影打ち(7)
翌朝、朝食を終えて四人は宿を後にした。
小太郎は朝早くに帰ってきていた。
その小太郎が牽く牛荷車に紅蓮坊は座っていた。
「小太郎、お前も鬼の話しは知っているのか。」
「最初にそれを聞いてきたのは俺だ。」
「そうか、じゃぁ、どんな鬼か聞かせてくれ。」
「髪の毛は銀色らしい。」
「解っているのはそれだけか。」
紅蓮坊のその言葉を受けて、小太郎は語り始めた。
外見上の特徴は銀色に見える白髪を頭の後ろでそれを纏め結わえている。体は非常に痩せていて背は高い。
身体は細かったがその力は強く、そこらの侍であれば軽く倒すほど剣の技も優れている。
鬼だという証拠には薄いが、額の中央部に大きな瘤状の突起があるらしい。
そこまでを小太郎は一気に喋った。
「額の突起となれば人鬼だろうな・・・
それに剣の腕がたつとなれば、相手できるのは兵衞かな。」
そう言って紅蓮坊は腕を組んだ。
目的の秋月までは普通に歩いて二刻半もあれば着く。
しかし、牛の歩みは遅い。
それを考慮してそれを考慮して、朝食後に紅蓮坊の手当てをしてから、姫方の宿を出たが、どうやらそれでも、実際に着くのはどうやら夕暮れ過ぎになりそうだった。
「この調子では埒があかん。
小太郎、牛の面倒は私達が見るから、先に走って宿の手配をしてくれぬか。」
兵衞が牛の鼻輪を曳く少年に声をかけた。
「おっちゃんが勝手に歩かないように、しっかく見ていてくれよ。」
小太郎はそう言葉を残して、先に駆け出した。
「それと、鍛冶屋にはどう言っておく。」
駆け出しはしたが、すぐに引き返してきて、小太郎は言葉を繋いだ。
「明日お伺いすると伝え、都合を聞いておいてくれ。」
兵衞はそう応えて、改めて小太郎を送り出した。
そこから小太郎は再び駆けだした。
「俺達は都合良く小太郎ばかりを使ってないか。」
牛の鼻緒を牽く兵衞に、紅蓮坊は荷車の上から声をかけた。
「あの子がそれを望み、走り回ることも鍛錬と考えているのであれば、それはそれで良いのではないかな。」
「鍛錬か・・・
脚も癒えたようだし、そろそろ俺も鍛錬を始めようかな。」
そう言うと紅蓮坊は、荷車の上で体を起こした。
「何を言っているの。
あれだけの怪我がそう簡単に治るはずがないでしょう。」
荷車の後ろから巴の叱責が飛んだ。




