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神様は見ている  作者: ももらら
幸せになる資格

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クリスマス・パーティー

病院で子供たち対象のパーティーが開催されます。

 12月18日、金曜日。病院の休憩室では、エミリー・カーターが1枚の紙を掲げていた。

「発表します。今年のクリスマス・パーティーは、23日の水曜日、午後6時からです!」

 昼休みの看護師たちが顔を上げた。

「またやるの?」

「去年は大変だったじゃない」

「誰がサンタクロースになるの?」

 口々に質問が飛ぶ。エミリーは胸を張った。

「今年はちゃんと準備してるから大丈夫!」

 エリン・ウォーカーは、サンドイッチを食べながら笑った。

「去年、何かあったの?」

 エミリーは少しだけ顔をしかめた。

「サンタクロースの衣装が、途中で破れたの」

「えっ?」

「しかも子供たちの前で」

 隣に座っていた看護師が笑った。

「ズボンのお尻がね」

 エミリーは両手で顔を覆った。

「言わなくていい!」

 休憩室に笑い声が広がった。

 エリンも笑いながら言った。

「今年は、丈夫な衣装を用意したほうがいいね」

 エミリーは頷いた。

「もちろん」

 そしてエリンを見た。

「それで……」

 エリンは嫌な予感がした。

「ノアにサンタクロースをお願いできないかな?」

「ノアに?」

「そう!」

 エミリーは目を輝かせた。

「背も高いし、優しそうだし、子供たちにも人気があるでしょう?」

 エリンはノアのサンタ姿を頭に描いた。確かにサンタクロースの衣装を着ている姿は、想像すると少しおかしかった。

「本人に聞いてみないと……」

 エミリーは頷いた。

「もちろん!」

 そして少しだけ声を落とした。

「でも……エリンから頼んだら、きっと断らないと思う」

 エリンは眉を上げた。

「それ、ずるくない?」

 エミリーは肩をすくめた。

「作戦よ」


 午後2時。ノア・ベネットはリハビリ室で患者の歩行訓練を終えたところだった。ルーク・アンダーソンが記録用紙を持って近づいてきた。

「ベネットさん」

「何?」

「今年のクリスマス・パーティー、サンタクロース役がまだ決まってないらしいですよ」

「そうなんだ」

 ルークは頷いてから、少しだけ笑った。

「ベネットさん、どうですか?」

「僕が?」

「似合うと思いますよ」

 ノアは少し考えた。

「サンタクロースって、もっと年配の人のイメージがあるけど……」

「大丈夫ですよ。ひげをつければ」

「そうかな」

 ルークは少し身を乗り出した。

「ウォーカーさんも喜ぶと思いますよ」

 ノアは頬を赤くした。エリンのことを言われると、どうしても照れてしまう。

「どうしてエリンが出てくるの?」

 ルークは肩をすくめた。

「いや、何となく……」

 ノアは少し困ったように笑った。

「君やエミリーは、最近そういう話ばかりだね」

 ルークはにやりと笑った。

「幸せそうだからですよ」

 実際、付き合い始めてからのノアとエリンは、誰がどう見ても幸せそのものだった。自分はそんなにわかりやすいのかとノアは苦笑しながら礼を言った。

「ありがとう」


 その日の夕方。エリンはリハビリ室の前でノアを待っていた。ノアが出てくると、彼女は手を振った。

「お疲れさま」

 ノアは微笑んだ。

「お疲れさま」

 エリンがちょっと困ったような笑顔で言う。

「ねえ、ノア」

「うん?」

「お願いがあるんだけど……」

 エリンのお願いなら、なんでも聞くつもりではあるが。ノアは首を傾げた。

「何?」

「クリスマス・パーティーで、サンタクロースになってくれない?」

「やっぱり……」

「え?」

 ノアが笑った。

「ルークからも言われたんだ」

「そうなの?」

「うん」

「じゃあ、どう?」

 ノアは少し考えてから返事を伝えた。

「子供たちが喜んでくれるなら」

 エリンは目を輝かせた。

「本当?」

 ノアは頷いた。

「うん」

 エリンは嬉しそうに笑った。

「ありがとう!」

 ノアも笑った。

「ただし……」

「何?」

 ノアは真剣な顔で言った。

「衣装は丈夫なものにしてほしい」

「知ってたの?」

「去年の話、聞いたことがあるから」

 エリンは笑いながら言った。

「大丈夫。今年はちゃんと確認するから」


 12月23日、水曜日。病院の多目的ホールには、クリスマスの飾りつけが施されていた。壁には色とりどりの紙飾り。窓には雪の結晶のシール。中央には大きなクリスマスツリーが置かれていた。患者たちや家族が集まり、会場は賑やかだった。エミリーは受付で忙しく動いていた。

「エリン! プレゼントの袋、こっちに運んで!」

「わかった!」

 エリンが紙袋を抱えて会場の奥へ向かったとき、背後から低い声が聞こえた。

「メリークリスマス」

 エリンが振り返ると、サンタクロースが立っていた。

 赤い服。白いひげ。大きな帽子。そして……見慣れた優しい目。

「ノア!」

 サンタクロースは首を傾げた。

「私はサンタクロースだが?」

「無理があるよ!」

 ノアは困ったように笑った。

「そうかな……」

 エリンは彼の全身をくまなく見回した。

「でも、似合ってる……ひげがなければ、もっといいけど」

「そう?」

「うん」

 エリンは少しだけ声を落とした。

「私は……いつものノアのほうが好き」

 ノアは静かに微笑んだ。

「僕もいつもの君が好きだよ」

 エリンは、少しだけ頬を赤くした。

「そういうこと、急に言わないで」

「最初に言ったのはエリンじゃないか」

 ノアは笑った。

 パーティーが始まると、子供たちはサンタクロースの周りに集まった。ノアは大きな椅子に座り、1人ずつプレゼントを渡していった。

「メリークリスマス」

 子供たちが嬉しそうに袋を受け取った。

 ある男の子がノアを見上げた。

「サンタさん……」

 ノアは微笑んだ。

「何かな?」

「サンタさんって、本当に空を飛べるの?」

「トナカイが頑張ってくれるんだよ」

 男の子は目を輝かせた。

「すごい!」

 別の女の子が彼の手を見た。

「サンタさん、手が大きいね」

「そうかな?」

「プレゼント、いっぱい持てそう」

 ノアは思わず笑った。

「そうだね」

 少し離れた場所で、エリンがその様子を見ていた。ノアが子供たちに人気なのが誇らしかった。

 パーティーの途中、ヌクミズ医師が会場に現れた。彼はサンタクロース姿のノアを見るなり、目を丸くした。

「先生、こんばんは」

 ヌクミズはしばらく彼を見つめた。

そして、真面目な顔で言った。

「その格好、似合いますねえ」

「ありがとうございます」

 ヌクミズは不思議そうな顔をしている。

「でも……」

「何でしょう?」

「日本のサンタクロースは、もう少しお腹が出ている気がします」

 ノアが意外そうな声を出す。

「そうなんですか?」

 ヌクミズは頷いた。

「ええ」

 そして真面目な顔で言った。

「来年までに、太ってみますか?」

「それは……健康上あまりよくないですね」

 ヌクミズは少しだけ考えた。

「確かに……では今のままで」

 エリンは近くで笑いをこらえていた。


 午後8時。パーティーが終わり、会場の片づけが始まった。ノアはサンタクロースの衣装を脱ぎ、いつもの服に着替えた。エリンが労いの言葉をかける。

「お疲れさま、サンタさん」

「ありがとう」

「子供たち、すごく喜んでたね」

「うん」

 ノアは満足そうな笑顔だった。

「楽しかったよ」

 エリンは微笑んだ。

「よかった」

 ノアは真面目な顔になって言った。

「エリン。クリスマス当日、何か予定ある?」

「仕事は休みだけど、特に決めてない」

「何する?」

 エリンは少し考えた。

「ノアと一緒にいられれば、何でもいいかな」

 ノアが笑った。

「それ、ずるい」

「いつものお返し!」

 エリンは彼の手を握った。ノアは静かに微笑んだ。

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