↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
66/69

影打ち(4)

 山の端に太陽も消えてから紅蓮坊(ぐれんぼう)は目を覚ました。

 目を覚ましたと言っても、完全に眠っていた訳ではない。側にいた小太郎(こたろう)が起き出した

事も知っていれば、どこかに行ったことも知っていた。

 向こうの木陰では兵衞(ひようえ)と巴(ともえ)も動き始めていた。

 「小太郎がどこぞに行った。」

 その二人に紅蓮坊が声をかけ、二人は近づいてきた。

 「どこぞに行ったって・・どういうこと。」

 「昼の話しで南のことが問題になったろう。だから南を見に行ったんじゃないのだろうか。」

 兵衞が言った。

 「南ですか・・大丈夫・・・」

 「の様だな。」

 心配げな巴の横で紅蓮坊が笑った。

 「南だ・・・」

 戻ってきた小太郎は荒い息の間から言った。

 「ここから南の福童という村で生臭い匂いがした。鬼の匂いだと思う。

 襲われるのはあの村だ。」

 「なぜそう思う。」

 「さっきも言ったように匂いだ。あとは、俺の勘だ。

 間違いない。」

 「勘って・・・」

 巴は半信半疑だった。

 「よし、じゃあ、そこに行こう。」

 「違っていたら・・・」

 「違っていたらそれまでだ。

 俺は小太郎の勘を信じる。」

 言葉を残して、小太郎を供に紅蓮坊は走り出した。

 「行くしかありません。」

 巴も、重い防具を着込んでいるにも係わらず、急いで後を追った。

 兵衞は少し迷ったが、ここにしても何か確証があった訳ではない・・・兵衞も後を追った。


 日がとっぷりと暮れた。

 小太郎が感じた匂いが皆の鼻に届いた。

 「鬼が来る。」

 最初に紅蓮坊が言った。

 そして、その言葉通り鬼が現れ、民家が襲われ始めた。

 紅蓮坊はそれに向け脱兎のごとく駆け、兵衞と巴もそれに続いた。

 鬼は人を襲うのに手一杯で、まだ自分達を斃そうと、挑みかかってくる者が居るとは、考えてもいなかった。

 そこに兵衞を先頭に三人の人間が襲いかかってきた。

 いや、先頭は屋根の上から飛び降りた小太郎だった。

 緑色の鬼の頭上から小太郎の刃が振り落とされ、緑鬼の頭は割られた。

 それに続いたのが兵衞の抜き打ち。それは黒鬼の腹を断ち切った。

 これで各々の相手は一体ずつとなった。

 斃された鬼の後ろに居た鬼達は、さすがにその後の攻撃には身構えた。

 「小太郎は黄色いのを巴殿は赤鬼を・・・」

 「金棒を持ったのは俺がやる。」

 兵衞の声を紅蓮坊が断ち切った。

 「任せます。」

 兵衞はその声に従った。

 紅蓮坊は棘の付いていない金棒を持った、鬼の前に立った。

 「その金棒・・使いやすそうだな。

 俺にくれ。」

 また始まった・・・その声を聞いて、巴は以前のことを思い出した。

 巴は自分の相手である赤鬼を、強いとは思わなかった。

 それで二本共持って来た薙刀の内、鬼の薙刀を使うことにし、藤原国広作の薙刀は地面に置いた。

 それでも、何が起きるか解らないと気を引き締め鬼の相手をした。

 小太郎は黄鬼の廻りを派手に動き回っていた。

 巴の眼にはそれは危なかしく映った。

 「小太郎、調子に乗るんじゃないよ。」

 巴は大きな声をかけた。

 それに小太郎は片手を挙げて応えた。

 それも巴には危なかしく見えた。

 だが、小太郎に鬼を取られている巴の隙を狙って鉄棒を振ってきた。

 遅い・・・巴はそう感じ、その攻撃をあっさりと躱し、薙刀を振った。そして、その一撃で赤鬼を屠った。

 兵衞の相手は巨大な悪鬼だった。紅蓮坊と変わらぬ体の鬼を相手に抜き打ちで対抗していた。それで悪鬼を簡単に斃した。

 小太郎も遊ぶよにして気尾にを斃し、残るのは紅蓮坊だけとなった。

 「おっちゃん、それが勢鬼って奴だ。」

 小太郎が声を飛ばした。

 「親玉か・・道理で強い訳だ。」

 と、言いながらも、紅蓮坊は嬉しそうに笑っていた。

 勢鬼が自分の鉄棒を振ってきた。

 紅蓮坊はそれを自分の金棒で受けた。

 壮絶な金属音が辺りに鳴り響いた。

 それでもどちらも金棒を落とすことはなかった。

 何度も、何度も金棒がぶつかり、その度に鋭い金属音が響いた。

 そして、その度に紅蓮坊が手にする金棒に着いた棘が辺りに飛び散り、誰も近づけなかった。

 お互いの手は痺れていたであろうが、どちらも金棒を手放すことはなかった。

 だが、その均衡もくずれる時が来た。

 ついに勢鬼という鬼の手から金棒が落ちた。

 「俺の勝ちだ。」

 紅蓮坊が金棒を振り上げた。

 が、振り下ろした金棒にそれ程の力はなく、その一撃を躱した勢鬼は金棒は置き捨てたまま脱兎のごとく駆けだした。

 おのれ・・・紅蓮坊はそれを追おうとしたが、脚に数カ所突き刺さった棘のせいで思うように動けなかった。

 その隙に勢鬼はその場から逃げ去った。

 大丈夫か・・・皆が寄ってくる。

 「大丈夫だ。」

 そう言う紅蓮坊の顔は傷だらけだった。

 「只、手が痺れた。」

 紅蓮坊は手を振って見せた。

 「あいつを追いかけなければ。」

 紅蓮坊は気丈に言った。

 「そんなことより、まず手当てを・・・」

 巴は紅蓮坊の近くに寄った。

 「追うのが先だ。」

 「相手は南に向かったようです。

 用を済ませてから追いましょ。」

 「それでは・・・」

 紅蓮坊は先を急ごうとした。

 「その脚では追いつきませんよ。

 まず手当てをしてもらうのが先ではありませんか。」

 兵衞が諭すように言った。

 「解った、頼む。」

 紅蓮坊もそこで折れた。

 「では先ずは、宿を探しましょう。」

 四人は比較的大きな村、姫方に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。