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神様は見ている  作者: ももらら
幸せになる資格

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危険な男?

クーパーの電話相手は誰なのか……。

 その夜。エリンはノアの家を訪れていた。2人はキッチンで夕食を作っていた。

 今日は野菜たっぷりのスープと鶏肉のソテー。エリンは鍋をかき混ぜながら言った。

「今日、エミリーから聞いたんだけど……」

 ノアが鶏肉を焼く手を止めた。

「クーパーさんっていう人、また病院に来てたんだって」

 エリンは彼を見た。

「何かあった?」

「少し話しただけだよ」

 エリンは頷いた。

「そうなんだ」

 少し間を置いた。

「あの人、ノアのことを知ってるみたいだった?」

 ノアはフライパンに視線を戻した。

「昔の知り合いと間違えたみたい」

 エリンは少し考えている様子だったが、それ以上聞こうとはしなかった。しかし少し気になっていた。彼の横顔がいつもより少しだけ硬いことが。


 夕食の後。2人は居間のソファに並んで座っていた。テレビでは地元のニュースが流れていた。

 旧製紙工場の再開発計画について、町議会で議論が続いているという。エリンは画面を見ながら言った。

「工場の跡地、どうなるんだろうね」

 ノアは頷いた。

「そうだね」

 エリンは少しだけ笑った。

「ウォルターさん、また怒りそう」

 ノアも笑った。

「そうかもしれない」

 しばらく2人は黙っていたが、やがてエリンが言った。

「ノア」

「うん?」

 エリンは少しだけ息を吸った。

「今日、何かあった?」

 ノアは彼女を見た。

「どうしてそう思うの?」。

「何となく……元気がない気がして」

 ノアはゆっくりと息を吐いた。

「ちょっと……昔のことを思い出しただけ」

「昔のこと?」

 エリンは穏やかに言った。

「話したくなったら聞くよ」

 エリンは続けた。

「今じゃなくてもいいから」

 ノアはゆっくりと頷いた。

「ありがとう」

 エリンが愛情たっぷりの笑顔を返す。

「うん」

 彼女はそっとノアの手を握った。ノアも優しく握り返した。


 その夜。エリンが帰った後、ノアは居間に座っていた。テーブルには2人が使ったマグカップが残っていた。彼はしばらくそれを見つめていた。

 そして静かに立ち上がった。書斎へ向かう。机の引き出しを開ける。中にはマーティン・クーパーの名刺が入っていた。ノアはそれを取り出した。

 裏返す。白い紙に会社の電話番号が印刷されていた。ノアはしばらく名刺を見つめていた。

 そして携帯電話を手に取った。番号を入力する。だが通話ボタンは押さなかった。

 ノアはゆっくりと息を吐いて名刺を机に置いた。

「何を知っているんだ?」

 クーパーはパトリックの名前を出した。偶然ではない。あの男は何かを知っている。

 ノアは静かに目を閉じた。

「エリンには関係ない」

「彼女を巻き込んではいけない」

 ノアは携帯電話を置いた。そして窓の外を見た。夜空には星が浮かんでいた。そのとき携帯電話が震えた。エリンからだった。

「今日はありがとう。スープ、おいしかったね」

 ノアは笑顔で画面を見つめていた。そして返信した。

「うん。また作ろう!」

 すぐに返事が来た。

「今度はもっと野菜を入れなきゃね」

 ノアは思わず笑った。

「わかった」

 彼は携帯電話を置いた。そしてもう一度、名刺を見た。しばらくして引き出しにしまった。


 同じ頃。マーティン・クーパーはモーテルの部屋で誰かと電話していた。

「ああ。本人だと思う」

 相手が何かを言った。クーパーは醜悪な笑みを浮かべる。

「パトリックの名前を出したら顔色が変わった」

 沈黙……

 クーパーは続けた。

「で、どうする?」

 電話の向こうの男は低い声で答えた。

「何もするな」

 クーパーが思わず声を荒げる。

「何だと?」

「その男には関わるな」

 クーパーは呆れたように笑った。

「ずいぶん慎重だな」

 相手は答えなかった。クーパーが続けた。

「昔のことを知ってる人間がいるって、本人に教えてやっただけだ」

 電話の向こうで長い沈黙があった。やがて男が言った。

「お前は何もわかっていない」

 クーパーは少しだけ眉を寄せた。

「どういう意味だ?」

 男は答えなかった。そして電話が切れた。

 クーパーは携帯電話を見つめながら舌打ちした。

「何だってんだ」

 彼は机の上に置かれた古い写真を見た。そこには若い男の横顔が写っていた。

 クーパーは写真を見ながら小さく呟いた。

「そんなに危ない男なのか?」

 窓の外では冷たい風が吹いていた。

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