束の間の安息
今回はサービス回です
訓練が終わってから私たちは香里奈の家の浴場に入る。下半身が麻痺している香里奈は、翼の介助で服を脱がされる。
私たちも服を脱いで浴場に入る。
「いつ見ても大きいわね。さすがは瀬戸内グループだわ」
「元々は社員向けの浴場だったみたい。でも誰も使わないから香里奈が使っているらしいよ」
「そのために天然温泉をこっちまで引っ張って来たのにね。使わないと勿体無いわよ」
私と美生は先に体を洗う。香里奈は翼に介助されながら座る。
質のいいシャンプーで髪を洗う。長い髪だと洗うのも一苦労だ。それは私だけでなく美生も同じだ。彼女の長い黒髪は、手入れがかなり大変だと本人が言うほどだ。
「美羽の髪って綺麗だよね。無駄のない綺麗な髪っというかなんていうか」
「それは美生も同じでしょ? 結構手入れ大変じゃない?」
「大変だよ。1日でも風呂に入ってないとすぐ痛んじゃうし」
シャワーでシャンプーを洗い落とし、髪をある程度拭いてからコンディショナーを髪に付ける。その後にボディーソープで体を洗う。
香里奈は自分の手で全身を洗う。立てないけど体を洗うくらいは普通の人間と変わらないそうだ。
「何ジロジロ見てるのよ?」
「いや、案外体は洗えるんだなって」
「そこまで翼にやらせるつもりはないわ。歩けなくたって、動ける範囲は自分でやるし」
香里奈は上半身を自分の手で洗う。下半身まで行くと、翼にスポンジを渡しては足を洗わせる。
「不便じゃない? 下半身が動かないのは」
「歩けないこと以外は不便に感じないわ。動かない足の代わりに車椅子があるからどうってことないわ」
「長い付き合いだと慣れるものなの?」
「そうね。記者は役員共は表向きは心配はしてくれているけど、奴らの顔を見ているとそれが見え見えよ。それを口実に社長を貰おうとしてるくらいわかるわ」
香里奈が目を閉じながら苦悩していることを話す。その言葉には両親から受け継いだ意志を感じる。
私も香里奈に負けないようにしないといけないらしい。幼馴染だとしても、それは讃えるべきだと思う。
体についた泡をシャワーで落とす。体の泡を落とし切ると浴槽に入る。天然温泉の効力が疲弊した体に染み渡る。
「はぁ〜。良い湯だわ」
「もう。おじさんみたいに言って」
「それにしても広い浴槽ね。銭湯みたいだわ」
体を伸ばしながら風呂に浸かる。丸く纏めた髪に気をつけながら湯船に浸かる。
「香里奈様? お加減いかがですか?」
「良い風呂だわ。ちょうどいい温度に温泉のいい効力ね」
「香里奈はいつも入っているの?」
「いえ、私はいつもフロアの小さな湯船に入ってるわ。ここを使う時はみんながいる時くらいね」
「まぁこの広さなら1人で入るのは気が引けるわね。私でもそうするわ」
硫黄の匂いが鼻に伝わるがそれほど悪くはない。ゆっくりと入るには格別な温度だ。
しばらく入るとそろそろ湯船から上がる。バスタオルで濡れた体を拭く。バスタオルと体に巻くと濡れた髪をドライヤーで乾かす。
美生は体にボディクリームを塗る。美生はそれを翼に渡すと、香里奈に塗る。
風呂上がりの下処理を終えると、食事を始める。今日は彩葉が宿泊研修なので家に誰もいないので、そのまま香里奈の家に泊まる。
「今日は帰らないの?」
「彩葉が宿泊研修でいないのよ。今日は泊まるわ」
「私も悠がいないから泊まるよ。せっかく3人でいるのに失礼だよ」
私たちは食卓で夕飯を待つ。しばらくすると、翼と他のメイドの人達が集まり食事を用意する。
「さすが大企業ね」
私は呆れながら並べられた食事を眺める。香里奈は疑問に感じるように首を傾げる。
「どうかしたの?」
「いや、こんなに高い料理が並べられると言葉が出ないわ」
「そうだね。普段のご飯よりもすごいよ」
香里奈は箸を持つと食事を始める。どうやら私たちに会うように和食にしたようだ。
私と美生は用意された食事を食べる。いつも食べる料理よりも美味しく感じた。
「ふぅ〜。良い食事だったわ。お茶も美味しいし悪いことなしね」
「でも、いつも香里奈はこれを食べてるんだよね?」
美生は香里奈に疑問を話す。香里奈は緑茶を啜りながらそれを否定する。
「いつもはフロアで翼と食べてるわ。今日は2人が泊まるから用意させただけ。明日の朝はフロアで用意するわ」
「なるほど。ねぇ、明日は私が作っても良い? 朝食くらいは用意させてよ」
「美羽の料理も楽しみね。なら、食材を用意させましょう」
香里奈はメイドに指示をすると、メイドはその場から去る。
しばらくしてフロアに戻ると私と美生の寝所か用意されていた。どうやらこの寝室で3人で寝るらしい。ベッドに座ってみるととても寝やすい寝具だった。
「すごいわね。いつもの寝るベッドよりも寝やすいわ」
「さすが大企業。こんなもの簡単に用意できるとは」
私と美生はベッドで横になると天井を見上げる。横を見ると香里奈はすでに寝ていた。
「疲れているみたいね」
「同い歳なのに大人でも大変な仕事をしてるんだもん。それは疲れるよ」
美生は布団を香里奈にかける。訓練で疲れた体を風呂や食事で癒したら私も睡魔が出てきた。
美生はもう寝ているみたいだ。彼女も同じく疲れているのだろう。私も瞼を閉ざし、そのまま眠るのだった。




