王子との再会
第一王子アーメド・ルナ・イオリンデ殿下は、現在魔法学園の二年生だ。
王族ということもあって、王城からの通いになっている上に公務もあり、毎日学園にいるわけではない。
それでも、週に二、三日は必ず出席するようにしているとのことで、今日はその日らしいってことで会いに来たんだけど……。
「おお……流石アーメド殿下、大人気だな」
授業の合間の休み時間、ミュリアと一緒に二年生の教室へやって来ると、そこには多数の生徒に囲まれる金髪碧眼の貴公子がいた。
恐ろしいのは、集まっている生徒が男女問わずってところだろう。
女子生徒のみならず、男子生徒からも嫉妬ではなく羨望と尊敬を集めるその姿は、まさに理想の王族と言えるのかもしれない。
「ロロン……どうする?」
「うーん、出直した方がいいかもしれないな。どうせルイスにも助っ人頼もうと思ってたし、そっちを先に……」
「やあ、師匠じゃないか!! 来てくれたなら言ってくれればいいのに!!」
「うおっ!?」
一旦諦めようとミュリアと話していたら、気付けばアーメド殿下がすぐ傍に立っていた。
あまりの速さに、殿下とずっと話していた生徒達も唖然としている。
「ずっと待ち望んでいたんだ、師匠の指導を受けられる日を!本当は入学初日から会いに行きたかったのだけど……生憎、公務が忙しくてね。ようやくだ!」
「あー、その……もちろんお約束なので、指導はさせて頂きますけど、今日はちょっとご相談がありまして……」
「ふむ、相談とは何かな? なんでも言ってくれ」
周囲からの「あいつ何者?」「殿下とあんなに親しげに話して……」という嫉妬の眼差しが集まっているのをひしひしと感じる。
ちょっと居心地悪いけど、アーメド殿下も忙しい身の上だ、用件はさっさと済ませた方がいいだろう。
「実は、俺が所属することになった魔法遊戯研究室なんですが、悪魔の……」
「ちょ、ちょっと待つんだ!!」
アーメド殿下の制止の声に、俺もハッとなる。
そうだ、あの夜の一件、学園側には悪魔が現れたって伝えてあるけど、一般生徒には公表されてないんだった。
うっかり俺のミスでみんなにバレてしまうところだったと、汗を拭っていると……殿下は、ありえないとばかりに詰め寄って来る。
「魔法遊戯研究室!? き、君はてっきり近接魔法研究室に所属するものだとばかり思っていたから、僕も既にそちらへ入っていたというのに……」
「あ、殿下も研究室に所属していたんですね」
忙しいから免除されてたりするのかな、とか漠然と思ってたよ。
「その魔法遊戯研究室が、昨夜の"事故"で色々と設備が破損しまして。誰かに修復作業を手伝って貰いたいのですが……殿下のお知り合いで、魔道具製作に精通していて、手が空いていそうな生徒か教師を紹介して頂けないかな、と」
一通り事情を説明し終えるも、アーメド殿下は口をあんぐりと開けたまま固まってしまっている。
流石に無茶なお願いだったかな……と思っていると、殿下は「一つ確認したいことがある」と小さく呟いた。
「僕の指導は、ちゃんとしてくれるのだな?」
「はい、それはもちろん。殿下のご都合に合わせます」
「それならばいい。魔道具製作に精通した人員だったな? 僕が行こうじゃないか」
「ありがとうございます。……え?」
あまりにも予想外の一言に、聞き間違いだろうかと顔を上げる。
けれど、アーメド殿下は「何か問題でも?」とばかりに言い放つ。
「これでも、魔道具製作に関する知識は一通り習得しているつもりだ。専門の者には劣るだろうが、足手纏いにはならないつもりだよ」
その言葉に、俺だけでなく周囲の生徒も全員唖然となったまま硬直し……。
その日の放課後、本当に魔法遊戯研究室にやって来たアーメド殿下を見て、モニカ先輩が卒倒するというトラブルが起きたりしたけど、ひとまずこれで人員の問題が少し改善に向かうのだった。




