影打ち(3)
兵衞は急いで紅蓮坊の後を追った。
その後を追うのは楽だった。なにしろ、あの体。大きな坊主と言っただけで人々は恐怖の眼で覚えており、その行き先はすぐに知れた。
巴は僅かに遅れて兵衞の後を追い、兵衞と同じ様に紅蓮坊の足取りを追った。
兵衞に遅れること四半刻で巴は姫方に着いた。
村の中央の石の上に紅蓮坊がどっかと座り、兵衞はその傍らに立ち難しい顔をして腕を組んでいた。
「どうしたの。」
巴がその場を和ませるように柔和な声をかけた。
「俺は鬼共はここらに現れるとは思っているが、もっと南の村が襲われるかも知れぬ。
それでも俺は現れる確率を考えると、ここで待つのが一番だと思っているのだが・・・」
「私は南も可能性があるのなら、二手に分かれるべきだと思っている。
二カ所の連絡役には小太郎を当てれば良い・・と考えているのだが・・・」
「それは危ない。
一人の方は仲間が駆けつけるまで、一対六となる。
それではあまりに不利だ。」
紅蓮坊と兵衞とはいつもとは真逆の意見を言っていた。
「私は紅蓮の意に賛成です。
もともと、一対二でも危険だという事で小太郎を参加させた・・・それが一対六では何の意味があるのかということになります。」
確かにそうである。兵衞は自身の意見を取り下げた。
「鬼が南に行くのであれば、後から追いかけようや。」
紅蓮坊は兵衞の肩を叩いた。
「今のうちに休んでいた方が良いんじゃないかい。戦いは夜だろう。」
小太郎の声に皆が肯き、紅蓮坊は小太郎の成長に眼を細くした。
日が西の山の端に隠れた。
小太郎は目を覚まし、辺りを見渡した。
廻りはまだ明るさが残っていた。
まだいいな・・・そう独り言を漏らしながら、小太郎は聞き耳を立てた。
まだ騒ぎは何も起きていないようだった。
小太郎は少し南に、脚を伸ばしてみることにした。
小太郎は寺福童という集落まで来ていた。
そこは姫方より南と言うより、南東に当たる集落だった。
そこで小太郎は違和感を感じた。
匂いが・・・何だか生臭い匂いを感じた。
ひょっとして鬼・・・小太郎はそう思った。
間違いかも知れん。だがみんなに知らせなければ・・・
小太郎は自分の直感を信じた。




