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夢現ドロップ  作者: 橘 雫


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2/12

朝の怪奇現象?

ある意味、真のヒロイン様の登場です(笑)

……はっ!



校門前で色々と回想したりしていたせいで、思ったより時間をロスしちゃっています!

今日は職員室に寄らないといけないから、早めに家を出たというのにこれでは意味がなくなってしまいますよ!



急ぎ足で校舎に向かおうとする私の目に、部活のジャージとは思えないお洒落なジャージを着てランニングしながら横を通り過ぎる人達や、ぴかぴかの黒塗りだったり真っ白だったりと見るからに高級ですといった感じの車が続々と並んで停車し、運転手さんが恭しくドアを開けるとパリッと手入れされた制服姿の男女が優雅に降りて来る光景が飛び込んできました。

どうやら私がぼーっとしている間に、朝練を終わらせてきた人や少し早く登校する人が来ちゃったようです。



この光景って昔、母が持っていた少女漫画を見せて貰った時に描かれていたセレブ学校の登校シーンそのままですね!

テレビでしか見たことのない様な車が展示会場みたいに並んでいますが、残念な事にご縁が無さすぎて車の名前までは分かりません。

ですが、とんでもない高級車である事だけは庶民の私にも分かります。

傷のひとつも付けたなら、大変な事になるぞっていう威圧感が半端ないので! 

それにしても……、セレブの人って本当に自分では車のドアを開けないものなんですね。

急いでいる時とか不便そうな気がしますが、必ず運転手さんによる人動ドアなんでしょうか?



しかしながら、いくら馴染みの無いマンガ的光景だからといって、いつまでも眺めているという訳にはいきません。

私には急いで職員室に行くという使命があるので!

初日から遅刻だなんて先生方にもご迷惑をお掛けすることになりますし、そんなことをしようものなら鬼の形相の母に張り倒されかねません!

と言うか絶対に張り倒されてしまいます!

ぶるぶる。



急げ!とばかりに慌てて職員室に向かおうと足を踏み出した、その時でした───



ぐわしっ!!



「うひょっ!!?」



いきなり、制服のジャケットの裾がぐいーっと引っ張られて、後ろに仰け反ってしまったのです!

思わず年頃の乙女にあるまじき微妙な声を上げてしまいましたが、咄嗟に片足を踏ん張った私はぎりぎりで引っくり返る事を防ぎました。

凄い、凄いですよ!私の反射神経!

良い仕事してますよ!



「貴女!どちらのお家の方ですの!?」



「はい?」



予期せぬ転倒の危機を何とか脱し、バクバクする胸に手を当て落ち着こうとする私に後ろから可愛らしいソプラノの声が掛けられました。

私を引っ張った犯人は声からするに女の子の様です。

もしかしたら転んでいたかもしれない私は「いきなり後ろから人を引っ張ったら危ないですよ!」と一言注意しようと後ろを振り返ったのですが、何故か声の主が居ません。



え?ええっ!?

声はすれども姿は見えずって、もしかしてこれって怪奇現象だったりしますか!?

丑三つ時でも逢魔が時でも無い爽やかな朝に怪奇現象とか何それ怖い、と慌ててこの場を離れようとした私に再び声が掛けられました。



「ちょっと!私が声を掛けていますのに、聞こえませんの!?」



「!?」



ひぃっ、また聞こえましたよ!?

ついでにジャケットもグイグイと引っ張られています。

どうやらこれは怪奇現象などでは無い感じですね。



声の主は反応しない私にご不満だったらしく、少しイラだったような声は後ろから……では無く、若干下の方から聞こえてきたような気がして視線をつつ~っと下に下げてみると───



「!!」



発見!!

発見しました!!

子猫的美少女を発見です!!



背は私の胸位でしょうか。

茶色のふわふわの腰までの髪に、ぱっちりクリクリのおめめ、つんとした鼻とちっちゃな口の美少女です!

凄いですね、唇とかぷるんぷるんのさくらんぼ色ですよ!

漫画やドラマに出てくるような光り輝く美少女です!



「だ、大丈夫ですの?」



「あ、はい。大丈夫です。ご心配ありがとうございます」



美少女の眩しさに目をしぱしぱとさせていたら心配されてしまいました。

すみません、貴女の眩しさに目が潰れそうになっただけなので問題ありません。

ところで、良く見ると華奢な身体に私と同じ制服を着ていますが、お隣にある附属中学の方なのでしょうか?

とても小柄で可愛らしいですが、小学生ではありませんよね?



そんな年齢不詳の美少女が今、私の全身……上から下までをどことなく舐めるような視線で見ている気がするんですが、そんな筈ありませんよね?

もしや、こんな所で突っ立っていた私を何か困っているんじゃないかと心配して声を掛けてくれたんでしょうか?

少しばかり乱暴でしたが……。



明らかにどこかのお嬢様であろう美少女に意味不明にじろじろとチェックされ、内心冷や汗がたらたらです。

なんでしょう?

貧乏臭いオーラでも滲み出ていますか?



「少し屈んでいただけるかしら?」



「は、はい」



美少女から逆らえないオーラをひしひしと感じたので素直に屈みます。

すると小さな紅葉のような両手で頬を挟まれ、右に左にくりんくりんと顔を方向転換されました。



「あ、あの??」



「やっぱり思った通りでしたわ!合格ですわっ!!」



「!?」



何の事だか全く分かりませんが、何かの試験に合格したようです!



「先程初めて見掛けた瞬間にビビッときましたのよ!貴女こそ、私が探していた逸材ですわっ!貴女、お名前は何ておっしゃるの?何年生ですの?まさか中等部の方じゃありませんわよね?」



「さ、笹森 千夏です。高校2年生です。今日からこの学校にお世話になります」



矢継ぎ早に質問してきた美少女の眼がとってもキラキラしています。

「転校生でしたのね。それでは今まで見つからなかったのも仕方がありませんわよね」なんて謎の独り言の後、美少女が私を見上げ声高らかにおっしゃいました。



「私のライバルである悪役令嬢は貴女で決まりですわ!!」



……えーっと、ちょっと何言われてるのか分からないんですけど、どなたか分かる方、説明してくれません!?





次はヒーローの登場か……?

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