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お説教と救援要請

「ロロン……私、優しいロロンのことが好き」


「えと……ありがとうございます……」


「でも……そのために、自分を傷付けるロロンは、嫌い」


「……申し訳ありません」


 悪魔の策謀で襲撃して来た騎士団を殲滅した後、俺とミュリアは獣人の里に戻っていた。

 体に穴を空けられた俺は、すぐに治療を受けて……まあ、致命傷はちゃんと避けたから、命に別状はないんだけど。


 それでも、こうしてミュリアにお説教されているというわけだ。


「私には……ロロンしかいないの」


「そんなことないだろ、今はミュリアにだって友達もいるし、家族だって……」


「違う。それは全部、ロロンがくれたもの。ロロンがいなかったら、私には何もなかった」


 正座していた俺に、ミュリアが抱き着いて来る。

 もう随分と長いこと不便な生活を強いてしまっていて、風呂だって満足に入れないのに、不思議と甘い香りがするのは……なんでだろうな。


「ロロンが死んだら……私も一緒に死ぬから。次にロロンが怪我したら、私も同じところを傷付けるから。覚えておいて」


「それは困ったな……悪魔との戦いも、全部無傷で勝たないといけなくなるじゃん」


「ロロンなら出来るよ」


 ミュリアからの信頼が重い。ついでに愛も重い。

 でも、ミュリアにそれだけ想われていると思うと、喜んでしまう俺もいて……はは、俺も大概だな。


「分かった。ミュリアのために、頑張るよ」


「うん……大好き、ロロン。愛してる」


「俺も愛してるよ、ミュリア」


 抱き合ったまま、軽くキスを交わす。

 ミュリアの俺を抱く力が強くなって、明らかにそれ以上を求められてる気がするけど、流石にこの状況でそれはダメだ。俺の体が持たんし、待たせてる相手もいるからな。


 というわけで、どうにかこうにかミュリアを引きはがした俺は、部屋の前……扉の向こうで立ったままこちらの様子を窺っている子へ声をかける。


「テオ、いるんだろ? 入って来いよ」


「っ……」


 恐る恐る、といった様子で、テオが中に入って来る。

 その姿は酷く怯えていて、見ていて痛々しいくらいだ。


「ほら、おいで」


「…………」


 手招きすると、テオがゆっくりと近付いて来て……途中で立ち止まり、ポロポロと泣き始めた。


「ごめん、なさい……! テオ……テオのせいで、ロロン……!」


「気にするなって、テオは何も悪くないんだから。悪魔のせいなんだから」


「でも……!」


 俺の方からテオに歩み寄り、その小さな体をそっと抱き締めた。


「むしろ、ごめんな。俺が油断してたせいで、テオにこんな辛い思いをさせて」


 自分のことは、死ななきゃOKくらいの感覚でやって来たけど……俺が傷付くことで、これだけ周りに悲しんでくれる人がいる。


 そう思うと、ミュリアとの約束がなくとも、もう二度と戦いで負傷なんかしたくないって思う。


「こんなこと、もう二度と起こさせない。俺とミュリアで、絶対に悪魔を滅ぼしてやる。だから安心してくれ」


「……うん」


 今回叩き潰した騎士団は、あくまで悪魔の手駒でしかない。

 全ての元凶である大悪魔、マモンを仕留めないことには、何度だって同じことが繰り返されるだろう。


 問題は、そのマモンがどこにいるのか分からないってことなんだけど……。


「っ、なんだ!?」


 突如、外で凄まじい轟音が鳴り響く。

 一体何事かと、慌てて外に飛び出すと……どうやら、空から何かが降って来たらしい。

 里のど真ん中に、もくもくと上がる土煙。急いで刀を構える俺の隣に、ミュリアが並んだ。


「私がやる。ロロンはテオを」


「……分かった、頼む」


 さっきの話をした直後に、ここで俺が前に出るなんて言うのは流石に気が引ける。

 一歩下がり、テオの傍に付く。


 それでも警戒だけは怠らず、一体何が現れるのかと爆心地をじっと見つめ……やがて、それが晴れていく。


「ふぅ……!! ロロンーー!! ミュリアーー!! いるーー!?」


「……えっ、ルイス!?」


 まさか悪魔が直接乗り込んで来たのか、なんて思ったけど、そこにいたのはまさかのルイス。原作主人公だ。


 本当に予想外の登場に、俺は警戒を緩めてミュリアと一緒に傍へ向かう。


「ルイス、どうしてここに? 王都の方が片付いたのか?」


 元より、俺達二人がこうして王都を離れているのは、よく分からん言いがかりで捕まったからだ。

 アーメド王子殿下がどうにかするとは言っていたけど、ルイスがわざわざここに来たってことは、そっちが片付いたんだろうか?


 だとしても、よく俺達の居場所が分かったな……。


「良かった、やっぱりいた。でもごめん、片付いてはいないというか……むしろ、余計に厄介な状況になっちゃってて。二人には救援をお願いしたいんだよね」


「救援?」


 思わぬ話に、俺は眉を顰める。


 救援自体は構わないんだが、ルイスがいるのにわざわざ俺達を探さないといけないなんて相当だ。

 まさか大悪魔が動き出したのか、という俺の予想を肯定するように、ルイスもまた険しい表情を見せた。


「大悪魔が、王都を丸ごと乗っ取ったんだ。今、アーメド殿下がルークウェル家を本拠地にして奪還作戦を考えているところ。二人にも、この作戦に協力して欲しいの」

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