潜入(11)
磯村尽ノ佐と木俣弥右衛門は、一体の鬼に苦戦していた。
相手は刺す股という先が別れ、それで敵の体を彼娶る武器を持つ青鬼だった。
その鬼に対抗できず、どんどん追い込まれていったが、それでも自分の命を守るため必死で戦っていた。
そこに遼河の進言によってこっちに来た上妻与一が加わった。
その助太刀がかえってあだになったのかも知れない、ふと気を抜いた尽ノ佐が着る着物の左袖が、青鬼の武器、刺す股に捉えられてしまった。
尽ノ介の躰が捉えられた左肩を頂点に空に浮いた。そして、そこから真っ逆さまに地面に叩き付けられた。
その一撃で尽ノ佐の左肩は砕け、その戦闘能力はほぼ削がれた。
与一は地面でのたうつ尽ノ佐を跨ぎ、弥右衛門を押しのけて、青鬼の前に立った。
相手の得物は初めて見る刺す股。棒の先に棘が着いた鉄製の素股がついている。鬼の力と合わさった、その威力は与一も理解した。何より目の前でその威力を見た。
与一は正面からその武器と対峙せぬようにした。まともにやり合えば体は絡め取られずとも、刀を絡められ、刀を奪われまいとすれば腕を痛める。与一は足捌きを素速くし刺す股を躱し続けた。
捕らえられぬ事に苛ついた青鬼の動きが少しずつ荒くなった。与一はその隙を狙っていた。
そして、一瞬の隙・・与一は大きく踏み込み、刀を振った。
与一の後ろでは首を落とされた鬼の躰が、ゆっくりと地に倒れていった
与一と代わった遼河の前に立った鬼は、自分の手を背に回して隠していた。
得物を見せぬつもりか・・・遼河はこの鬼が自分の腕をつける時に、ちらっと見えた手を思い出した。
確か爪のような物が見えた。
それを確かめようと鬼の後ろに回ろうとした。だがその瞬間、鬼が襲いかかってきた。
何とかそれを躱したが、頬に浅い傷を負った。
やはり爪・・・遼河はその一瞬で鬼の武器を確認した。
そして、鬼切丸を使う自分の速度よりも相手の方が速いと思った。
それを踏まえ、遼河は鬼切丸を地面に刺し、腰裏の二本の短めの脇差しを抜いた。
それに一瞬おくれて鬼が襲いかかってきた。
遼河はその攻撃をとんぼ返りをして避けた。
鬼の攻撃は連続して続く。
だがそれらを遼河は全て軽やかに躱し、時には脇差しを振るって鬼に傷を与えた。
それを続けるうちに鬼の動きが止まった。
こいつは・・・鬼は自分の傷が治らないことに戸惑いの表情を見せた。
そしてその傷は、時を追うごとに増えていった。
日々の鍛錬により、遼河の腕は以前より遥かに上がっていた。




