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サイバーブレイン〜人間とアバターが共存する世界で、アバターを持たない平凡な女子高生がAIとリンクしてブレイバーへと変身する〜  作者: nashlica
第1章 腐敗した資本主義編:前

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残滓の解析

 迫り来る凶暴なウィルスの群れを退け、かろうじて『暗黒階層(ダークウェブ)』から脱出する。安堵した私たちは、少しの間休憩しては採取した『商人X』のデータの残滓を調べる。

 結局のところ、採取できたのはこれだけだった。他にも採取できただろうけど、緊急事態だったため、私が見つけた残滓のみになった。


「それじゃ、今から解析をやるわ。速攻で終わらせるよう善処するわ」

「どれだけかかる?」

「短縮に短縮して3時間ってところかしら? この姿ならそれはできるわ」

「なら、私たちは帰投の準備でもしようかな? 解析してたら、薬の効力は切れるから」


 アリスの言葉に、私たちは目覚める為の準備を行う。ベースキャンプにしていた門の前から撤収し、美生がデータの復元が終わるのを待つ。

 待っている間も、アリスは浮かない顔をしていた。やっぱり目についてしまう。やはり聞くべきだろうか?


「アリス」っと私はアリスに声をかける。


「どうしたの?」

「さっきから、浮かない顔をしてるわ。本当に何かあったの?」


 私の質問に、アリスは驚く。何か思いつめている様子だった。


「な、なんでもないよ! ほ、本当になんでもないから」

「そうは見えないわ。何か聞いたらまずいことでもあるの?」


 アリスはため息をしながら、上を見上げる。


「そっか。美羽ちゃんにはわかるんだね」

「そうね。昔から人の感情を直感で感じ取れてしまうのよ。自覚しているけど、お人好しね」

「ううん。香里奈ちゃんにも言われたの。美羽ちゃんにだけは、言っておけってね」


 アリスの言葉に、香里奈の方を向く。香里奈はため息をしながら私の方を見て微笑む。


「そう。聞きたいところではあるけど、今はそうも言ってられないわね」


 私の言葉に、アリスは美生の方を振り向く。どうやら、データの残滓の復元が完了したようだ。


「翼。このデータをあなたの方でも保存して」

『はいです!』


 美生は復元を終えたデータの残滓を翼にも共有する。


「終わったようだな」

「そうね。けど、思った以上に膨大なデータ量だったわ。すぐに調べたいところだけど、もうすぐ起きないといけないようね」


 美生の言葉の通り、睡眠薬の効力がそろそろ切れる。ここからでは、『現実世界(リアルワールド)』に戻るのも時間がかかる。私たちは『深層階層(ディープウェブ)』から『表面階層(サーフィスウェブ)』に移動する。

『表面階層(サーフィスウェブ)』に帰還すると、香里奈は翼に無線で指示を送る。


「翼。私たちを起こしてくれ」

『はいです! 今起こしますね!』


 香里奈が翼に指示を送ると、翼は私たちを覚醒させる。それと同時に、私たちは『電脳世界(サイバーワールド)』からログアウトする。


 目が覚める。目が覚めると、私たちが良く知る風景が広がっていた。頭を確認すると、ギアが外れていたみたいだ。他のみんなは既に目覚めているようだ。

 時刻は深夜の0時になっていた。どうやら睡眠薬を飲んでから12時間が経過したらしい。体は寝ていたようだが、脳が冴えていたせいか、寝たという感覚はない。だが、体は不思議と充分休みが取れた気分だ。

 素足の音を響かせ、リビングへと向かう。リビングに向かうと、3人がコーラを飲みながら談笑をしていた。


「あ、起きた」

「みんなもう起きてたのね」

「あなたが起きてこなかっただけよ。どう、体は?」


 香里奈は私に体の状態を聞く。


「不思議ね。体は寝ていたからか快調だけど、脳は冴えていたから疲労している。なんとも不思議な感じね」

「そのうち慣れるよ。はい、コーラ」


 美生が私にコーラを渡す。すでに封を開けていたコーラを飲むと、糖分が体に染み渡ることを感じる。

 そして、私が卓に着くと、美生はPCを開く。すると、PCの画面には、復元したデータの中身が表示されていた。


「これは?」

「あの残滓の中身だよ。『商人X』がダークウェブで取引していた履歴がこれに入っているよ」


 美生はカーソルをファイルに近づける。すると、膨大な取引の履歴が、PCに移り出した。表示される売買の履歴には、薬物や武器、さらには密輸した兵器の情報まで表示されていた。


「これだけの取引をしていたとはね。だけど、こんなに取引を何がしたいのかしら?」

「それに、ナノマシンやハッキングツールの売買まであるね。ハッカーにも商売をしていたみたい」


 美生がさらに履歴を見る。そして、目を疑うような売買の履歴を確認する。


「何これ? 今までで見たことのないものがあるけど?」


 アリスはそれを見てもピンときていない。あの時その場にいた私たちにとっては、固唾を飲む代物だった。


「『量産型機兵』だと? あれはまだ完成されていないはずじゃ」

「しかも、テロリストに売っているなんて、あれが世に出ると」

「えぇ、世界の均衡が崩れるわ」


 アリスも私たちの顔を見て、冷や汗をかく。軍人である彼女にも、何も知らなくてもそれが危険な物だと察する。


「『量産型機兵』って?」

「簡単にいうと、次世代の核兵器なのよ。この会社に『佐々木』って社員がいて、彼が私に言わずに独断で作ったロボットよ。本物とは違って、核の力はないけど、それに相当する力を持っているとされているわ」

「そんな! 早く止めないと!」

「残念だけど、彼はもう会社を辞めているわ。今は彼を追うすべがない以上どうすることもできない。『商人X』も彼とは限らない以上、無闇に動くことは上策じゃないわ」


 香里奈の返答に、アリスは座り直す。『商人X』は既にどこからか『量産型機兵』の情報を掴み、密輸してはテロリストに売買をしていた。

 売買をもう終わっており、私たちにできるのはそれを破壊するしかない。だけど、いまはもうその術がいない以上、出てきてから癪だが動くの待ってからやるべきだろう。


「とにかく今日のところは解散しましょう。夜分遅くだけど、車を用意させるわ」


 香里奈はそういい、翼にリムジンの手配をさせる。リムジンを待っている間、真っ暗なエントランスで待つ。

 すると、アリスもエントランスで待っていた。


「ようやく2人になったね」

「そうね。それで? 話してくれる? 何があったのかを」


 私はアリスにことの顛末を聞く。

 リムジンが来るまでの間、私はアリスと話し合いをするのだった。

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