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第5話 最弱の壁役(ヘイト)と、ぶっ壊れコンボの予感

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


前回、圧倒的な魔法の才能を持つ少女・ソフィと出会ったアド。

今回はその直後、文字通りの「大漁」に沸く川辺からスタートします。


そしてついに、のちに魔王軍を震え上がらせる「最凶の3人パーティ」の最後のピースが登場します。

一見何の取り柄もない少年に、元経営者の「観察眼」が見出した異常な才能とは……?


それでは、第5話をお楽しみください!

「そこだ、ソフィ! 魔力をさっきの半分にして、水面で破裂させるイメージだ!」

「はいっ! ……えいっ!」


ドゴォォォォンッ!!


俺の指示に合わせてソフィが放った魔力の塊が、小川の浅瀬で炸裂した。

 先ほどのような天を衝く水柱ではない。俺の計算通り、水中に的確な衝撃波だけを伝播させる見事な「すり鉢状」の爆発だ。

 直後、気絶した川魚たちが、銀色の雨となってボロボロと岸辺に降り注いできた。


「やったぁ! アドくん、お魚いっぱいです!」

「よしよし、上出来だ。ほら、手分けして拾うぞ」


俺はピチピチと跳ねる魚を拾い集めながら、内心でガッツポーズをしていた。

 すさまじい。ソフィの出力(火力)と、俺の「魔力を対象に馴染ませる」内向きな制御術スコープ。これを掛け合わせただけで、五歳の子供が村の凄腕漁師すら凌駕する成果を叩き出したのだ。

 単体では力を制御できない砲台と、単体では弾を撃てない照準器。

 この二つが盤面で揃った瞬間、とんでもないシナジー(相乗効果)が生まれる。前世で言うところの、一見使い道のないカード同士が組み合わさって必勝のコンボデッキに化けたような快感だ。


だが、その時だった。

 爆発の余波で驚いたのか、上流の茂みから「それ」が飛び出してきた。


「シャァァァッ!」


大人の腕ほどもある巨大な水ヘビ(低級の魔物だ)が、牙を剥いて宙を舞った。

 その軌道の先には、茂みの陰に隠れるようにしてこちらを見ていた、一人の痩せた少年の姿があった。


「ひっ……!」


少年は尻餅をつき、恐怖で顔を引きつらせていた。手には、護身用らしいただの木の棒を握っている。

 俺は「しまった」と息を呑んだ。俺の身体強化を使っても間に合わない距離。ソフィの魔法では少年ごと吹き飛ばしてしまう。


噛まれる――!

 そう思った瞬間、奇妙な現象が起きた。


恐怖で目をカッと見開いた少年は、逃げようとも、棒を振り回そうともしなかった。

 ただ、迫り来る水ヘビの顎に対して、持っていた木の棒を「ほんのわずかに傾けて、スッと突き出した」のだ。


――カツンッ。


小気味いい音が響いた。

 水ヘビの牙は少年の肉を捕らえることなく、傾けられた棒の表面を滑るように逸らされ、そのまま勢い余って背後の岩に激突して伸びてしまった。


「え……?」

「あわわわ……」


少年は腰を抜かし、ガタガタと震えている。

 ソフィはオロオロしているが、俺の目は少年に釘付けになっていた。


(……今のは、なんだ?)


ただの偶然か? いや、違う。

 棒を傾けたあの角度、タイミング。それは水ヘビの突進のベクトルを完全に読み切り、最小限の力で「受け流し(パリィ)」を成立させる、達人のような動きだった。

 だが、少年の筋肉は貧弱で、動き自体はどんくさい。

 俺の前世の「観察眼」が、瞬時に一つの仮説を弾き出した。


(こいつ……『目』が良すぎるんだ。異常なレベルの動体視力。相手の動きがスローモーションに見えるからこそ、体が追いつかずにフリーズしてしまうのか)


周りからはただの「どんくさい奴」に見えるだろう。

 だが、もしも。

 もしも、自分から攻撃することを一切捨てて、「相手の攻撃を視て、逸らす」ことだけに全リソースを振ったとしたら?


「……おい、そこのお前」

「ひゃいっ!」


俺が声をかけると、少年はビクッと肩を揺らした。


「怪我はないか? 俺はアド。こっちはソフィ。お前は?」

「ぼ、ぼくは……レイオス。レイでいいよ……」


レイ。

 村の子供たちの中で、いつもいじめられっ子の位置にいる気弱な少年だ。

 俺は落ちていた水ヘビ(これも食べられる)を拾い上げ、満面の営業スマイルでレイに手を差し出した。


「レイ、さっきの棒の動き、凄かったな。魚もヘビも大漁だ。一緒に食わないか?」

「えっ、でも、ぼく……どんくさいし、いつもみんなの邪魔に……」

「馬鹿言え。お前の目は、村の誰よりもいい。ただ『使い方』を知らないだけだ」


俺の言葉に、レイは信じられないものを見るように目を丸くした。


「俺が教えてやるよ。お前が絶対に怪我をしない、最強の戦い方をな」


俺(司令塔・バフ・デバフ)、ソフィ(超高火力アタッカー)、そしてレイ(絶対回避のヘイトタンク)。

 俺の頭の中で、完璧なパーティ編成のピースが、ガッチリと音を立てて噛み合った。


これが、のちに魔王軍から「最も理不尽で厄介な悪魔の編成」と恐れられることになる、俺たち三人の最初の食卓だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


圧倒的な火力(大砲)のソフィ。

それを精密にコントロールするアド(照準器)。

そして今回加わった、絶対回避のヘイトタンク・レイ。


個々では未完成な子供たちですが、それぞれの長所をパズルのように組み合わせることで、強大な敵にも勝率(期待値)100%を叩き出す「最強の盤面」の基礎がここで揃いました。

アドの前世の「経営・マネジメント思考」と「ゲーマー気質」が、いよいよ本格的に火を吹き始めます。


次回は、結成されたばかりのこの3人での「初陣」となる予定です!

少しでも「面白い!」「この3人の連携が見てみたい!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや下部の評価(星)をポチッと押して応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

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