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潜入(4)

 鞆子(ともこ)は昼前から晴海に誘われたが、身体が痛いと言ってそれを断り、痛み押さえの薬草を採りに行くと偽って、充四郎(じゆうしろう)と供に屋敷を出た。

 二人の行き先は当然森や野原ではなかった。二人が行き着いたのは、博多町中の「出会い」と言われる場所だった。そこは男女の密会の場であった。

 そこでの食事もそこそこに、二人は板襖と障子で仕切られた粗末な部屋に早々に上がっていった。

 そこですることは勿論一つ。鞆子は直ぐに充四郎の体に手を伸ばし、充四郎に見せびらかすように、自身の着物を少しずつ脱いでいった。

 その時、充四郎の目に鞆子の背中が眼に入った。そこには例の観音様が、白い素肌に色鮮やかに浮き上がり、そしてあの森の中で見た尻尾のようなものが・・・

 だが次の瞬間には鞆子にのしかかられ、その背は見えなくなった。


 甚八(じんぱち)は少々苛立っていた。

 間者として二人を送り出してから早三日目・・・自分の予想を裏切り、手下達はまだ帰ってはこなかった。

 甚八は苛々と屋敷の周辺を歩き回ったが、かといって警備のためにおいてある最後の一人を出す訳にも行かず、苛々だけが募っていた。

 なぜ雉(きじ)様は補充を寄こさぬのか・・とも考えたが、それもせんないことであった。

 一方送り出された二人は多忙を極めていた。

 古ノ添にある商家には朝から夕刻までの間は七、八人が集まっており、その間観音谷の集落にも常時四、五人がいた。

 それらが夕刻の飯時には商家に四人ほどを残して集落に戻って来る。

 かといってそこに住んでいるのは、そこの主鳥尾六郎を含め十人程度、その他、商売には関係しない者が三十間軒ほどが屋敷の周りに集まり、それらが一つの集落を成していた。

 また商家からそこに帰った者達の内のそこに住んでいない者達は夕食が終わると、そこからまた別の場所に移動していた。その中には博多に酒を飲みに出る者も居た。そしてその日は帰ってこない者も居る。

 その一人一人を詳細に調べることは出来なかったが、どうやら拠点は三つ、集落自体は仕事には関係なく、古ノ添にある商家でいろんな物を売り、たまに訪問客と何やら商談をしていた。

 肝心のその組織に入る込む方法は・・・

 それは、今日で終わりと言う時に、そこを訪れた者の動きでよく解った。

 それはそれ程心配なく、何か一つ特技があれば良いと言うことだった。

 その者は何の伝手もないようだった。にも係わらず、あっさりとそこの一員となった。

 その男にあった能力と言えば少々腕が立つという事くらいだった。

 ここまで調べて二人は、本来の目的である潜入する方法を掴んだとして、甚八の元に帰ることとした。


 送り込んでから五日目、やっと先の二人が帰ってきた。

 甚八は怒りをこらえながら、色々と聞き込んだ。

 その結果、入り込むのにそれ程の問題はないようだが、その他調べなければならないことが多そうだった。

 その為、補充が来次第調査のためそこに人を送り込む必要を感じた。

 そして、その日の内に甚八は送り込む順番を考え、先ずは木俣弥右衛門を先に送り込み、その数日後に金庫番の弥次郎をその後に送り込むこととした。


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