潜入(8)
そしてまた月中が来た。
いつものように鳥尾六郎は藤六郎義純を名乗って旅に出たが今回も村の人員はそれ程減ってはいなかった。
そんな中で仙原一蔵は、ただ一人で仕入れと称して南にでかけた。
その内情を知った弥次郎は木俣弥右衛門を使って、その旨を山田甚八に伝えた。
それを受けた甚八はこれを好機と捉え、香月鞆子を送り込む計画を立てた。
それを聞いた晴海の方は、今すぐ襲うように主張したが、戦略的な面からそれはすぐに否定された。
その後甚八の意を受け、鞆子はすぐに準備を始めた。
それから三日後・・
「何人か虜にしてくるよ。」
そう言って鞆子は笑いながら六郎の屋敷に向かい、これで潜入したのは三人になった。
「結構ごたごたし始めたようですね。」
博多の町を離れた所で様子を見ていた大童丸は、牙鬼の報告を聞きにんまりと笑った。
「そろそろ、晴海を取り込んだ方が・・・」
その声は末吉のものだった。
「まだその時ではない。」
「それでは、あの二人の子は。」
「そのままだ。
あのまま育ってくれれば、新しき鬼達にとって脅威になり得るだろう。」
「仲間に取り込んではいかがでしょう。」
「今、取り込んでも働く所がない。
我等が全て揃っていれば別だがな。」
大童丸は現時点では、他の古の鬼達を探すことに専念することを、末吉に伝えた。
ただし、先ずはここ六郎の村を晴海に掌握させるのを最優先とした。
その為に六郎の屋敷に牙鬼を貼り付かせて、そこの様子を監視させた。
その報告の一つとして日とがあまりいないという事が在った。
人がいないとは・・・大童丸はその事に考えを移した。
鞆子は屋敷の中に入り込むとすぐに色気に迷いそうな男を捜した。
いるねぇ・・・あっさりと落ちそうな男を一人見つけて、鞆子はにんまりと笑った。
さて、どうやって落とすか・・・鞆子は楽しむように考えた。
だが、その男を落とす前にその男を子細に観察した。
その結果、その男に対する興味をなくした。
その男はあまりに力がなさ過ぎた。
何の役にも立たん・・・鞆子は今出かけている連中が帰ってくるのを待つことにした
「そろそろやりますか。」
鬼史郎は百々女鬼の顔を見た。
「ああ、そろそろよいかも知れぬ。」
百々女鬼はその顔にニヤリと笑いかけた。
「どうやりますか。」
「二人とも捕まえるのが理想だが、もしも、どうしても邪魔ならば、小僧は殺してもよい。だが、女童だけは傷つけずに、必ず連れてこい。」
「解りました・・それで策は・・・」
「まず、あの屋敷近辺の村を荒らせ。
そこで出て来た小僧を捕まえろ。
そうすれば、女童を捕まえるのは容易くなる。」
「村に居る他の連中はどうしますか。」
「皆殺しで構わん。
それにお前に真の鬼赤、青、緑を与える。
早急に動け。」
そう、百々女鬼は命じた。
承知・・と鬼史郎はその場から姿を消した。




