第18話 チートと傲慢、操られるおバカ勇者
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前回、聖教国に召喚された異世界人の勇者を「最高の客寄せパンダ(囮)」と分析し、村を数年かけて完全要塞化する計画を立てたアド。
今回は視点がガラリと変わり、はるか東の最前線「聖教国サン・ノエル」が舞台です。
アドに「痛い学生」と見透かされていた異世界の勇者・田口弘樹は、果たしてどんな人物で、どんな扱いを受けているのか?
チートと傲慢、そして大人の思惑が渦巻く第18話、スタートです!
「はっはー! 雑魚乙! やっぱ俺TUEEEEEE!!」
聖教国サン・ノエルの国境に広がる荒野。
魔王軍の先陣として押し寄せてきた数百の魔物の群れが、たった一人の青年の剣閃によって、文字通り塵となって消滅していく。
「喰らえ! 『ジ・エンド・オブ・ホーリーバースト』ォォォッ!!」
青年が、無駄に大仰な身振りで白銀の聖剣を振り下ろす。
放たれた極太の光の斬撃が大地を割り、魔物の群れを一瞬で蒸発させた。
後に残ったのは、焼け焦げた荒野と、ドヤ顔で剣を肩に担ぐ一人の青年――異世界から召喚された勇者、田口 弘樹だった。
「ふぅ、ちょろいちょろい。元の世界のゲームより簡単じゃんか。……これが『選ばれし者』の力ってやつ? マジで俺、この世界の主人公なんだな!」
弘樹は、自分の手のひらを見つめてうっとりと呟いた。
元の世界では、どこにでもいる平凡な、少しクラスで浮いているオタク学生だった。しかし、トラックに轢かれかけて目覚めたら、この世界で「伝説の勇者様」としてチヤホヤされている。
圧倒的な魔力、絶対に壊れない聖剣、そして無尽蔵の体力。完全なチート(ルール違反)だった。
「おおおおっ!! 素晴らしい! なんという神々しいお力か!!」
「さすがは異世界より降臨なされたヒロキ様! 我らが聖教国の救世主!!」
戦闘が終わるのを見計らったように、安全な後方の天幕から、豪華な法衣を着込んだ恰幅の良い枢機卿(高位の聖職者)たちが、ゾロゾロと拍手をしながらすり寄ってきた。
「へへっ、まあこれくらい余裕っすよ。俺にかかれば、魔王軍なんてただの経験値っすからね!」
「頼もしいお言葉! ささっ、ヒロキ様。本日の魔物討伐の労をねぎらうため、王宮にて極上の宴をご用意しております。他国の姫君や、美しいエルフの奴隷たちもヒロキ様のお相手をしたくてウズウズしておりますぞ!」
「マジで!? っしゃあ! 異世界ハーレム最高ゥ!」
鼻の下を伸ばし、下品な笑い声を上げながら王宮へと歩き出す弘樹。
その後ろ姿を、枢機卿たちは顔に張り付けたような愛想笑いで見送っていた。
……しかし、弘樹の姿が見えなくなった瞬間、彼らの顔からスッと「敬意」が消え失せた。
「……ふん。単純で底の浅いガキだ。適当に酒と女をあてがって『勇者様』とおだてておけば、死ぬまで勝手に魔族と戦ってくれる」
「全くいですな。……それで、バルバトス枢機卿。先ほどの『光の剣』のデモンストレーション、視察に来ていた隣国の貴族たちの反応は?」
恰幅の良い枢機卿が、いやらしい笑みを浮かべて羊皮紙の束を叩いた。
「大ウケでしたよ。あのド派手な光の柱を見せつけられれば、どの国の貴族も『聖教国に投資すれば安心だ』と財布の紐を緩めます。おかげで今月だけで、我が国への支援金(スポンサー料)は前年比の三倍に跳ね上がりました」
「くくっ……笑いが止まらんな。王国の小娘が勇者だという噂が流れた時はどうなることかと思ったが、あの無知な若造を召喚できたのは最高の僥倖だった」
彼らにとって、田口弘樹の命や、彼が背負わされている魔王軍との戦争など、どうでもよかった。
弘樹は、聖教国という巨大な宗教国家が、他国から莫大なカネ(支援金)を巻き上げるための『歩く広告塔(客寄せパンダ)』に過ぎないのだ。
「だが、調子に乗らせすぎないよう手綱はしっかり握っておけよ。あの馬鹿が『真実』に気づいて反逆しないよう、首輪(呪い)の魔法陣は定期的にメンテナンスをしておけ」
「抜かりはありませんよ。……さあ、あの馬鹿な神輿を担いで、たっぷりとカネを稼がせてもらいましょうか」
醜く肥え太った大人たちの汚い嘲笑が、荒野の風に消えていく。
異世界でチート能力を得て、自分が盤面を支配する主人公だと思い込んでいるおバカな青年。
しかし実態は、腐敗した大人たちに都合よく搾取され、最前線で魔王軍の本隊をすべて押し付けられているだけの、哀れな『使い捨ての駒』だった。
――同じ頃、遥か西の辺境の村。
大人たちの欲望とルールを完全にハックし、莫大な予算を握って盤面そのものを支配する「真のプレイヤー(アド)」が、誰にも気づかれずに牙を研ぎ澄ましていることなど。
聖教国の大人たちも、踊らされている異世界勇者も、知る由もなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第18話、聖教国の「作られた勇者」田口弘樹の登場でした!
いかがだったでしょうか、このアドとの鮮烈なまでの対比!
チートを持たず、大人を理詰めで操って要塞を築く10歳の元経営者。
最強のチートを持ちながら、ゲーム感覚で調子に乗り、大人たちにいいように搾取されている異世界勇者(田口)。
アドの「シェア争い」「最高の客寄せパンダ」という読みが、恐ろしいほどに的中していることが分かるエピソードでした。
魔王軍の本隊は、このド派手な「広告塔」である田口を潰すために、全戦力を聖教国へ向けることになります。
これにより、アドたちは誰にも邪魔されることなく村を「難攻不落の城塞都市」へと進化させるための『数年間の猶予』を完全に手に入れました!
「田口が痛すぎる(笑)」「大人の闇が深い!」と思っていただけましたら、ぜひ下部の評価(★)やブックマークで応援をよろしくお願いいたします!
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