第16話 新兵器の性能テストと、世界で一番可愛い歩く大砲
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
前回、ついに王国の「マニュアル至上主義」を打ち破り、過労死寸前の天才ドワーフ・ルッツを札束でヘッドハンティングしたアド。
そしてルッツの狂気的な工学センスによって、三人のポテンシャルを極限まで引き出す「専用装備」が完成しました!
今回は、いよいよその新兵器の性能テスト(試し撃ち)回です。
張り詰めた交渉や頭脳戦から一転、村の裏山でのほのぼの(?)とした日常風景と、我らがヒロイン・ソフィの可愛らしさをお楽しみください!
それでは、第16話スタートです!
「いくぞレイ! しっかり防いでみろよ!」
「うん、いつでもいいよ!」
村の裏山に作られた演習場。
村の屈強な男衆が数人がかりで、レイに向かって丸太やスイカ大の岩を次々と投げつける。
普通ならペチャンコになるような質量攻撃だが、レイは全く焦る様子もなく、ルッツの打った『特殊双剣』を軽やかに構えた。
――カツンッ! ギィンッ!
直刀の腹と、特殊な鍔が、迫り来る岩や丸太にわずかに触れる。
レイの天性の『絶対回避』の動体視力と、それに完璧に追従する軽量合金の双剣。斬るのではなく「軌道を逸らす(パリィ)」ことに特化したその刃は、物理法則を無視したかのように、すべての質量攻撃をレイの体の横へと滑らせていく。
「すげえ……! あんな重い丸太が、羽虫みたいに弾き飛ばされていくぞ!」
「へへっ、どうだ! 俺の計算した重心バランスと、レイの反射神経の完全なマリアージュだぜ!」
村人たちがどよめき、徹夜明けで目の下にクマを作ったルッツがドヤ顔で胸を張る。
「よし、次は俺だな」
レイと交代して前に出た俺は、腰のホルスターから無骨な『魔導銃』を抜いた。
内包と放出の両方ができるが、いかんせん魔力の「総量」が少なすぎる俺。その微弱な魔力を、銃身という名の増幅器に流し込む。
(……よし、循環から放出への切り替え、ロスなし。圧縮率良好)
カチリ、と撃鉄を起こし、20メートル先にある巨大な岩に向かって引き金を引いた。
――ズドンッ!!
重い発砲音と共に、俺の微弱な魔力が何倍にも増幅された『魔力弾』となって撃ち出され、標的の岩を粉々に粉砕した。
「おおっ!? アドの少ない魔力で、あんな威力が……!」
「驚くのは早いぜ」
俺はニヤリと笑い、腰のポーチからルッツお手製の小さな玉を取り出し、前方に放り投げた。
ポンッ、という軽い音と共に、周囲数十メートルが一瞬にして視界ゼロの濃密な『煙幕』に包まれる。
「うわっ、何も見えねえ!」
「ゲホッ、なんだこれ!」
混乱する村人たちをよそに、俺は煙幕の中で「増幅された魔力弾」による牽制と、万能ナイフに仕込まれたワイヤーを使った罠の展開をシミュレーションした。
(完璧だ。これなら少ない手札でも、戦場という盤面を完全にコントロールできる)
煙が晴れた後、悪役のような笑みを浮かべて銃を回す俺を見て、村人たちが「あいつ本当に10歳か……?」と少し引いていたが、些細な問題だ。
「さて、最後はソフィだ」
「は、はいっ!」
俺が声をかけると、ソフィが元気よく前に出た。
彼女が装備しているのは、純白の装飾が施された、いかにも伝説の勇者が持ちそうな美しい『剣と盾』だ。
とても超火力の魔法レーザーを撃ち出すための「砲身」と、その反動を抑える「アンカー」には見えない。完璧なカモフラージュだ。
「ソフィ。標的は、あの裏山の山頂付近にある、枯れた大木だ」
「分かりました! ルッツさんが作ってくれたこの剣に、私の魔力を流し込めばいいんですよね……!」
ソフィが真剣な表情で、スリットの入った剣を構える。
風に揺れる銀糸の髪と、神聖な武具。その姿は、絵画から抜け出してきた聖騎士のように美しく、そして愛らしかった。
「……うん。すごく似合ってるよ、ソフィ。世界で一番可愛い勇者だ」
俺は素直な感想を口にした。
前世の小難しい理屈を抜きにして、ただの幼馴染として、本当にそう思ったからだ。
しかし、それがマズかった。
「――――えっ」
ソフィの動きが、ピタッと止まった。
みるみるうちに彼女の顔が、耳の先まで茹でダコのように真っ赤に染まっていく。
「ア、アドくんが……わ、私を……せ、世界で一番、可愛いって……!?」
ぷしゅーっ、とソフィの頭頂部から湯気が立ち上るのが見えた。
10歳の少女にとって、大好きな幼馴染からの直球の褒め言葉は、劇薬すぎたのだ。
照れと嬉しさで、ソフィの思考回路は完全にショート(メルトダウン)した。
「あ、あわわわわわっ! あ、アドくんのために、わ、わたし、がんばりますぅぅぅっ!!」
極度の緊張と興奮状態。
当然、そんな精神状態で繊細な『魔力コントロール』などできるはずがない。
「おい待てソフィ、魔力の出力が――」
ルッツが血相を変えて叫んだが、遅かった。
限界突破したソフィの規格外の魔力が、一切のブレーキなしで剣(砲身)の内部へと注ぎ込まれ、限界まで圧縮される。
「えええええいっ!!」
ソフィが、やけくそのように剣を振り下ろした。
――ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!
閃光。そして、轟音。
剣のスリットから放たれたのは、もはや「魔法」などという生易しいものではなかった。
極太の純白のレーザー(魔力砲)が一直線に空へ向かって伸び、標的の「枯れた大木」はおろか、その背後にあった**『裏山の山頂部分』をごっそりと消し飛ばした。**
さらに、撃ち出した反動を受け止めた盾の周囲の地面が、まるで隕石でも落ちたかのように巨大なすり鉢状に陥没している。
「「「…………」」」
演習場に、死のような静寂が落ちた。
ポッカリと山頂が消滅し、地形が変わってしまった裏山。
その信じられない破壊の跡を見て、村人たちも、ルッツも、俺も、ただ口をポカンと開けて固まっていた。
「あ……」
陥没したクレーターの中心で。
我に返ったソフィが、自分のしでかした惨状を見て、顔を青ざめさせた。
彼女は剣と盾をカラカラと手放すと、その場にヘナヘナとしゃがみ込み、大きな瞳に涙をいっぱいに溜めた。
「や、やっちゃいました……。ご、ごめんなさい、アドくん……山、消えちゃった……」
ウルウルと涙目でこちらを見上げてくる、規格外の歩く大砲。
俺はしばらく天を仰ぎ、深々とため息をついた後、彼女のそばに歩み寄った。
「……やりすぎだぞ、バカ」
「うぅっ……ごめんなさいぃ……」
俺は苦笑しながら、クレーターの中で小さくなっているソフィの頭を、ポンポンと優しく撫でた。
(……まあ、兵器の最大出力の限界値が知れただけでも、良しとするか)
脳内でそんな経営者じみた計算をしながらも、撫でた手に伝わってくるソフィの柔らかい髪の感触に、俺は少しだけ口元を緩めたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
第16話、いかがだったでしょうか!
今回は緊張感あふれる頭脳戦をお休みして、三人の新兵器の性能テストと、ソフィの可愛らしさを全開でお届けしました!
レイの絶対防御、アドの魔導銃とデバフ戦術。
そして……アドに「世界で一番可愛い」と褒められて限界突破し、裏山の山頂を消し飛ばしてしまったソフィ(笑)。
「やりすぎちゃった……」と涙目でしゃがみこむ彼女を撫でるアドの姿に、少しでも「尊い!」「ほっこりした!」と思っていただけたら幸いです!
しかし、この平和な日常の裏側で、世界は確実に動き出しています。
次回! 王都からの定期連絡により、はるか遠くの「聖教国」で、もう一人の『勇者(田口)』が召喚されたという特大のニュースが飛び込んできます!
アドがこの状況をどう分析し、利用するのか?
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