第26話 『全体除去』と、ソフィの激重レーザー
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前回、強固な装甲を持つ攻城地虫ベヒーモス・ワームを、レイの『絶対回避』とアドの『魔導銃』のコンボで完璧に屠り去ったリビエラ村防衛陣。
今回は、それに業を煮やしたザイラス将軍が、ついに残存する数万の本隊すべてを一点に集中させる「全軍突撃」を仕掛けてきます。
しかし、それはアドが待ち望んでいた盤面。
満を持して、14歳に成長した歩く大砲ヒロイン・ソフィの「激重感情(極大レーザー)」が魔王軍に降り注ぎます!
圧倒的な爽快感と、知将ザイラスの不気味な沈着さが交差する第26話をお楽しみください!
大山脈の斜面を揺るがす、地鳴りのような咆哮。
先陣の壊滅、そして切り札であったはずの攻城地虫ベヒーモス・ワームまでもが単騎の少年に屠られた光景は、魔王軍本隊に多大な動揺を与えていた。
しかし、後方の安全圏から戦場を俯瞰していた知将ザイラスの目に、焦燥はない。
「小細工と個人の武力……。確かに、辺境の小村としては異常な防衛力だ。だが、圧倒的な『数』の暴力の前には、いかなる戦術もいずれすり潰される」
ザイラスは冷徹に盤面を見極め、全軍に号令を下した。
「罠の再起動を待つな! 前線にいるあの異常な手練れの二人組が陣形を立て直す前に、残存する本隊数万のすべてを一点に集中させよ! 被害は気にするな、死体で道を作り、力業で村への一本道を突破しろ!!」
『ウオォォォォォォォォォォッ!!』
将軍の命を受け、雪山を越えてきた数万の魔物たちが、理性を失った狂乱の波となって、村への唯一の進入路へと雪崩れ込んでいく。
――だが。
防壁の上からその光景を見下ろしていたアドの顔には、恐怖どころか、悪辣なまでの『極上の営業スマイル』が浮かんでいた。
「引っかかったな。……数万の群れが密集して一本道に突っ込んでくる。それこそが、俺の一番やりたかった『盤面』だ」
アドは通信魔導具を口元に寄せ、前線で大剣を振るう父に、信頼する息子として的確なお願い(指示)を飛ばす。
「パパ、ママ! 左右の森へ退避して、中央の道を完全に空けて! 大物が通るよ!」
『おうよ! 若衆、一斉に退避だ! 中央を開けろ!!』
ロイドの号令により、村の重装歩兵たちが一糸乱れぬ動きで左右へ割れる。
最大の障害物が消え去ったことで、魔王軍は歓喜の声を上げ、防壁の直下――すり鉢状に窪んだ広大な地形へと、我先にと密集しながら突入してきた。
彼らは気づいていない。
そのすり鉢状の地形こそが、アドとルッツが何年もかけて緻密に計算し、敵を一箇所に集めるためだけに設計した、最悪の『死地』であることに。
†
「ソフィ。お前の出番だ」
「はいっ、アドくん!」
アドの言葉に、純白の『剣と盾』を構えたソフィが一歩前に出る。
彼女の美しい金糸の髪が、自身の内側から溢れ出す膨大な魔力の風に煽られてふわりと舞い上がった。
剣の刀身に刻まれたスリット(砲身)の奥で、チリチリと危険な音を立てて純白の光が圧縮されていく。
その圧倒的な密度と熱量。それは、ただの魔力ではない。
ソフィの脳裏には、数年前、彼女がアドと交わした『ある夜の記憶』が鮮明に浮かび上がっていた。
――それは、彼女が12歳の頃。
成長するにつれ、ソフィの魔力総量はさらに規格外なものへと膨れ上がり、少し感情が昂るだけで周囲のものを破壊してしまうほどになっていた。
村の大人たちからも「触れれば爆発する危険物」のように恐れられ、ソフィ自身も深く思い悩んでいた。
(私は、化け物なんじゃないか。……こんな力があったら、いつかアドくんに怖がられて、捨てられちゃうかもしれない)
恐怖のあまり、彼女はアドを避けるようになり、夜の裏山で一人泣いていた。
だが、そんな彼女を、アドは絶対に見捨てなかった。
アドは逃げるソフィを強引に捕まえ、その華奢な両肩をガシッと掴むと、真っ直ぐに彼女の目を見て言ったのだ。
『お前の力は、化け物なんかじゃない。俺たちの大切な村を、未来を理不尽から守るための、世界で一番優しくて強い光だ』
アドは12歳の少年として、そして組織のCEOとして、最強のアセット(才能)を全肯定し、絶対に手放さないという強い意志を示した。
『俺はお前を絶対に手放さない。……だから、何も心配しないで、俺の隣で思いっきりぶっ放せ』
――アドにとっては「最高の戦力への信頼の言葉」だった。
しかし、思春期真っ只中のソフィの脳内では、その言葉は強烈な化学反応を起こした。
(私を、絶対に手放さない……俺の隣にいろ……!?)
それは彼女にとって、事実上の『永遠の愛の誓い(プロポーズ)』という特大の勘違い(劇薬)として、心の奥底に深く、重く刻み込まれてしまったのだ。
あの日以来。
ソフィの魔力の出力は、「アドへの愛の重さ」に完全に比例して、際限なく膨れ上がるようになっていた。
†
(アドくんが作ってくれた、私たちの村。……アドくんとの未来を邪魔する奴らは)
ソフィの翠玉の瞳に、静かで、しかし底知れない『純粋すぎる愛情』が宿る。
眼下のキルゾーンには、数万の魔王軍がひしめき合い、防壁を打ち破ろうと群がっている。
「一匹残らず……私が消し飛ばす……!!」
限界を超えて圧縮された、果てしなく純粋で重い魔力が、剣のスリットから溢れ出し、周囲の空間を歪ませる。
暴発寸前の巨大なエネルギー。アドはソフィの背中にそっと手を添え、タクトを振り下ろした。
「盤面を掃除しろ、ソフィ!!」
「いっけえええええええええええええッ!!」
ソフィの可憐な絶叫と共に、剣(砲身)から放たれたのは、もはや魔法という枠組みを超越した『純白の極大レーザー』だった。
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!
鼓膜が破れるほどの轟音。
放たれた瞬間の凄まじい反動を盾で受け止めた防壁の地面が、クレーターのように陥没する。
太陽が落ちてきたかのような強烈な光の奔流が、すり鉢状のキルゾーンを完璧に飲み込んだ。
『ギャアアアアアアアッ!?』
『バ、馬鹿な!? 熱い、体が消え――』
密集していた数万の魔王軍本隊は、断末魔を上げる間すら与えられなかった。
強固な鎧も、巨大な肉体も、すべてが純白の光の中で文字通り「蒸発」し、あるいは黒焦げの炭となって跡形もなく吹き飛ばされていく。
圧倒的。理不尽。規格外。
それが、一人の少女の「純粋すぎる愛の重さ」を圧縮した、究極の『全体除去』だった。
やがて光が収まり、もうもうと立ち込めていた土煙が冬の風に流される。
そこに残されていたのは、元の面影もないほどに綺麗に抉り取られた巨大なすり鉢状の地形と……完全に無と化した、数万の魔王軍の黒焦げの『残骸の山』だけだった。
†
戦場から遠く離れた、後方の雪山の尾根。
その安全圏から、すり鉢状の地形が一瞬にして消し飛ぶ様を観察していたザイラス将軍は、冷たい風に吹かれながら沈黙していた。
彼が率いてきた数万の軍勢は、たった一撃で完全に崩壊した。
しかし、ザイラスの冷徹な瞳に、絶望や恐怖は一切浮かんでいない。
「……想定を遥かに超える超火力だな。だが……想定内の『最悪ケース』に過ぎん」
ザイラスは無感情にそう呟くと、懐の通信魔導具を取り出し、短く魔力を流した。
「私だ。……お前たち、すぐに私の元へ集え」
それは、この戦場において、彼とは異なる場所に潜伏し、別の角度から村の戦況を綿密に観察させていた『二人の直属の側近』への招集合図だった。
数万の軍勢を失ってもなお、知将の瞳には次なる盤面を支配するための冷たい光が宿っている。
村への一本道に積み上げられた、おびただしい数の「魔物の死骸の山」を見下ろしながら、ザイラスの真の『恐ろしさ』が、静かに牙を剥こうとしていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第26話、いかがだったでしょうか!
ついに火を噴いた、ソフィの規格外の全体除去(極大レーザー)!
思春期のソフィの「自分が化け物なんじゃないか」という悩みを、アドが「最高のアセット(戦力)だ、絶対に手放さない」とCEO視点で全肯定した結果……ソフィの脳内では「一生手放さない=プロポーズ」という特大の勘違いとして刻まれてしまいました(笑)。
その純粋すぎる「愛の重さ」がそのまま魔力の圧縮率に直結し、数万の魔王軍を一瞬で蒸発させる理不尽な超火力を生み出しています!
しかし、この圧倒的な勝利の余韻の中で、後方の安全圏から戦況を見ていた知将ザイラスは全く心を折られていません。
彼にとって、数万の軍勢が一撃で消し飛ぶことすら「想定内の最悪のケース」として盤面に組み込まれていました。
次回、第27話!
招集された二人の側近からの報告。そしてザイラスが懐から取り出す、同僚(女将軍)から渡された不気味な『切り札』。
これまでのアドの「勝率100%の盤面」が、ついに未知の脅威によって崩され、分断の危機に陥る絶望の展開が幕を開けます!
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