閉ざされた門
『深層階層』に戻る門が何者かに閉ざされ、翼との通信が出来ない状態になる。
どうやら『暗黒階層』に幽閉されたようだ。戻るために術がない以上、探すしかない。しかしここは無法地帯。全てが合法であり、それを縛るルールなんてものは存在しない。
睡眠薬の効力が切れるまであと6時間。それまでに『暗黒階層』から脱出しなければ、私たちの体は植物状態になる。
そうならないためにも、まずは『暗黒階層』からの脱出に専念しよう。
「ダメね。強力なブロックが施されているわ」
「どれぐらいかかる?」
「わからない。こっちに専念したいけど、ここじゃそれが出来ないわね」
美生の言葉に周囲を見渡す。荒廃した街の瓦礫から、凶暴なウィルス達がこちらを見ていた。
どうやら標的は私たちのようだ。数体ならまだしも、その数は数十と言ったところだろう。
「随分と迫ってきやがるな。どうする? このままじゃ全員無事では済まないぜ?」
「この状況では何もしなくても死ぬわね。だが、こいつらはタダでは見逃してはくれそうにないようね」
ウィルスが怪物のような雄叫びをあげる。すると、アリスは作戦を考案する。
「ここはパーティープレイで行こう。前衛は香里奈ちゃんと美生ちゃん、中衛は美羽ちゃん、後衛は私でやろう」
「なるほど、それぞれの得意分野で敵を分散して倒すわけね。それならまだ楽にやれるわ」
それぞれが配置につく。怪物のようなウィルスはただ私たちを獲物のように見つめる。
「足、引っ張らないでよ?」
「誰に言ってんだ? お前こそ、邪魔はするなよ?」
「言ってくれるじゃない。私が一番多く倒すんだから!」
美生と香里奈は一目散にウィルスに向かって攻撃する。ウィルスの鋭利な爪が美生に襲いかかるが、美生はそれを『ゲイボルグ』で防ぐ。そして、紅い槍の先端は、凶暴なウィルスのコアを突き刺す。
香里奈は『ヤタノカガミ』を振るって氷の壁を作る。氷の壁で打ち上げたウィルスに向かって飛び、『ヤタノカガミ』をウィルスの脳天に打ち込む。そして、地上に降りずに姿は変え、『ソーラー・エネルギー』で地面のウィルス達は焼き払う。
「ちょっと! 危ないじゃない!」
「は! そこでちんたらやってるやつが悪いだろうが!」
「腹立つわね! これが終わったら、一発ぶん殴ってやるんだから!」
美生と香里奈は皮肉を言いながらもウィルス達は一掃する。私は2人を突破してきたウィルスを斬り伏せる。
「こうして戦うと、案外大したことはないわね」
「一体一体が凶暴なだけで、装甲は弱いみたいだね。攻撃力が高いから、一瞬の油断が命取りだけど」
「なら当たらなければいいだけの話ね。以外と簡単な話じゃない?」
「そうも言ってられないよ。ほら、第二陣がこっちにきているよ」
相当していたはずのウィルス達がまた攻め寄せる。飛んでくるウィルスを美生は『ゲイボルグ』を投げて迎撃する。香里奈も『ヤタノカガミ』に『エネルギー』を集中させる。
「まだ序盤だとはな。これは少し、骨が折れそうだぜ」
「結構面倒なことになりそうね。まぁ、簡単に食い下がるつもりはないわ!」
2人はウィルスの群れに向かって攻撃する。美生の背後をとったウィルスは鋭利な爪を美生に振るう。すると、大振りな盾が美生の背後を守る。
「後方不注意は死に至るよ?」
「悪いわね。後ろを守ってくれて」
「ったく、はしゃいでいるからだろ?」
「香里奈ちゃんも、罵るのは後にしてね」
アリスは2人を守りながら、『ウィングユニット』のピットでウィルスを撃ち抜く。突進するウィルスをレーザーで焼き切ると、その背後のウィルスもピットで脳天を撃つ。
かくいう私は、『エネルギー・ブレード』と『正宗』を二刀流で構えながら、ウィルス達は一掃する。
「『ギリシア・コード【α】。モード:ブレードダンサー』」
『正宗』の一撃に合わせて、その軌道で『エネルギー・ブレード』が同時に放たれる。1フレーム分の斬撃がウィルスの斬り裂き、別のウィルスまでもを斬る。そして、私は『正宗』を地面に突き刺し、自分の周囲に『エネルギー・ブレード』を6振り展開しては回転させる。
「『α・スパイラル』!」
回転される『エネルギー・ブレード』は私に迫ってきたウィルス達を無残にも斬る。私が『正宗』を地面から抜くと、『エネルギー・ブレード』は『正宗』に戻る。
後ろからウィルスが私を強襲する。すると、私は『ヴァルハラ』を持ち、ウィルスの口にいれ一発放つ。デザートイーグルと同等の口径がウィルスの口内で炸裂し、ウィルスの頭部は破裂する。
「『ギリシア・コード【β】。モード:ガンスリンガー』」
『ヴァルハラ』を構え、私は後方から2人を援護する。美生と香里奈は背中を合わせながら、ウィルスの群れを掃討する。
「次から次へと出てきやがるな。こりゃ、『トロイの木馬』よりもやばいかもな」
「そう? 私は手応えあっていいけど?」
「よく言うぜ。てか、ちゃんと数は数えているんだろうな?」
「それ言っちゃう? 多すぎて10からは数えてないわよ」
美生と香里奈は言い争っている割りには、息のあったコンビネーションでウィルスの群れを次々と倒していく。香里奈が飛ぶと同時に美生が『ゲイボルグ』でコアを刺突する。そして香里奈が『ヤタノカガミ』でウィルスの頭部を粉砕する。
「全速力で行くわ!」っと、美生は『アーク・エネルギー』を充填させる。
「『ギリシア・コード【Ζ】。アーク・ドライブ』!」
美生は『アーク・エネルギー』を見に纏う。体か発せられる電気は、まさにゾーンに入ったと思わせるものだった。神速の域に達した美生の速度は、目に見えぬ早さでウィルスを殲滅する。
「『Ζ・レイブス』。この早さには誰にも追いつけないわ」
美生が通った道には『アーク・エネルギー』の残像が残る。ウィルスは瞬く間にコアを貫かれ、その場で消滅した。美生は髪を間引かせながら、次の標的に向けて『ゲイボルグ』を構える。
「次は誰?」
美生が『ゲイボルグ』を構えながら威嚇する。ウィルス達は間髪入れずに美生に攻撃する。すると、後ろから冷気を纏った大斧を構えた香里奈が、ウィルス達は蹂躙する。
「私の獲物は残しているだろうな?」
「遅いじゃない? 危うく全部やるところだったわ」
「ぬかせ。こんな奴ら、1人じゃ無理だろうが」
香里奈が『ヤタノカガミ』を振るいながら軽口を叩き合う。ウィルスが香里奈を襲うと、香里奈はカウンターで大斧を振り回す。
「これは、どっちが倒れるかのチキンレースだな」
「それって、私のこと? それとも現状?」
「現状に決まってるだろうが。見てみろよ。まだ来やがるぜ」
香里奈と美生が一掃しても、ウィルスは次々と湧いてくる。『暗黒階層』特有のものか、はたまた外部の悪意のあるもの仕業か。
今はもうそれを考える余裕などない。私は前線に出て、『正宗』を構える。そして、『エネルギー』を溜め、ウィルスの群れに向かって放つ。
「『α・ブレイズ』!」
『エネルギー』を濃縮させた斬撃を前に向けて放つ。すると、ウィルスの群れに直撃し、ウィルスは焼けるように消滅していく。それ反動で、私は『正宗』を地面に突き刺し、片膝達の体制になる。
「はぁ……はぁ……。これでだいぶマシになったかしら?」
「流石の威力ね。でも、あれだけの斬撃、相当『エネルギー』を消費したじゃない?」
「持てる分は全部使ったわ。これ以上これたら、もう持たない」
香里奈に支えられ、立ち上がる。すると、土煙から、それも最も恐れていた事が起きようとしていた。
「嘘でしょ?」
「冗談だろ? まだ出てくるのか?」
掃討したはずのウィルスの群れが再び現れる。4人とも、『エネルギー』を大量に消費したので、これ以上の戦いを厳しいものになる。
「これ以上は詰みだね。どっかに隠れて、あの門のロックを解除しないとまずいよ」
「でも、これだけの数じゃ逃げるだけで手一杯だわ」
「みんなのことは私が死守するよ。大丈夫。全員生かして帰還させるから」
「不穏なことは言わないで。みんなで帰るわよ。たとえ、何時間でも何日でかかろうと絶対ね」
アリスの盾に隠れながら、ウィルスの大軍を凌ぐ。すると、ノイズ交りの無線が聞こえてくる。それを聞こえた香里奈は、私たちに指示をする。
「おい! 『ゲイボルグ』でその門を突き刺せ!」
「何を言って――――」
「いいから早く! それで開くはずだ!」
美生は納得がいかないが、言われたように『ゲイボルグ』を門に突き刺す。
「『コアブレイク・Ζ』!」
美生の『ゲイボルグ』が、門に突き刺す。すると、門をロックしていたウィルスが消滅し門が開く。私たちは急いで門の中にダイブする。そして、『深層階層』に入ることができ、無線も聞こえるようになった。
『大丈夫ですか? でもよかったです。皆様無事で』
「翼? あなたがやったの?」
『はいです! 門のハックしているウィルスを排除するのにかなりかかったですが、なんとか弱体化させたです!』
「助かったぜ。これで無事に帰還はできるな」
私たちは安堵する。しかし、アリスの顔をみるとどこかキョトンとしていた。
「大丈夫?」
「う、うん! 大丈夫だよ!」
アリスはハッとしたように気がつく。どうもさっきから言動がおかしい部分がある。
しばらく休憩したのち、美生は採取したデータの残滓の解読を行うのであった。




