アフガニスタン現着
瀬戸内グループのスーパーコンピューターにダイブし、海底ケーブルを使ってインドに向かう。正攻法では数日かかるところを、わずか数時間で向かう旅路だが、これもアリスを助けに行くためだ。
無数に続く回路の中を翼のガイドで突き進む。一時間おきに香里奈が翼に無線を送り現在地を聞く。
「翼。今どころ変だ?」
『現在、南シナ海の付近を移動中です。インドまではあと2時間ほどで到着する見込みです』
「なら、すぐに着くわね。美羽、大丈夫?」
「えぇ、まだ大丈夫よ」
翼のガイドでは、私たちは南シナ海の付近を通過中らしい。地上に出た場合、マレーシアかインドネシアの付近だろう。ネットワークを介しているので、不法入国は免れているらしい。
ともあれ、通過している国の検閲はすり抜けている。特にこの海域は中国も近いため、少し不安だったが、今のところ問題ないようだ。
海底ケーブルの中を進んでいると、途中で分かれ道ができている。香里奈が右のほうを指し、私たちは香里奈の後に続く。
『その道を進むと、いよいよインドに着きます』
「ここからは陸路でアフガニスタンに向かうぞ。準備はいいか?」
「3国の情報機関にハッキング済みよ。問題ないわ」
「私も問題ないわ。行きましょう」
私たちは海底ケーブルから、インドのサーバーにダイブする。到着すると、インドでも有数のIT企業のスーパーコンピューターから『仮想世界』に遷移する。
「まだ着いたって実感がないわ。それに、すこし頭はクラっとするわね」
「体が時差に適応できてないんだ。数日かかるところを短時間で来たんだ。時期に慣れるぜ」
辺りを見渡しながら、ビルから出る。すると、民衆がごった返すような人混みの風景が広がった。
「間違えないわね。ここはインドで合っているみたいね」
『現実世界』に遷移すると、ヒンドゥー教特有の建物と現代的な建物が、乱列した街並みが広がる。インドの街の空を飛んでいると、翼から無線が入る。
『今皆様がいるのは、ニューデリーです。厳密にはデリー首都直轄領の中にあり、その中でも首都機能が集中している地方とされているです! 遠くに見えてるのが、インドの国会議事堂ですね!』
「なるほど。本当に国を超えたみたいね。非合法だけど」
「夢を壊さないでよ。本来なら、税関に捕まってるんだから」
私たちはニューデリーの街並みを見ながら、空でパキスタンとの国境付近へと向かう。進むにつれ、農村部に入ったのか打って変わって自然が広がる。そして、パキスタンとの国境付近を通過しパキスタンに入る。
この国でも美生が既に税関にハッキングして入国した扱いになっている。私たちは数時間かけ、首都のイスラマバードに到着した。騒がれないよう街のはずれに降り、『リンク』を解除する。美生は解除後に座り込む香里奈をおんぶし、私たちはイスラマバードの街を歩く。
「車いす借りないとね」
「そうね。まったく、車椅子も一緒に慣れないのが不便で仕方ないわ」
私たちはイスラマバード内のホテルで一泊する。3人部屋で入り、明日について話し合う。
「明日はいよいよアフガニスタンに入るわ。アリスと会えるとわからないけど、まずはアメリカ軍の戦闘地域を探すことになりそうね」
「いよいよね。ましては、あそこは危険地域。ばったり会ったテロリストとの戦闘もあり得る。いつも以上に警戒しないといけないわね」
「それに、警戒すべきはタリバンだね。もうかれこれ30年以上実効支配してるから、タリバンとイスラム過激派の双方と相手になるかもしれないしね」
みんなで明日について話し合う。かなりの混戦を予想される。そのためには英気を養わないといけない。
「でも、今日はもう寝ましょう。出発はパキスタン時間の早朝よ。慣れない時差で体が疲れているから、早めに寝ましょう」
香里奈の言葉に、私たちは眠りにつく。
だが、体が時差に慣れていないせいか、中々眠れない。真夜中のパキスタンの風景を眺めながら時間を潰す。すると、ブリュンヒルデが話しかけてくる。
『時差のせいもあって、眠れないみたいね。ここと日本との時差は4時間遅いのが原因ね』
「そうかもしれない。ただ、アリスに会うとい理由でここまで来たのもあるのかしらね?」
『人間、精神状態に何らかの異常があると睡眠に影響が出ると聞くわ。今のあなたは、友達と会うことに高揚感が高ぶってるのもある。まぁそれは、人間の心理現象の一環だから仕方ないわ』
「高揚感っか。そんなのを感じるのは久しぶりね。いつ以来かしら?」
ブリュンヒルデが指摘した感情を振り返る。いつ以来かを思い出そうとする。だが、ノイズのようなフラッシュバックのせいで、頭痛を感じ頭を押さえる。
「うっ……。だめね、思い出そうとすると、頭が痛む」
『断片的な記憶障害の可能性があるわ。もう休んだほうがいいわ』
「そうね……。なんだか少しだけでも寝てみるわ」
窓を閉め、ベットに入る。その間に、不思議と眠りについた。
3時間が経過したのち、アラームで目が覚める。二人はもう準備のほうを終えているみたいで、先に部屋から出ていた。私も部屋から出ると、すでに『ライド』していた二人が待っていた。
「遅いわね。いつまで寝ていたの?」
「ごめんなさいね。どうも寝つきがよくなくてね」
「でも、その口調なら問題ないようだな。さぁ、早く『ライド』しろよ」
私はスマホに指を触れる。そして、ブリュンヒルデに『ライド』して『ブレイバー』の姿になる。
「待たせたわね。さぁ行きましょう」
私の言葉に、二人はパキスタンの上空に飛び立つ。私も二人に追従するように飛び立つ。パキスタンの上空を北に進み、いよいよアフガニスタンに入る。
『見えてきたです! あそこがアフガニスタンですよ!』
「ついにアフガンだ。気を引き締めていくぞ」
私たちはパキスタンとアフガニスタンの国境を付近を超え、アフガニスタンに入国する。しかし、不審は程に物静かだった。
辺りにはタリバンもイスラム過激派組織の反応もない。私たちは、各々『ウェポン』構える。
だが、ここで行われていることが、あまりにも非人道的なことだったとは、この時は誰も知らなかった。




