影打ち(2)
紅蓮坊は引き返す小太郎を見ても、なぜか先を急いだ。
それを横目で見ながら、小太郎もまた兵衞の元に急いだ
小太郎は兵衞と巴の元に着くとすぐに聞いてきてきたことを話した。
「鬼の素性は判らなかったか。」
兵衛はそれに質問を返し、小太郎はそれに頭を振った。
「どんな鬼でも変わらないのでは・・・
人を殺すのであれば、斃すべきでしょう。」
巴が横から強く言った。
「確かにそうではあるが・・・」
「私達が守るのは、あの子達のはず。そして、ここにあの二人は居ません、ならば私達は如何様にも動けます。」
「それもそうだな。隠すのは我等ではなく、あの子等。
紅蓮と我等で三人。六体程度の鬼であれば何とかなる。」
「俺も居るから四人だ。」
小太郎が声を上げた。
「あなたには牛がいるでしょう。
牛を牽いて後から来なさい。」
「そうすると三人。確実に二対一になる。
俺がいればそれを少しでも減らせら。
だから俺も行く。」
「牛はどうするの。」
「誰かに頼んで、秋月まで連れて行ってもらう。」
「だけど・・・」
「小太郎の言う通りにしよう。」
巴と小太郎の論争を兵衞が打ち切った。
「ところで、途中で紅蓮を見なかったか。」
「見たけど、名にも言わずに走っていった。俺のことは見えてたはずなのになぁ。」
「そんなに急いでいたのか。」
「ああ、突っ走っていたよ。」
「紅蓮がそんなに急いで・・・」
「何かあるのかも知れぬ。
我等も急ごう。」
小太郎はすでに牛車の所に走っていた。
「おっちゃんの道具がない。」
小太郎がすぐに大声をあげた。
「戦うためにいったのだな。
我等も身支度をして後を追おう。」
「私は身支度に時間が掛かります。」
「先に行っている。小太郎と一緒に来てくれ。
戦い自体はすぐに始まりはしない。」
兵衞もすぐに飛び出していった。
巴は自分の防具を取り出すと、草陰で着替え始め、小太郎は荷車の牛を牽いて人を探しに行った。
「勝負は夜になってからだな。」
兵衞は走りながら呟いた。
巴はあれこれと装備が面倒で手間が掛かっていた。
それでも、小太郎が還ってくるまでに準備を終え、小太郎と伴に駆け出した。
だが、装備が重くなかなか脚が前に進まなかった。
なるべくこれを身に着けてまま動かなければ・・・巴は唇を噛んだ。
紅蓮坊は最初に襲われた集落、立石を超えた当たりで小太郎を見かけたが、構わず突き進んでいた。
次はどこが襲われる・・・紅蓮坊は考えた。
最初に襲われた立石から、次に襲われた原古賀までは約一里。
それから考えると次に襲われるのは約一里先・・・それは姫方辺り。
そこで捕らえなければ、そこからは北か、東か、南か・・・行き先が解らなくなる。それでは拙い。鬼の跋扈を許すばかりになる。
間違いであればどうする・・・紅蓮坊は悩んだ。
東や北に行くのであれば姫方で止まる。だが、南に行くのであれば・・・
それは賭けだった。
そして、自分の考えが当たることに縋るしかなかった。




