「……おいおい、こりゃあ一体どういうことだ?」


リビエラ村の広場に、大人たちのどよめきが響き渡っていた。

 無理もない。俺たち五歳の子供三人が、大人でも抱えきれないほどの大量の川魚を、木の枝とツルで作った即席のソリで引きずってきたのだから。

 ピチピチと跳ねる銀色の鱗が、夕日を反射して眩しく光っている。ざっと見積もっても五十匹は下らない。村の数日分の食糧を、子供の川遊びで稼ぎ出してしまった計算になる。


「ソフィ! お前、まさかまた魔法を……」


白髭を蓄えた村長――ソフィの祖父であるアライアスが、孫娘に雷を落とそうと歩み寄る。

 村長はソフィの規格外の魔力量を知っている。下手に魔法を使えば、川を干上がらせるか、地形を変えてしまう危険があるからだ。


「ち、違いますお祖父様! 今日はちゃんと、アドくんが『ここに向かって、これくらいの力で』って教えてくれて……」

「村長さん!」


俺はソフィを庇うように前に出て、とびきり無邪気な五歳児の笑顔(営業スマイル)を顔に貼り付けた。


「ソフィちゃん、すっごく上手に魔法でお魚を気絶させたんだよ! 川も壊れてないよ! それにね、レイがいっぱいお魚がいる場所を見つけてくれたの!」

「ぼ、ぼく……!?」


突然話を振られたレイが、ビクッと肩を震わせて俺を見た。

 俺は構わず続ける。


「お魚を拾う時も、大きな水ヘビが出たんだけど、レイが木の棒でパーンって追い払ってくれたんだ! レイがいなかったら、俺たち噛まれてたかもしれないよ!」

「ほ、ほう……あのレイオスが?」


大人たちの視線が一斉にレイに集まる。

 レイは普段、村の子供たちの中で一番どんくさく、大人たちからも「頼りない子」というレッテルを貼られていた。

 だが、村長をはじめとする大人たちは、目の前の大量の魚と、得意げに胸を張る俺の言葉に、みるみる顔をほころばせた。


「そうかそうか! レイオス、よくソフィを守ってくれたな。偉いぞ!」

「すごいじゃないかレイ! 見直したぞ!」

「あ、あの……えっと……」


大人たちから次々と頭を撫でられ、レイは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 俺はそれを見ながら、内心でほくそ笑んでいた。


(まずは第一段階クリア、だな)


組織を動かす上で、メンバーの「自己肯定感」と「周囲からの評価」を上げることは絶対条件だ。

 どれだけ優秀な能力を持っていても、本人が萎縮していては100%のパフォーマンスは出せない。今日の手柄をレイに分配することで、彼に対する村の「盤面(評価)」を書き換えたのだ。


「よし、今日はこいつで宴会だ! お前ら、火を熾せ!」


村長の号令で、広場はあっという間にお祭り騒ぎになった。

 大人たちが手際よく魚を捌き、串に刺して焚き火で焼き始める。香ばしい匂いが村中に漂い、俺の両親であるロイドとハンナも笑いながら広場にやってきた。


「アド、すごい大物じゃないか。怪我はなかったか?」

「うん! とーさん、レイが助けてくれたんだよ!」

「そうかそうか、レイオス君、うちのアドをありがとうな」


Aランク冒険者だった父さんに真剣な顔でお礼を言われ、レイは「ひゃいっ!」と変な声を出して直立不動になっていた。


宴会が始まり、村人たちが酒を飲み交わす中、俺は少し離れた木の根元に座り、焼き魚をかじりながらレイの様子を観察していた。

 レイは、他の子供たちから「レイ、お前ヘビ倒したの本当かよ!」「すっげー!」と囲まれ、照れくさそうにしている。

 だが、その手元を見ると、彼がなぜ「どんくさい」と言われているのかがよく分かった。


彼は、誰かに話しかけられるたびに、手に持った魚を落としそうになったり、足元の小石につまずいたりしているのだ。

 普通なら「不器用なやつ」で終わるだろう。

 だが、川辺で彼が水ヘビの攻撃を「完璧な角度で逸らした(パリィした)」瞬間を見た俺の目は誤魔化せない。


(やっぱりだ。あいつは不器用なんじゃない。情報処理の『入力』と『出力』のバランスがぶっ壊れてるんだ)


レイの目は、良すぎるのだ。

 飛んでいる虫の羽ばたき、人の視線、筋肉のわずかな動き。普通の人間なら無意識にノイズとして処理してしまう膨大な視覚情報が、彼の脳にはすべて「高解像度」で飛び込んできている。

 前世のゲームで例えるなら、処理能力の低い古いパソコンに、最新の超高画質モニターを繋いでいるような状態。常に情報過多でフリーズを引き起こし、結果として体の動き(出力)が遅れて「どんくさい」行動になってしまうのだ。


(強烈なデメリット持ちのカード……だが、使い方を一つに『特化』させれば、化ける)


俺は手にした串を地面に刺し、立ち上がった。

 宴会の喧騒から少し離れて、一人で星空を見上げているレイの背中へ近づく。


「レイ」

「あ……アドくん。今日は、その……嘘ついてくれて、ありがとう。ぼく、何もしてないのに……」


レイは申し訳なさそうに眉を下げた。

 俺は彼の隣にドカッと座り込むと、首を横に振った。


「嘘じゃない。お前は水ヘビの攻撃を完璧に見切って、最小限の動きで逸らした。あの動きは、うちの父さん(元Aランク剣士)並みだったぜ」

「えっ……? そ、そんなわけないよ! ぼく、いつもみんなに置いていかれるし、剣の振り方も下手くそで……」

「それは、お前が『自分から動こう』としてるからだ」


俺の言葉に、レイが不思議そうな顔をする。


「お前の目は、村の誰よりもいい。良すぎるんだ。だから、色んなものが見えすぎて、どう動いていいか分からなくなってるんだろ?」

「……っ!」


レイの目が、大きく見開かれた。

 図星だった。誰も理解してくれなかった彼の感覚を、俺が言語化したことで、彼の表情に初めて「驚愕」が走った。


「いいかレイ。お前はもう、自分から攻撃しようとか、避けようとか考えるな。剣なんて重いものは捨てろ。軽い木の棒一本でいい」

「ど、どういうこと……?」

「攻撃は全部ソフィがやる。俺は作戦を立てる。お前の役割はたった一つだ」


俺は立ち上がり、足元に落ちていた手頃な小石をいくつか拾い上げた。


「『敵の攻撃から目を逸らさず、ただ弾く(パリィする)こと』。それだけだ」


俺は五歩ほど下がり、レイと向かい合った。


「試しにやってみよう。俺がこの石を投げる。お前は絶対に目を逸らすな。棒で弾き落とせ」

「えっ、でも、暗いし……」

「いいから、棒を構えろ!」


俺の強い語気に押され、レイは慌てて木の棒を両手で構えた。

 へっぴり腰だ。だが、その目はしっかりと俺の手元を捉えている。


俺は深呼吸をし、丹田の魔力を右腕に集中させた。

 俺の魔力は外には出せない。だが、第二話で編み出した「体内循環」による身体強化なら、五歳の子供の枠を遥かに超えた筋力を引き出せる。


(大人の本気のオーバースロー、行くぞ)


ヒュッ!


風を切る音と共に、小石がレイの顔面めがけて一直線に飛んだ。

 暗闇の中、五歳児が放ったとは思えない凶悪な速度。普通なら反応すらできない。


「ひっ……!」


レイは恐怖で目を丸くした。

 だが、彼特有のあの「フリーズ」が起きた。体が硬直したのだ。

 しかし、俺の言葉が彼の脳裏をよぎったはずだ。『目を逸らすな。弾くことだけを考えろ』と。


――カツンッ!


乾いた音が響き、小石が真横に弾き飛ばされた。


「……え?」


レイ自身が、一番驚いていた。

 彼はギリギリまで小石の軌道を見極め、顔に当たる寸前で、持っていた棒の先端を「わずかに傾けた」のだ。

 自分から打ちに行ったのではない。相手の力(運動エネルギー)を利用し、軌道をずらしただけ。


「な? できたろ」


俺はニヤリと笑い、もう一つ石を拾った。

 今度はさらに魔力を込め、球速を上げる。


「次! 行くぞ!」

「あ、待っ……!」


ヒュンッ!

 カツンッ!


「次!」


ヒュンッ!

 カツィンッ!


三球目、四球目。速度を上げ、軌道を散らしても、レイの持つ棒はまるで磁石のように小石を捉え、すべて急所から逸らして見せた。

 凄まじいシナジーだ。

 彼は「どう避けるか」「どう反撃するか」という思考ノイズを完全に捨て、「軌道を読んで合わせる」という一点のみにリソースを集中させたことで、その異常な動体視力を100%活かせるようになったのだ。


「はぁっ……はぁっ……」


五発目を弾き落とした後、レイはその場にへたり込んだ。

 だが、その顔にいつものおどおどした表情はない。自分の手にある棒と、弾き落とされた石を交互に見比べ、信じられないものを見るように息を弾ませている。


「お前は弱くない、レイ」


俺は彼に歩み寄り、手を差し出した。


「お前は、どんな攻撃も通さない『最強のタンク』になれる。俺たちのパーティのかなめだ」


レイは、差し出された俺の手を、震える両手でしっかりと握り返した。

 彼の目から、ポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。


「ぼ、ぼく……みんなの役に、立てる……?」

「ああ。お前がいないと、俺の作戦は成立しない」


俺は力強く頷いた。

 嘘ではない。圧倒的な破壊力を持つソフィ(アタッカー)。だが彼女は脆い。

 そのソフィを守り、敵のヘイト(敵意)をすべて引き受け、どんな攻撃も無力化するレイ(絶対回避のタンク)。

 そして、二人の才能の出力を調整し、戦場全体をコントロールする俺(司令塔・デバフ)。


前世でどんなに欲しても手に入らなかった「最高のカード」が、今、俺の手札に揃ったのだ。

 俺はこの日、この異世界で初めて、心の底からワクワクするような高揚感を感じていた。

 チート能力なんてなくてもいい。

 俺はこの三人の連携コンボで、どんな理不尽な運命も、どんな強大な敵も、論理的にねじ伏せてやる。


星空の下、俺たち「最強の三位一体」の物語が、いよいよ本格的に動き出そうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


レイの覚醒回でした。

弱点だと思われていた「情報過多によるフリーズ」を逆手に取り、「パリィ特化」に絞ることで最強の才能へと昇華させました。

カードゲームで言うところの、癖の強いカードが特定のデッキ(戦術)に組み込まれた瞬間、ぶっ壊れ性能に化けるあの感覚です!


これでついに「アタッカー(ソフィ)」「タンク(レイ)」「司令塔アド」の役割が完全に定まりました。


次回はいよいよ、この3人が力を合わせて取り組む「秘密基地づくり」と、初めての「実戦(魔物との連携戦闘)」になります。

アドの前世の知識(土木作業やトラップ)と、3人のコンボがどう炸裂するのか。


続きが気になる、3人の活躍が見たい!と思っていただけましたら、ぜひブックマークと、下部の評価(星)で応援していただけると大変嬉しいです!

次回もどうぞよろしくお願いいたします!

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