たとえ本人でも……
エリンとダニーは同じ考えです。
ノアが話し終えると、エリンは微笑んだ。
「素敵な友達ね……」
ノアは頷いた。
「うん」
「あなたのこと……すごく大切に思ってるんだね」
「そうだね」
エリンはこれまでのことに思いを巡らせながら優しく言った。
「ダニーさんの言葉……私も好きだな」
「どの言葉?」
「『たとえ本人でも許さないぞ』って」
ノアは笑った。
「あれはびっくりしたよ」
エリンは彼の手を取った。
「でも、本当にそうだと思う!」
ノアは彼女を見た。
「あなた……自分のことを大切にしなさすぎるところがあるもの」
ノアが少し困ったように笑った。
「そうかな?」
「そうよ」
エリンは彼の手を握った。
「私もダニーさんと同じ気持ち……。あなたが自分のことを軽く扱ったら、私も怒るからね」
「それは困るな……」
「困ってください」
2人は笑った。
エリンはノアの肩に頭を預けた。
「ねえ、ノア。いつかダニーさんに会いたいな」
ノアは頷いた。
「きっと、喜ぶよ」
「赤ちゃんが生まれる前に、会えるといいね」
「そうだね」
ノアは、彼女の髪を撫でた。エリンは目を閉じた。
彼女はノアの大学時代の話を思い返していた。
少し年上で、真面目で、誰かに頼られると断れない学生。
自分のことを低く見積もり、友人に叱られていた青年。
今のノアと何も変わらない。
だが1つだけ、わからないことがあった。
26歳で大学に入るまで、ノアは何をしていたのだろう? 彼はそのことを話さなかった。エリンも尋ねなかった。
ただ彼が今ここにいることを嬉しく思った。そしていつか彼自身が話したくなったときには、聞いてあげたいと思った。
その夜。ノアは寝室の引き出しを開けた。中には小さな指輪の箱が入っている。
彼は箱を手に取り、蓋を開けた。1粒のダイヤモンドが、部屋の明かりを受けて輝いた。
ノアはしばらく見つめていた。そしてダニーの言葉を思い出した。
「お前も……俺の大切な友人であるノア・ベネットを軽く扱うのか?」
「たとえ本人でも許さないぞ!」
ノアは静かに息を吐いた。あの頃、自分には誰かに大切にされる資格がないと思っていた。今もその気持ちが完全に消えたわけではない。
だがエリンは自分を愛してくれている。ダニーは自分を友達だと言ってくれる。そしてもうすぐ生まれてくる子どもがいる。
ノアは指輪の箱を閉じた。
「僕も自分のことを少しは大切にしていいのかもしれない……」
彼はそう思った。初めてその考えを否定しなかった。
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