表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/108

取り調べ

 大悪魔の襲撃から町を守り、みんな無事のまま切り抜けた。


 それは良かったんだが、なぜかその後、俺達は騎士団に拘束され、取り調べを受ける羽目になってしまった。


 本当に、意味が分からない。


「だから、俺達はたまたまあの場に居合わせて、悪魔の襲撃を見て戦っただけですって! 何も悪いことはしてないし、貴族の義務を果たしただけだ! 早く釈放して……せめて、ミュリアに会わせてくれ!」


「君達には悪魔を呼び出し王都を危機に陥れた嫌疑がかけられている。証拠が見つかるまで、ここから出ることは許されない」


 ここに連れてこられてからずーっと、この調子だ。

 取り調べというより、最初から結論ありきで対応されている感じがして、余計に焦りが募る。


 ……ルイスはまあ、なんやかんや上手くやると思うけど、ミュリアは大丈夫なのか?


 というか、そもそも……。


「お前ら、一体何が目的なんだ……?」


「お前達を適正に裁くことだとも」


 心にもない言葉で煙に巻かれて、俺は大きく溜息を吐く。


 何とかミュリアの現状を知る術があればいいんだけど……。


「──これは──どういう──」


「いいから──通せ──」


 今後取るべき行動について頭を悩ませていたら、取調室の外がにわかに騒がしくなった。


 一体なんだろうかと思っていると……扉を蹴破るようにして、思わぬ人物が突入して来る。


「で……殿下ぁ!?」


「やぁ師匠、ひとまず元気そうで何よりだ」


 この国の第一王子、アーメド・ルナ・イオリンデ殿下。

 俺の学友にして、一応弟子? みたいな立場でもある彼が、突然現れたのだ。


「一体どうして……」


「学友が捕まったと聞けば、様子を見に来るのは当然だろう? 何があったのか、事情を話してくれないか? ……最初から、詳しくね」


 殿下はそう言って、取り調べを担当していた騎士を押しのけ、俺の対面に腰掛ける。


 ──と、そこで、机の下を通るようにして、魔力で編んだ糸が俺の手元まで伸びてきた。


 それを見張りの騎士にバレないように掴むと、殿下の声が直接頭の中に聞こえて来る。


(端的に言おう、僕には君達を今すぐ釈放する権限はない)


「……俺達は……」


 何となく、殿下のやろうとしていることを察した俺は、悪魔と戦うことになった流れを……ミュリアとのデートから順番に話し始めることにした。


 突然の惚気話に周りの騎士が「こいつ頭大丈夫か?」みたいな目を向けてくるけど、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。


 ノータイムでスラスラとミュリアの様子を語る俺の話に相槌を打ちながら、殿下は糸を介して一方的に話を続ける。


(僕は次期国王であって、国王ではない。更に言えば、僕を支持している貴族達は少々文官寄りでね、騎士団に対してはあまり強く出られないんだ)


 要するに、今回の俺達の捕縛は、殿下の敵対派閥が関係してるってことか。


(そして連中の狙いだが……十中八九、君達が持つ悪魔への対抗手段だろうね。今回の王都襲撃で、騎士団は果たすべき責任を何も果たすことは出来ず、僕と懇意にしている君達が戦果の全てを独占してしまった。これは、彼らにとっては自分達の沽券に関わる)


 正直、くだらないと思った。

 沽券だのプライドだの、そんなもの王都で暮らす人達にとっては何の関係もないだろうに。


(しかしここで問題になるのは、君達の操る“魔素”が常人にはほぼ習得出来ないということだ。僕も無理だったしね)


 それはまあ、そうだろう。

 ルークウェル家の騎士団でも、クロウやリック団長が魔素の習得を目指したけど無理だったし、ルイスも幼少期から訓練しないと身につかないと言っていた。


(だから、彼らはミュリア・ルークウェルに注目した。彼女の力は魔素というより、その特殊な魔力属性があってこそ悪魔に対抗出来ている)


 ぴくりと、俺の体が震えた。

 そんな俺に一旦落ち着いてくれと言いながらも、ほとんど間を置かずに殿下は言う。


(つまり、悪魔の力なら悪魔に通じる。ミュリアさんの体を調べることで、悪魔の力を抽出して操る術を研究しようとしているんだ。今回の罪状は、それを正当化するためのこじつけだね)


「…………」


 その場で暴れ出さなかった己の自制心を、俺は褒めてやりたくなった。

 要するに、それは……ミュリアを実験台にしようとしてるってことじゃないか。


 一度大きく息を吸って、吐いて……傍にあった水を飲んで、心を落ち着かせる。


 それで? と、軽く殺気混じりの眼差しで続きを促す俺に、殿下は冷や汗と共に続けた。


(当然、僕としてもそんな外道な真似は許可出来ない。ルークウェル家は僕にとって後援の一つでもあるからね。ただ、彼らが何かをするより先に、合法的にミュリアさんを助け出すことは難しい。別口から証拠を揃え、彼女の身柄を奪い返そうとする頃には、手の届かない場所まで移送されているだろうしね)


 そこでだ、と。


 殿下は悪い笑みを浮かべながら、俺に言った。


(ロロン、君の手でミュリアさんを助け出して、しばらくの間二人で駆け落ちしておいてくれ。その間に、僕の方で時間をかけて何とかしておこう)


「…………」


 言いたいことは分かる。王子殿下の支援の下それが出来るなら、俺としても躊躇う理由は無い。


 けどさ、駆け落ちって……もうちょっとこう、言葉のチョイス他になかったの?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ