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第17話 異世界からの『召喚勇者』と、経営者の市場分析

いつもお読みいただき、ありがとうございます!


前回、嬉し恥ずかしの限界突破で裏山の山頂を消し飛ばしてしまったソフィ。

圧倒的な「歩く大砲ヒロイン」の誕生に村中がどよめく中、アドたちはルッツの作った新兵器の威力を確信しました。


しかし、その数日後。

アドたちの知らない世界の裏側で、彼らの運命を大きく左右する「特大のイレギュラー」が報じられます。


今回は、アドの「経営者としての状況分析」が光るエピソードです!

それでは、第17話スタートです!

裏山の山頂が吹き飛んだ事件から数日後。

 村の広場は、王都から定期的な物資輸送のためにやってきたケヴィン隊長の部下(連絡将校)がもたらした一枚の『号外』によって、ハチの巣をつついたような騒ぎになっていた。


「おい、どういうことだ! 『聖教国サン・ノエルに、異世界より真の勇者が降臨』だと!?」

「強大なチートで魔族の軍勢を一人で蹂躙したって書いてあるぞ……! じゃ、じゃあ、ソフィちゃんはどうなるんだ!?」


村の大人たちや、ソフィの両親がパニックに陥っている。

 ケヴィンの報告により、王国の上層部では「辺境の村に勇者ソフィが匿われている」という事実が公然の秘密になりつつあった。だからこそ、莫大な予算がこの村に降り注いでいるのだ。

 なのに、隣の聖教国にも「勇者」が現れたとなれば、話が根底から覆ってしまう。


「あ、アドくん……私、勇者じゃなくなっちゃったんでしょうか……?」


不安そうに俺の袖を掴むソフィ。その横で、レイとルッツも険しい顔をしている。

 俺は配られた号外の羊皮紙を受け取り、そこに踊る大仰な見出しと、挿絵に描かれた『いかにも調子に乗っていそうな異世界人の青年』の顔をじっくりと眺めた。


「……なるほどな。鮮やかな『シェア争い』だ」

「しぇあ……?」


首を傾げる三人を連れて、俺はルッツの地下工房へと場所を移した。

 騒ぐ大人たちをよそに、俺の頭の中は前世のビジネス知識ロジックで冷徹に状況を分析し、最適な解を導き出していた。


「いいか、みんな。この号外は、俺たちにとって『史上最高の吉報』だ」

「吉報? アド、頭でも打ったのか? 王国が『あっちが本物の勇者なら、この村への予算は打ち切りだ!』って言い出したら、この要塞化計画は頓挫するんだぞ!」


噛みついてきたルッツを、俺は手で制した。


「逆だよ、ルッツ。……いいか、王国がケヴィン隊長の報告を受けて『我が国にも勇者が現れた!』と各国の貴族たち(スポンサー)に吹聴したとする。一番困るのは誰だ?」

「えっと……魔族?」レイが首を傾げる。

「いや、防波堤として最前線で魔族と戦っている『聖教国サン・ノエル』の大人たちだ」


俺は地下工房の黒板に、大陸の勢力図をチョークで殴り書きした。


「聖教国は『人類の盾』というブランド(大義名分)があるからこそ、各国から莫大な寄付金や支援物資(スポンサー料)を引っ張れている。だが、安全な後方にある王国が『勇者』を確保したとなれば、資金はそっちへ流れてしまう」

「あっ……!」と、ソフィが小さく息を呑んだ。


「資金繰りの悪化に焦った聖教国のトップ(枢機卿たち)は、失われた市場シェアとブランドを取り戻すために、禁忌とされる『異世界召喚』というヤケクソのガチャを回した。……そして、運良く『チート持ちの便利なパンダ』を引き当てたってわけだ」


俺は黒板の『聖教国』の位置に、大きく星印(★)を書き込んだ。


「これが何を意味するか分かるか? 魔王軍の目は今、完全に『聖教国のチート勇者』という最も目立つ広告塔ヘイトタンクに釘付けになったということだ。魔族のメンツにかけても、このド派手な偶像シンボルを放置するわけにはいかなくなった」


俺の口元に、自然と悪辣な笑みが浮かぶ。


「魔王軍の本隊は、すべて聖教国に回る。つまり、大山脈の死角にあるこの村(裏道)は、これから数年間……完全に『放置フリー』になる」


「「「……っ!!」」」


俺の論理的なマクロ分析を聞いて、ルッツの目にギラギラとした狂気が戻ってきた。

 レイも、ソフィも、俺が言わんとしていることを完全に理解した顔だ。


「予算の心配はいらない。聖教国が勇者を出した以上、対抗心に火がついた王国の貴族たちは、意地でもソフィ(自国の勇者)を育て上げるために追加の予算を湯水のように注ぎ込んでくるはずだ」


俺はチョークを置き、三人に向き直った。


「降って沸いた『数年間のモラトリアム』だ。……俺たちが大人(14〜15歳)になるまでの間に、王国の予算を限界までしゃぶり尽くして、この村を魔王軍の本隊すら返り討ちにできる『難攻不落の城塞都市』に作り上げる」


「……へへっ。やってやるよ。俺の頭の中にある最高にエグい設計図プランを、全部現実にしてやる!」

「僕も、もっと剣の腕を磨く! アドくんとソフィちゃんを絶対に守れるように!」

「わ、私も……! もっと魔法のコントロール、頑張ります!」


地下工房に、三人の頼もしい声が響く。

 盤面は整った。

 聖教国の『作られた勇者』が魔王軍の猛攻を引き受けている間に、俺たちは辺境の地で、誰にも気づかれずに鋭い牙を研ぎ澄ますのだ。


(まあ、せいぜい頑張って客寄せパンダを演じてくれよ、『異世界の勇者様』)


俺は、机の上に置かれた号外の挿絵――大仰な剣を掲げてドヤ顔をしている青年の顔――を指先で弾き、静かに鼻で笑った。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


第17話、いかがだったでしょうか!

聖教国の勇者召喚という特大ニュースを、「大人のドラクエ」らしく経営・経済の視点で分析するアド。

スポンサー料(寄付金)の奪い合い、ブランドの競合、そして敵のヘイト(関心)管理。前世のブラック企業社長としての知識が、ファンタジー世界のマクロな戦局を見事に読み切りました!


これにより、アドたちは魔王軍の脅威から一時的に解放され、「数年間の準備期間」を合法的に(?)手に入れることになります。

村を要塞都市へと変貌させ、彼ら自身も大人へと成長していくための重要なターニングポイントですね!


さて、次回は視点がガラリと変わります。

アドに「客寄せパンダ」と見下された、聖教国の異世界召喚勇者『田口タグチ 弘樹ヒロキ』。

彼は一体どんな人物で、聖教国でどんな扱いを受けているのか……?

大人のドロドロした裏事情が渦巻く、第18話をお楽しみに!


「アドの分析がエグい!」「田口が気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ下部の評価(★)やブックマークで応援をよろしくお願いいたします!

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