アフガニスタンにて
アリスこと、アリシティア・ユーリア・ロスチャイルドは、任務のためアフガニスタンに向かっていた。その任務とは、イスラム過激派組織による、アメリカ同時多発テロを未然に防ぐためだ。
確証が得られていない中、アリスはただ軍の命令に従う。その眼差しは、草薙美羽達を交流していた頃とは別に、一軍人の表情そのものだった。
アリスは今日が命日という覚悟で、この任務にあたる。部下や上官にも止められたが、それでもアリスはこの任務を受ける。齢19という若さで、陸軍エリートになった彼女は、受けなきゃいけない重圧を受け入れなかればならないのだ。
「着いたぞ。総員、降下準備!」
アリスはパラシュートを背負い、敵拠点の上空に待機するヘリコプターから降下する。M4A1を装備しながら、テロリストの拠点を強襲する。
「move!」という掛け声と共に、CQBで次々と制圧していく。アリスは躊躇することなく、銃口を向けたテロリストに対して無情にも発砲する。
乾いた銃声があたりに響く。仲間の1人がフラッシュバンを使うと、それに合わせて隊員たちがM4A1を無防備のテロリストに発砲する。アリスもそれに併せて、銃口を向けて発砲する。
「クリア!」っと隊長格の兵士が言うと、アリスを含めた隊員達も同じく言う。隊長が任務の完了を伝達する。アリスは1人アフガニスタンの風景を眺める。
『無事に終わったみたいですね』
スマホからアテナが話し出す。
「アテナ。任務中は話しかけないでって言ってるでしょ?」
『そう言うわけに行きません。あなたは今、虚しさが残っているようですが、いかがしましたか?』
「くだらない任務だったよ。私が着くまでもなかっただけ」
アリスは仲間達が資料を漁っているのを見る。隊員達は物色した資料に信憑性の高い情報が見当たらない事に落胆する。
大統領やペンタゴンのデマなのかを疑うものもいるが、任務は完了した事に安堵している。すると、イスラム過激派のリーダーが、突如として苦しみ出した。隊員達は急いで近づくが、時すでに遅く、泡を吹いてその場で死亡した。
「どうなってやがる?」
隊員の1人が不審な死を見て驚愕する。アリスはアテナに過激派のリーダーの死因を解析させる。
『この感じ、カンナギ市での一件と同様なもののようです。拘束されている合間に『アバター』を削除し、投与したナノマシンによる心臓麻痺でしょう』
「それじゃ、彼から情報はもう」
『尋問することはもはや不可能です。後は彼が持っていたデバイスから、情報を聞くしか――――』
会話の途中で、アテナはアラートを鳴らす。アラート音に気がついた隊員達は、外を眺める。
「なんだ、ありゃ!?」
遠くから人の骨格のような金属の集団が押し寄せてくる。
「あれは一体!?」
『まさか、所属不明の歩兵型ロボットがあんなに!?』
AK-47を構えた人型のロボット達が、アリス達のいる拠点に押し寄せる。向こうはかなりの数に対し、こちらは10人。多勢に無勢。それに本部とも援軍要請も間に合わない。
「総員、援軍が来るまでなんとしても生き延びるぞ!」
「おおー!」という声と共に、迫り来るロボットを相手に徹底抗戦を行う。
『『ブレイバー』に力を使えば、一気に殲滅が可能ですが、どうなさいますか?』
「大丈夫。『ブレイバー』にならなくても、切り抜いてみせる!」
「move!」っという声と共に、拠点を出て激しい銃撃戦を開始する。ロボット達はAK-47を乱射しながら接近する。アリス達はM4A1を乱射しながらもロボットを掃討する。
隊員の1人がたまを切らし、落ちていたAK-47を拾ってはそのまま発砲する。だが、倒しても倒してもかなりの数が湧いてくる。援軍を未だ来ず、アリスも持っているM4A1の弾数のわずかになる。すると、隊員の1人が頭部に弾丸があたり、その場に倒れる。アリスはすぐさま銃口を向けるが、ロボットの激しいの射撃で遮蔽物に隠れる。
「こんな数聞いてないって!」
『これでは、皆死ぬことになるでしょう。それでも『ライド』はしないのですか?』
「大丈夫。なんとして援軍が来るまでは、持ちこたえてみせる!」
アリスは死んだ仲間のポケットから弾倉を拾う。そして急いでリロードしてはすぐさま発砲する。
そして、グレネードを投げると、爆風に備えて耳を塞ぐ。爆風が響くと、ロボットの破片が爆発地点に飛び散る。
「よし! これで切り抜けられる!」
『ですが、まだ余談は許さない状況のようですね。まだロボット達が押し寄せて来てますよ』
アリスはAK-47を拾いながら前進する。銃口をロボットに向けるとすぐさまに発砲する。ロボット達はアリスを脅威と捉え、アリスの方へと向かう。
アリスは戦いながら、自身の中にある気持ちに葛藤している。それは、美羽たちと過ごしたいという女の子らしい気持ちと、闘争を求めている兵士としての気持ちの二つだ。
そう、内心彼女は楽しんでいるのだ。この極限の状況を。それはただ闘争を求めているだけの狂戦士なのかもしれない。でも、彼女はこの状況を楽しんでいるのだ。
だが、足りない。全くもって足りないのだ。それを感じたのは、草薙美羽と初めてあったあの時のことだ。彼女はアリスのあった人間のなかで最も強い人間だった。強い力を有しながらも、誰かを守るためにその力を遺憾無く発揮する。彼女のその意志に、アリスはただ惹かれていったのだ。
だが、無情な戦場にはその感情はいらない。兵士はただ、上層部の命に従うだけの駒でしかない。可憐な少女であっても、兵士は兵士だ。
国のために死ぬのが義務である以上、それに従うしかない。理由はどうあれ、国のために死ぬのが本望なのだ。
『まだ来ています! これ以上の戦闘は危険です!』
「大丈夫、まだやれる!」
アリスはAK-47を乱射し続ける。こうしているうちに、ロボット達を殲滅する。安堵するも、援軍が車では油断はできない。次に備え、アリスは銃器を構える。その時だった。
「え?」
それは一瞬の出来事だった。なんと、隊員がいた遮蔽物の辺りが、一瞬で消えたのだ。彼に死体は上半身が消滅し、下半身が黒く焼け焦げている。
「この弾道、レールガン?」
『とてつもない反応が前線に確認。これは?』
アリスは遮蔽物から覗き込む。その光景を見て、アリスは絶望をその身に感じ取る。
「あ、ああ、うああああああ!」
隊員の1人が逃げ始める。すると、遠くのロボットからミサイルが放たれ、アリスのいる拠点に着弾する。
アリスはかろうじて被弾を避けられたが、巨大なロボットがアリスのいる拠点に接近する。巨大なロボットを見たアリスは、体が動かなくなる。そしてて、アリスは死を覚悟した。
「あぁ、もうダメかも。短い人生だったよ」
アリスは走馬灯を眺める。ここで死ぬんだなっと悟り、目を閉じる。巨大なロボットが、アリスのいる拠点を目掛けてガドリングを構える。
アリスは無残な死を覚悟した。
だが、未だにガドリングガンから銃弾が発射されない。ゆっくりと目を開ける。その光景を見た時、アリスは驚愕した。
「よかった。間に合ったみたいね」
目を開けたと同時に、驚愕する。なんと、巨大なロボットからガトリングガンが落ちていたのだ。いや、正しくは斬り落とされていたのだ。
「美羽……ちゃん?」
「しけた顔ね。まぁ、無事みたいでよかったわ」
『ブレイバー』となっていた井崎美生が、アリスを支える。同じく『ブレイバー』となっていた瀬戸内香里奈が、接近するロボットを薙ぎ倒した。
「悪いな。そう簡単に友達の帰りを待つほど悠長じゃないんだ」
「ど、どうして、みんなここに?」
アリスは2人に話しかける。だが、2人は武器を構えながら巨大なロボットに向かう。
「何はともあれ、無事でよかったわ。後は私に任せて、アリスは休んで」
「ど、どうして!? どうして来たの!?」
アリスは『ブレイバー』となっていた草薙美羽に問いかける。すると、美羽からはシンプルでありながら、深い言葉が出る。
「親友を助けるのに理由はいるのかしら?」
「え?」
「あなたは軍人。軍人である以上、国のために戦うことを拒むことができない。トップの命令には絶対に従うしかない。でも、あなたはそれ以前に私達にの仲間。同じ『ブレイバー』でもあって、私にとっても親友よ。だからあなたを助けに来た。理由なんて、それだけのものよ」
その言葉に、アリスは沈黙する。美羽は香里奈にアリスを拠点に戻すよう支持する。
「後は任せてくれ。すぐに片をつけるさ」
アリスは香里奈の背中を眺めながら立ち尽くす。
こうして、アリスは『ブレイバー』となっている3人の戦いをただ眺めるのだった。




