棲みついた敵意
瀬戸内香里奈は『悪性アバター』の一体を捕獲し、もう一体の対処にあたる。カンナギ市の空を飛んでいると、もう一体の反応を発見する。
その反応は『ブレイバー』の反応だった。どうやら、他に動いている『ブレイバー』がいるみたいだ。
「翼、誰が交戦している?」
『今調べるです!』
翼は位置情報を開きながら、他に動いている『ブレイバー』を調べる。すると、カンナギ市の南東で、誰かが戦っている情報を掴む。
『出てきたです! 街の南東で激しい戦闘が起きてます!』
「サンキュー! ならトップスピードで行くせ!」
香里奈は『ウィングユニット』を全開にして現場に向かう。陸路なら数十分は余裕でかかる場所を、空路で5分程度で着く。香里奈が現場に着くと、そこではレーザーで貫かれたロボットが散見していた。
襲いかかるロボットをレーザーで貫通させる。香里奈はその盾を見て落ち着いた頃に話しかける。
「随分と言い暴れぶりじゃねぇか? アリス」
「あら? 香里奈ちゃんじゃん。奇遇だね。香里奈ちゃんも『悪性アバター』を狩ってるとこ?」
『ブレイバー』の正体はアリスだった。彼女も香里奈同様、カンナギ市に現れた『悪性アバター』の討伐に向かっていたようだ。
「あぁ。ここら辺で『悪性アバター』を見てないか?」
「それならここにいるよ。ほら」
アリスは『悪性アバター』が擬態しているロボットに向けて、45口径の『ウェポン』を撃つ。すると、『悪性アバター』はそれを見て驚き何処かへと逃げる。
「すぐに逃げるタイプか?」
「そうだね。あいつは何度もロボットに擬態しては別のロボットに擬態を繰り返している。ピットで追ってもすぐ逃げられて厄介この上ないよ」
「なら、2人でやったほうが早く着くな。行くぞ」
香里奈とアリスは逃げた『悪性アバター』を追う。すると、『悪性アバター』が散布した思われるウィルスが2人の行く手を阻む。
「邪魔だ! どきやがれ!」
香里奈は『ヤタノカガミ』とロッドを連結させて、大振りの斧を構える。
「『ギリシア・コード【κ】』。まとめてかかってきやがれ!」
香里奈は太陽の神の名に反する姿で、氷を纏った姿でウィルスを蹂躙する。その討ち残したウィルスをアリスはピットで焼き尽くす。
「こいつはちと面倒だな。擬態する上にウィルスまで撒きやがる」
「こうしているうちにも、奴はどんどん逃げていくね。雑魚は無視したいところだけど、ウィルスもほっておけないのも事実だね」
「なら、ウィルスは翼に止めてもらうか。翼、聞こえるか?」
香里奈は翼に通信する。
『もちろん聞こえてましたよ! ただいま周囲10キロメートル圏内に、アンチウィルスフィールドを展開中です!』
翼の言葉と共に、『悪性アバター』が散布したウィルス達が次々と消滅する。翼は美生仕込みのアンチウィルスフィールドを広範囲に展開し、ウィルスの出現を抑制した。
「あいつ仕込みなのが癪だが、これでウィルスを気にせずに奴を終えるぜ!」
「さすがだね。翼ちゃんのサポートなら、しばらくは奴の追跡に専念できるね」
『当然です! 件の『悪性アバター』はこの先500メートル付近にいますよ。今頃は時間稼ぎで出したウィルスが出ないことに焦っているはずです』
香里奈とアリスは再び『ウィングユニット』を展開して『悪性アバター』を追跡する。そして、瞬く間に『悪性』アバターに追いついた。
「ようやく追いついたぜ? さぁ、そろそろ観念しな!」
「コケにした分はたっぷり返させてもらわないと、ね?」
2人は『ウェポン』を構えながら、『悪性アバター』に接近する。すると、背後から何かを感じ振り向く。そこには巨大なロボットが2人を強襲しようとしていた。
アリスは『イージス』と『アイギス』でその攻撃を防ぐと、香里奈は振り向いて迎撃する。香里奈の攻撃に大型のロボットはふらつくが、体制を立て直す。
「こいつ、こんなもんも隠していたのか?」
「これは一枚岩では通してくれそうにないね。香里奈ちゃん、まずはこいつの処理からしよう!」
「あぁ! 私が先頭に立つ。アリスは援護に集中してくれ!」
「パワータイプの香里奈ちゃんなら、こいつの前に立つのは妥当だね。援護するから暴れちゃって!」
香里奈は『ヤタノカガミ』を斧のように振り回す。すると、大型のロボットは反撃を加えんとばかりに、香里奈に向けて拳を振るう。
すると、香里奈の『ヤタノカガミ』の力が圧倒し、ロボットの拳が粉砕される。そして、追撃と言わんばかりに、アリスのピットがロボットを無慈悲に襲う。
香里奈とアリスは次から次へと攻めてくるロボットとの戦闘を繰り返す。こうして戦いを繰り返して行くうちに、ロボットの頭数は減っていった。
「これで残るは奴だけだ。さぁ、覚悟してもらうぜ!」
「逃げようだって、そうはいかないんだから!」
香里奈とアリスは『悪性アバター』が潜伏しているロボットを追跡する。アリスは『イージス』と『アイギス』を向かい合うように展開し、磁力を展開してロボットを拘束する。
『悪性アバター』の前に香里奈が立ち、『ヤタノカガミ』を『悪性アバター』の前に突きつける。
「さぁ、テメェらの目的をはいてもらうか?」
「何、命までは取らないよ。でないとっね?」
2人の圧に屈し、『悪性アバター』をこれから起こることをはく。
「俺たちは、カンナギ港に『トロイの木馬』を送った。これも奴からの提案だったんだ! 計画は順調だったけど、突然木馬の反応が切れて、計画は失敗したんだよ! そしたら、奴が今度は新千歳空港に『トロイの木馬』を散布したら、ナノマシンを取り除いてやるっと言われ、ここでその準備をしてたんだ!」
「ほう? それで、ここでその準備を? それも二人掛かりでか?」
「2人? 2人なんて聞いてないぞ?」
アリスは銃口を床に向けて撃つ。すると、『悪性アバター』は恐怖で悲鳴をあげる。
「あと他には?」
「本当にそれしか知らないんだ! あとは――――――」
香里奈とアリスが尋問していると、『悪性アバター』の容体が急変する。
「あ、あが、がががが」
「おい! どうした!?」
「容体が変わった? 一体何が?」
2人が『悪性アバター』の様子を見ていたその時、翼から通信が入る。
『香里奈様大変です! 香里奈様が引っ捕らえた『悪性アバター』も、容体が急変しましたです!』
「一体何が起きてやがる! まさか、ナノマシンが動いたのか!?」
「どうなっているの? まだ何も情報ははいていないでしょう」
翼が監視していた『悪性アバター』にも同様の現象が発生する。それにより、2体の『悪性アバター』が機能を失い、その場に充電切れのように固まった。
ナノマシンによって、元である人物が心臓麻痺で急死したのだ。
「『商人X』……。ここまでして自分の素性を隠したいの?」
「武器に薬物、ウィルスに『悪性アバター』。奴は何をしたいんだ?」
アリスは顎を指で掴んで考える。そして、ある提案は香里奈にする。
「『暗黒階層』に行って直接奴の足を掴むしかないね。危険を伴うの重々承知しているけど、今はそれが最善だと思う」
「そうだな。今日の昼からでも決行しよう」
2人は夜明けのカンナギ市を眺める。『商人X』の蛮行を止める為にも、『暗黒階層』に向かって情報を掴むしかない。
かつての闇市の再来だけは、なんとしても止めなければいけない。
そうしていると、香里奈はふとアリスの顔をみる。彼女の表情はどこか浮かない顔をしていたのだ。
「近いうちに美羽には話しておけよ?」
当然のことにアリスは驚く。
「え?」
「私たちはともかく、あいつはお前のことを気にかけてるんだ。せめて美羽にだけは言っておいたほうがいいぜ?」
「どういうこと?」
「まぁ、経営者の感って奴さ。何十万と人を雇っているとわかるんだよ」
「何それ? まぁ、肝に免じておくよ」
2人はそれぞれの場所に帰る。香里奈はテラスに戻ると『リンク』を解除した翼が出迎える。
こうして、一仕事を終えた香里奈は、翼が作ったクラフトコーラを飲みながら草薙美羽達を待つのであった。




