悪人達の探り合い
「まさか、クライアントからの出向組だったアンタが失敗するとはな……連れてったウチの部下も全滅したんだろ? 何かしらのスジは通してくれると助かるんだが?」
人身売買組織"グリーディ"を率いるラッゾは、帰って来た怪人……ゴーズの報告を聞いて少なからず驚いていた。
人を攫い、それを"クライアント"に買い取って貰うことで荒稼ぎしているラッゾにとって、そのクライアントから派遣されて来たゴーズは少々扱いに困る存在だ。
ある程度ラッゾの意を汲んで動いてくれるし、有事の際はこうして前線にも出てくれる。その実力も、ラッゾは十分認めている。
しかし、ラッゾはラッゾで信賞必罰を原則としてこの組織を纏め上げている身だ。
部下が失敗した時は容赦なく処分するのに、上から派遣された者だからと失敗しても何のお咎めもなしでは示しがつかない。
何より、部下達の自分に対する忠誠心にも揺らぎが出る。
それはお前達も困るだろう? と暗に問いかけるラッゾに、ゴーズもしたり顔で頷いた。
「ああ、お前達のノルマについては、今回の件が片付くまでは免除となるよう主にかけ合っておく。その代わり……連中については、確実に始末して貰うぞ。俺も協力しよう」
「ああ、分かってる。俺としても、ここまでコケにされたまま引き下がれねえからな」
しかし……とラッゾはゴーズに胡乱な眼差しを向ける。
「そんなに念押しするほど、厄介な相手なのか? そのガキ共は」
「ああ、間違いなく。俺も把握していなかったのだが……どうも我が主は、以前からあのガキ共に目を付けていたようだ。後は考えなくていいから全力で仕留めにかかれと、つい先ほどお達しが来た」
「何ッ!?」
ただ鬱陶しいガキが邪魔をしてきた、くらいにしか思っていなかったラッゾだが、想像以上の大物だったと知り目を見開く。
どちらにせよ、始末するのは決まっていたことだが……クライアントがそこまで注目している相手となれば、また話は変わって来る。
「もし主の望む成果を出すことが出来れば、相応の対価を支払う用意があるそうだ」
「そりゃあいい。やる気も出るってもんだぜ」
笑みと共に、ラッゾが立ち上がる。
ゴーズの前まで自ら進み出ると、拳を握り締めて宣言した。
「今度は俺がこの手で潰しに行く。お前にも協力して貰うぞ」
「いいだろう、準備が出来たらいつものように呼びに来い」
踵を返し、その場を後にするゴーズ。
その背中を見送ったラッゾに、部下の一人が声をかけに来た。
「ボス……これだけ派手に大失敗しといて、生意気じゃないですか? あいつ」
「言いたいことは分かるが、実力は確かだ。クライアントから出向して来た奴を、無碍に扱うわけにもいかねえしな」
「けど、ボス……!」
気を使ってはいるが、やはり不満はどうしても溜まってしまうのだろう。納得いかないとばかりに部下は叫ぶ。
だが、それはラッゾ本人も感じていることだ。
「お前の言いたいことも分かる。だが、今回に関しては向こうの要望で戦うことになるんだ、なら……あいつにはより一層頑張って貰わないといけねえ、そうだろ?」
「なるほど……分かりやした」
にやりと、二人は邪悪な笑みを浮かべ合う。
たとえ利害の一致した間柄であろうと、仲間ではない。
そんな相手には、いかにして負担だけを押し付けて、利益だけを掠め取るかが重要になる。
「上手くやれよ、あんまり露骨にやって睨まれても困るからな」
「へい」




