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主人公の力

 ミュリアと二人きりで話したい。

 そう言われた時はどうなるかと思ったけど、特に問題なく終わったようで安心したよ。


 ……どんな話だった? ってミュリアに聞いたら、「ロロンには内緒」って赤い顔してたのは、ちょっと気になるけどな。


 いや本当、何の話してたの?


 でもまあ……お陰でルイスも、俺達に魔素を教えてくれることに納得してくれたから、別にいいか。


「いい? ロロン。君に何かあったら全部終わりだから、君は特に徹底的にやるよ! 覚悟してね!」


「お、おう」


 やけにやる気を漲らせているルイスだけど、今は俺達の馬車に乗って一緒に移動している。

 あの宿場町はそんなに広くないから、元々行く予定だったラインベルク領で訓練出来る場所を見繕おうっていう話になったんだ。


 ルイスも元々ラインベルク領に用事があったみたいで、俺達に同行するのを快く了承してくれた。


 お父様は、まさかこんなところで目的が達成されると思ってなかったからか、「もう帰った方がいいんじゃない?」みたいな感じだったけど。ルークウェル家のお嬢様を預かってるわけだから、ちょっとプレッシャーもあるのかもしれない。


 いやでも、今から引き返すよりラインベルク領の方が近いし……何より、ミュリアの小旅行っていうのも今や今回の目的の一部になってるから、せっかくなら行きたいんだよね。


「とはいっても、魔素は作るまでが一番大変だから、あんまり教えることもないと思うけどね。ちゃんとした使い方を一度見れば、すぐに覚えられると思うよ」


「そうなるといいけどな」


 俺の場合、元の魔力からしてあまり動かすのが得意じゃないし……そもそも、アニメとは別人とはいえ、こいつも天才肌なんじゃね? という疑いがある。


 簡単と言いつつ、どうせ難しいんだろ! と心の中で思っていると、それを察したルイスが「そんなことないよ!」とばかりにむくれている。


 そして、実際にそれを口にしようとしたんだろう、何事かを言いかけて……。


「ロロン!」


「分かってる!」


「え……」


 俺は咄嗟に、隣に座っていたミュリアを庇うように抱き締める。


 直後、俺達の乗る馬車を強烈な衝撃が襲い掛かった。


「うおぉ!? なんだぁ!?」


 お父様の驚きの声。

 馬車が大きく傾き、このまま横転するかと思われた時……ルイスの指先に、魔素の純白の輝きが灯る。


「《突風ウィンド》」


 ただ風を起こすだけの、シンプルな魔法。

 けれど、魔素の力で大きな出力を与えられ、繊細なコントロールで発動したそれはもはや別物だ。


 傾く馬車を完璧に支え、上手く地面に軟着陸。

 無事誰一人として怪我もせずに停車することが出来たわけだけど……それで良かった良かったとはならない。


 俺もルイスも、急いで外に飛び出した。


「こいつらは……!?」


「んー、野盗みたいだね」


 それはそうだろうな、と俺は思った。


 俺達を囲うように展開している、明らかな荒くれ者達。

 問題は、さっきの衝撃は間違いなく魔法によるものだってこと。


 普通、あれだけの攻撃魔法が使えれば、野盗になんてならなくても働き口なんていくらでもある。

 それなのに、これだけの規模で魔法使いが野盗に落ちぶれて徒党を組んでるなんて、ちょっと考え難い状況だ。


「ロロン……!」


「大丈夫だ、ミュリアはそこでお父様と一緒にメメイさんを守っててくれ」


 数は多いし、距離もある。でも、滅魔斬りなら魔法は防げるし、さっきの威力なら何発来ても防ぐだけなら問題ないとは思うけど……どうやって反撃したものか。


 馬車を守るには、この近くから動けないし……かといって、攻撃するには近付くしかない。


 抜刀術しか使えないが故のジレンマに顔を顰めていると、隣に立つルイスが一歩前に出た。


「実のところ、ボクの目的はこいつらなんだ。ここ最近、ラインベルク領近辺で魔法を使う犯罪者が増えてるみたいで……ボクは、こいつらの裏に悪魔が暗躍しているんじゃないか、って睨んでる。それを調べたくって」


 そう語る間にも、ルイスは魔素を練り上げ魔法を組み上げていく。

 野盗達も魔法を放っているんだけど……ルイスは攻撃用の強大な魔法の準備をする片手間で、飛んでくる魔法を全て簡単な防御魔法で叩き落していた。


「そういうわけで、これから先、嫌でも何度も実戦があるだろうから……しっかり見て、魔素の使い方を覚えてね」


 準備していた攻撃魔法が、完成する。

 俺とはまるで違う、軽やかに舞い飛ぶ魔素の群れがバチバチと火花を散らし、空から無数の雷撃となって降り注いだ。


「《雷天霹靂サンダーフォール》」


 ずっと防御一辺倒だったからか、ロクに逃げもせず前のめりに魔法を放っていた野盗達が、一瞬にして制圧されていく。

 死屍累々と言って差し支えない惨状を一瞬で作り上げたルイスは、最後に笑顔で振り返り、一言。


「ね、簡単でしょ?」


 そんな彼女に、俺は大いに叫びたくなった。


 ……これだから主人公ってやつは!! と。

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