潜入(2)
鞆子は今日も草の褥の上にいた。
魔力は以前より強くなったとは言え、体を二つに割られ、削ぎ落とされた体力はまだ元には戻っていない。彼女はそれを感じていた。
試しに刀を握ってみる。
それは非常に重く感じ、とてもではないが、それを振り回す体力は今の自分にはない様に感じた。
明日いっぱいは掛かりそうだな・・・
鞆子は刀を側に置いて、再び横になった。
晴海、甚八、充四郎が一部屋に集まっていた。それは鳥尾六郎の村に送り込む者についての人選のためであった。
だが、三人での論議の中から、任せると言ってそうそうに晴海が抜けた。
甚八はそれを話しの中に戻そうとしたが、晴海は下女を呼び酒を持ってこさせた。
それを見て、甚八は溜息をついた。
「弥次郎も呼びましょう・・我等の中で一番の智恵者ですから。」
充四郎が耳打ちし、甚八がそれに頷いた。
それからすぐに弥次郎がやって来て、話しに加わった。
「智恵者のそなたが先に行ってくれぬか。」
甚八はそう話しを振った。
「いいえ、手前は金の計算が出来るのみ。他に取り柄はありません。」
「だが、他に知恵者はおらぬ。
その目で見たことをこちらに伝えて貰えれば、後はこちらで動く。」
「その知らせる手立てがありません。」
「俺の部下を定期的にその方の所に差し向ける。それで連絡は取れる。」
「急なことがあったらどうなさいますか。
私には、こちらから連絡を取る何の手立てもありませぬ。
そうなれば機を逃すやも知りません。
それでは何のための潜入か解りません。」
弥次郎の言はもっともだった。
だがそれではどうするのか・・・話しは、はたと止まった。
「甚八殿が行かれてはいかがですか。」
充四郎はこの一行をの主導的立場である山田甚八の顔を見た。
「それはいかん。」
酒を飲んでいた晴海が突然声を上げた。
それは当然のことだった。自身がもっとも信頼する者を手放すことは、晴海には考えられない事だったからだ。
甚八にとっても、晴海の行動を制御するためには、それは良策とは思えなかった。
「しかし、それ以外に妙手はありませんぞ。」
「それでは残った我等の動きはどうする。」
晴海にそう詰め寄られると充四郎は腕を組むしかなかった。
どう考えても、中村平吉、青井廣兼の損失はこの時に非常に大きな痛手を与えていた。
だが、今さらそれを言っても始まらない。
では誰を送り込むのか・・・
「木俣弥右衛門を呼べ。」
暫く考えてから、甚八が弥次郎に顎をしゃくった。
三人が集まった部屋に、弥次郎に連れられた木俣弥右衛門が入ってきた。
「お主、身が軽そうだが、例えばどこかに入り込んだとして、そこから人知れず出入りすることは出来るか。」
甚八は弥右衛門が部屋に入ってくるとすぐに訊ね、それに対し弥右衛門は首を縦に振った。
これで、最初の潜入役は弥次郎と弥右衛門に決まり、そこから弥右衛門も話しに加わった。
「潜入するにしてもどうやるかですね。」
充四郎が話を前に進めた。
「こっそり入るのは危険性すぎる。
堂々と正面から入るべきでしょうね。」
甚八が自分の意見を言った。
「正々堂々と言ってもどうやって・・・」
「どうすれば入れるかは、私が探ります。」
そう言って甚八が席を立ち、皆も後に続いた。




