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夢現ドロップ  作者: 橘 雫


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3/12

悪役顔……?

ヒーロー登場です!

子猫系美少女から、訳も分からずいきなり悪役令嬢認定をされてしまいました。

どういう事なんでしょうか?



「スラッと高い身長に、手足の長いモデル体型!お胸は……若干寂しいかしら?」



こてりと可愛らしく首を傾げて美少女に言われました。



グハッッ!!!

クリティカルヒットです!

胸を押さえよろめく私。



そこには触れないで下さい!

デリケートな問題ですよ!?

これ以上触れられると私のHPは0になります!

私の胸に行くはずだった栄養は全部、身長に取られてしまったんです!

ぐんぐんすくすくと伸びた身長は今や167センチ、胸の為に飲んだはずの大量の牛乳が行き着く先を間違えた結果ですよ!



「ですが、顔は綺麗系ですし、つり目に長い睫毛、左目の下のほくろも高得点ですわね!」



ガラスのハートに致命傷を負わされ、ずずーんと落ち込む私をよそに犯人である美少女のテンションは鰻登りです。



「この学校に転入できると言うことは、試験をパスしたと言うことですもの、学力だって問題無し!ヒロインのライバルに相応しいハイスペックですわ!!」



何でしょう?

私の話しらしいのですが、私おいてけぼりです。

目の前の美少女なんて今にもくるくる踊りだしそうですよ?

私との落差よ……。



……そう言えば、校門前で朝からこんなに騒いでいて、先生とかに注意されたりしないのでしょうか?

心配になった私がきょろきょろと周りを見回すと、登校中の皆さんの視線が微妙な事に気が付きました。

何だか、好奇心に満ち満ちている目が半分、可哀想な者を見る目が半分です。

それはそうですよね、学校の門の前でお嬢様と小市民が謎の会話を繰り広げているんですもの、気にもなりますよね。

まあ、お嬢様が一方的に盛り上がっているんですけど……。



腕時計を確認すると時間もかなり厳しくなってきていたので、そろそろ解放して貰っても良いでしょうか?

こっそり居なくなったりしたら後で美少女には怒られるかもしれませんが、このままだと転校早々遅刻して母親に張り倒されてしまうので!



「見付けましたよ、園子様。急に居なくなったと思ったら、こんな所におられたのですか」



「ひょっ!?」



バレると解放して貰えそうに無い気がしたので、ちょっとずつ気付かれぬよう、静かにじりじりと後退りを始めた私でしたが、今度は下では無く頭上から聞こえてきた低い美声にビクッと驚いて足を止める事となったのです。



「ああ、驚かせてしまいましたね。申し訳ございません」



「いっ、いえいえ、大丈夫ですよ!」



「あら!うるさいのが参りましたわね!」



美少女に『うるさいの』と言われたのは、身長が私より頭一つ分位高く、すっきりと清潔感のある短髪に服の上からでも鍛えているのが一目で分かるぴしっと姿勢が良い、武士のような雰囲気のイケメンでした!



「園子様、このような場所で一体何をされているのですか?こちらのお嬢様が遅刻してしまいますよ?」



「宮緒!ご覧なさいな!!彼女こそ私が前から求めていた逸材なのですわ!」



「話しを聞いていませんね。園子様、人様を指差すなんて行儀が悪いですよ。ですが……、確かにとても素敵なお嬢様ですね」



美少女に指を差された私を見た切れ長の瞳が大きく見開かれたと思ったら、外見からは想像もつかないほどに甘く微笑まれました!

笑うと片頬にだけえくぼが見えて、凛々しいイケメンの見せた予想外の可愛さにキュンとしたんですけど、これが前に心の友達が熱く語っていたギャップ萌えというやつなのでしょうか!?



「はじめまして、私は宮緒 蓮と申します。こちらの浅見 園子様の執事をしております。お嬢様のお名前をお聞きしても?」



「は、はじめまして!笹森 千夏です!」



宮緒さんが丁寧にお辞儀をして自己紹介と共に美少女の紹介もしてくれたので慌てて私も自己紹介しましたが、『執事』という普段聞く事の無いワードの出現に驚きで目が彼に釘付けになりました。



え?え?執事さんって現実に存在するんですか?

本物の執事さんなんて生まれて初めて見ましたよ!

執事さんが付いてるなんて、こちらの美少女は本当に本物のお嬢様だったんですね!

宮緒さんは青葉台の男子の制服を着ていますし、私と同じ位の歳ですよね?

学生をしながら執事さんとか凄くないですか!?

ですが、失礼ながら見た目は執事さんと言うより、SPとかの方がしっくりきそうです……。



「笹森千夏様ですね。では、千夏様とお呼びしてもよろしいですか?」



「えっ!?いやいやいや、私なんて様を付けるほどの者じゃありませんよっ!しがないただの一般人ですから!」



ブンブンと手を振りながら自己申告します。

様付きで呼ばれるとか、そんなのファミレスとかで順番待ちの時に呼ばれる位ですからね!

こんなイケメン執事さんに様付きで呼ばれるなんて、畏れ多すぎてさっき美少女……改め、園子お嬢様によって致命傷を負ったガラスの心臓が止まってしまいます。

小市民の繊細なハートは絹豆腐並みに脆いんですから、気を付けて下さいね!



「では、千夏さんとお呼びしても宜しいですか?」



「えっ?あ、はっ、はい!」



いきなり下の名前で呼ぶ許可を求められて驚いてしまいました。

宮緒さんはコミュ力が異常に高いタイプなんでしょうか?

出来れば心臓のためには笹森と名字呼び捨てでお願いしたいところなんですが……。

こんなイケメンに親しげに名前呼びされ続けたら、どきどきし過ぎて寿命が縮みそうですもん。



宮緒さんはにっこり微笑みながらどぎまぎしている私を見ています。

すみません、挙動不審で。



「私の事は蓮とお呼び下さい」



な、なんと!?

苗字では無く、いきなり下の名前の呼び捨てを御所望ですかっ!?

そ、そんな、初対面の方をいきなり呼び捨てとかコミュ力MAXみたいな事、私には出来そうに無いんですけど!



「あら!宮緒ったら彼女の事をそんなに気に入ったの?いきなり下の名前で呼んだり、自分の名前を呼び捨てにして欲しいだなんて言うの初めてよね?」



「ええ。そうですね」



園子お嬢様の質問に否定もせずに頷く宮緒さん。

余りにあっさり頷いた事に園子お嬢様がまあっと大きな目をますます大きくして驚いています。

宮緒さんは私を見たままにこにこしているんですが、柔和な雰囲気を出しつつも圧が強い気が……。

まさか、下の名前で呼ぶまでこのまま見詰められるんでしょうか……、



「こんな短時間で宮緒を落とすだなんて、さすが私が認めた悪役令嬢ですわね!」



嬉しそうに笑う園子お嬢様。

や、やっぱり私は悪役令嬢扱いですか!?

このつり目が原因なんでしょうか!?

こんな中身が小市民な悪役令嬢って、どうなんですかね……?



と、言いますか!

落としていません!

宮緒さんを落としたりしていませんよ!!

初対面のイケメンをいきなり落とすなんて特殊能力、私には備わって無いですから!!



宮緒さんもにこにことしている場合では無いです!

早く園子お嬢様の勘違いを訂正しないと!

何となく面倒な事になりそうな匂いしかしないので、今のうちにちゃんと誤解を解いて下さいよ〜!!






手直ししたり加筆したり、かなり元から離れてきたような……(汗)

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