影打ち(6)
「話しって言うのは何だい。」
部屋に戻ると紅蓮坊は笑いながらすぐに言った。
「その話しは食事の時にしましょう。」
兵衞は紅蓮坊の言葉を押さ、巴はなぜかその横で苦い顔をしていた。
そして夕食の時間が来た。
「で・・・」
紅蓮坊は怪訝そうな顔をして再度尋ねた。
「鬼らしき者が居る。」
兵衞が口ごもりながら、その口を開いた。
「ならばすぐにやっつけに行こう。」
紅蓮坊は子供のように目を輝かせた。
「あんたは怪我しているでしょう。」
「もう治った。」
「そう言うと思った。」
巴は深い溜息をつきながら、紅蓮坊の袴を捲り挙げた。
傷口に巻かれたさらしは、血が滲んだ状態で現れた。
「無茶するからだよ・・・薬を変えるよ。」
巴に怒られると思っていた紅蓮坊は、拍子抜けした。
「ところで小太郎は・・・」
さっき声をかけた小太郎が、その場に見えないのを紅蓮坊は訝しがった。
「握り飯をもらって、出かけた。
荷車を取ってくるんだと・・・」
「何がどうなっているんだ。」
巴の言葉に紅蓮坊の声が大きくなった。
「あんたのためだよ。」
「俺のため・・なんで・・・」
「私が言ったんだよ・・暫く休ませたいと・・・」
「なんで休まなきゃならん。」
「あんたは感じてないかも知れないけど、その傷結構ひどいんだよ。」
「俺はどうもないぞ。」
「だから言ったでしょう、あんたは感じてないかも知れないって・・・」
巴の声は少し尖っていた。
その声を聞いて、紅蓮坊は萎れた。
「硬い棒でガンガン叩き合っているから、棘が折れ飛ぶのよ。
それがどれ程の速さか解っているの・・ブスブス、ブスブスあんたの体に突き刺さって・・・
普通の人間だったら、その傷で倒れて歩けなくなっているのよ。
奥深くに入ったその棘を無理矢理抉り取って・・ 本当は床につくのが当たり前なのに・・・それなのにあんたは・・・馬鹿みたいに・・外に出て金棒を振り回して・・・」
そこで兵衞が巴の肩を叩いた。
「さっきの話しの続きだ・・今日聞き込んできた話だが・・・」
「何かあったのか、鬼が何とかと言っていが。」
「実を言うと鬼かどうかは解らない。」
「どう言う事だ。」
「刀を求め続けている男が居るらしい。」
「刀・・・」
「異様に刀に執着を持っているらしい。
それが高じて、鬼に堕ちているんじゃないかという噂なのだ。」
「それを斃すという訳だな。」
「そうです。
但し、巴殿の話しを聞いて、あなたは置いていこうと考えたのですが。」
「そんなもん聞く訳がないって私が言ったんだよ。」
巴も話しに加わった。
「それを聞いていた小太郎が牛荷車を取りに行くと言ったんだよ。
あんたを乗せるためにね。」
「今日まではここに泊まります。
明日は早くに出ます。」
「どこに行くかわかっているのか。」
「解りません。
ですが、先ずは秋月に行ってみるべきでしょう。ここらで鍛冶屋と言えば、あそこしかありませんから。」
「何時に立つ。」
「小太郎が帰ったらすぐに。」
二人が話している間に、巴は紅蓮坊の脚のさらしを巻き終わっていた。




