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影打ち(1)

 秋月まで戻る道筋・・・

 「どうにもひどい男だったな。」

 紅蓮坊(ぐれんぼう)が吐き出すように言った。

 「そうでも無いと私は聞いたけど。」

 巴が反論を唱えた。

 「どう言う事だ。」

 「何でも女の人から先に誘ったとか。」

 「俺が聞いたのとは真逆だな。

 お前は誰に聞いたんだ。」

 「誰って・・・女の人だよ。」

 「そして紅蓮殿は主に男に聞いた・・・違いますか。」

 兵衞(ひようえ)が笑いながら口を挟んだ。

 「そのとおりだが、なぜ解るんだ。」

 「与三郎殿はやつれては居たが、見た通りの色男。また、相手の女は私の聞いた所、かなりの美人だったとか。」

 その言葉に、紅蓮坊と巴は頷いた。

 「つまり、嫉妬ですよ。

 男は男に、女は女に。

 だからその言葉に信憑性は殆どありませんよ。

 まあ、只の噂話としては面白いでしょうが、二人の関係はよく解らないというところでしょう。」

 兵衞はもう一度笑った。

 「何にしてもあのおっさん、無事に着いたかなぁ。」

 横から小太郎の声が聞こえた。


 秋月に帰り着くまであと二日、三人は嫌な噂を聞いた。

 鬼が出るという。そしてその名を盛郎鬼(せいろうき)と名乗って居るという。

 「京の鬼と同種でしょうか。」

 巴が尋ねた。

 「それは解りません。京の鬼と関係あるのか、それとも博多での鬼と同様、全く別物なのかは、何とも・・・」

 さすがの兵衞も答えに窮した。

 「京からの鬼だとすれば、戦えば俺達の居場所が知れるなぁ。」


 「それでは困ります。」

 紅蓮坊の声に、巴がすぐに声を被せた。

 「そうなると、戦うには全滅を期さねばならんが、一人なのか、それとも複数なのかさえも解らん。」

 珍しく兵衞も途方に暮れた。

 「調べてこようか。」

 それを救うように小太郎(こたろう)が声を上げた。

 「それは助かるが、大丈夫か。」

 兵衞の心配そうな言葉に、小太郎は強く肯いてみせた。

 「いつかみたいに、また捕まるなよ。」

 その横から紅蓮坊が揶揄するように言って笑った。


 今いるのが三田川。ここから東に向かう小太郎の後を三人が追いかける。

 連絡は何かがあれば。その都度小太郎からすぐに届き、何もなければ、その夜に纏めて報告する。そう言う手筈で四人は出発した。

 その先立石が一昨日の夜襲われた。

 襲った鬼は複数だったらしいが、生き残った者が少ないため、はっきりした数までは解らなかった。

 小太郎はそこの探索は早々に住ませ、先の村に向かった。

 その後に三人はその村に着いたが、そこの詳しい探索は兵衞と巴に任せ、紅蓮坊は一人小太郎の後を追った。

 小太郎はその翌日に襲われた村、原古賀(はらんこが)を訪れた。

 その村はここらでは比較的大きな村だった。

 それ故、生き残った者も多数いた。

 小太郎はそこで聞き回った。

 どうやら鬼は首領らしき者も入れて六体。種類はよく解らないが、巨大なのが一体、黒いのが二体、後は黄色いのが一体と、緑と赤が一体ずつと解った。

 それを纏める首領というのは他の者に勢鬼と呼ばれ細い金棒を持っていたという。

 そして、この一隊は何かを急ぐように先を急いだという。

 小太郎はそれを伝えに兵衞の元に駆け戻った。


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