スタートライン
ムーンライトノベルズの方に投稿している物に
加筆しての投稿です。
皆様、はじめまして。
笹森 千夏と申します。
16歳の高校2年生です。
突然ですが、私はこの度人生の新たな第一歩を踏み出す事となりました。
具体的に言うと今日は転校初日なんです。
『人生の新たな第一歩』とか言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、転校ってそれ位の出来事だと思うんです。
何せ、知らない人ばかりの所に一人で飛び込むんですから、心細さが半端じゃないですとも!
『青葉台附属高等学校』と彫られた立派過ぎる校門を前に、緊張と不安で顔が引き攣っていないかとても心配です。
自他共に認める少々きつめの顔が強ばって、余計にきつそうに見えたりしていませんかね!?
ううっ、中身はただの小心者な小市民なのに、見た目で損するタイプなんですよ!
そもそも、絵に描いたような小市民代表の私が、今や天下の青葉台附属高等学校に転入することになるなんて、夢にも思ってはいませんでした。
こうなったのも、人生の転機というものが思わぬところにぽろっ落ちていたのが原因なんですけどね!
この青葉台附属高等学校というのはここ2〜3年で一気に知名度を上げた学校なんですが、それまでは何事にも可もなく付加もなくという所謂普通の附属高校でした。
それが突然、とんでもない大企業がスポンサーに付いたそうで、大学と附属高等学校共に学業や部活のレベルを一気に底上げして今や文武両道を誇る日本でも有数の学校にまでのし上がったんです。
初めてこの話を聞いた時はドラマか小説みたいだなぁって思いましたよ。
学業は有名な塾から定期的に人気講師を招いて補講を行ったり、芸術方面でも各プロの演奏家や美術家が専門的な授業をしてくれるんだそうです。
部活も施設や設備が充実して、中学や他校の有力選手達が自分の才能をより伸ばそうとこの学校に挙ってやって来るんですって。
スポーツ推薦枠での争いとか凄そうですよね。
それに、大企業がスポンサーなだけあって、あちらこちらの企業の御子息御嬢様も入学されています。
怖いので調べたりしてはいませんが、そういう方達からの入学時の寄付金は半端ではないそうです。
現実にこんな少女漫画とかに出てくるようなセレブ学校があるとは思いもしませんでしたよ。
そんな現実離れした学校に、社宅住まい、父は中小企業の課長で母はお弁当屋さんのパートという、まさにTHE小市民の私がこの度転入する事になったんです!
謎ですか?
謎ですよね!
不思議ですよね!?
なんて勿体ぶってはみましたが、そんなに謎でも不思議でも無いんです。
驚いては頂けると思いますけど。
と言うか、当事者の一人である私が一番驚いたんですけどね!
実は父親がたまたま貰った一枚の宝くじが当たったんですよ!
それも、まさかまさかの1等です!
あの時は家族三人で本当に当たっているのか信じられず、何度も何度も数字を見返して、目が乾いて痛くなってきた頃にようやく当たっているのを確信できたんですよね。
父も母も当選を受け入れた瞬間、その場でそろって後ろに倒れましたが、母が手にした宝くじを手放す事はありませんでしたよ。
しっかりがっしり握り締めたままのそれはもう気合いの入った気絶でした。
因みに私は立ったまま白目で気絶していましたが……。
そんな訳で、私は父の一生分の運を使い果たしたかもしれない当たりクジパワーと何故か母に強く強く勧められて、将来性バッチリの青葉台の編入試験を受ける事になったんです。
勉強だけは真面目にしておいて良かったですよ、かなり難しい試験でしたけれど何とか受かりましたから。
父と母と3人で試験結果を見た時は泣きましたとも。
本音を言えば、今までの学校も悪くは無かったですし、お友達もたくさんいたので離れるのは寂しいですが、試験に受かったからには貴重な機会を貰ったと思って頑張るしかありませんよね。
私の転校が決まってからは、お友達皆でこまめに近況報告し合おうと約束しました。
現実離れしたセレブ高校で心身共に小市民な私にお友達が出来るのかを心配してくれているみたいです。
皆の優しさに泣きそうなんですが!?
本当に良いお友達なんです。
心の友達ですね!
心の友達と別れる寂しさに心折れそうな私ですが、運を使い果たした(?)父の為にも、何としても将来良い企業に就職しないといけないのです!
運が無くなった父を、会社リストラ等の悲劇が襲ったりしたら大変ですから。
多分、母もその辺を心配して私にこの学校への転校を勧めたんだと思います。
……何やらそれだけでは無い気配も母からはぷんぷん感じますし「目指せ玉の輿」とか小さな声で呟いていた気もしますが、それは聞かなかった事にしましょう。
今回の宝くじの当選金は大きかったですが、所詮はあぶく銭ですからね、いつまでも有るわけではありません。
母の希望で築浅の中古一軒家を買う予定ですし!
社宅での日々の闘いに疲れていたそうで、凄く喜んでいましたよ。
実際にどの様な闘いが繰り広げられていたのかまでは知りませんが、奥様同士は大変らしいです。
家の購入と高校に納めたお金で残金はかなり寂しい事になったそうですが、私の学費分はしっかり残してあるから安心しなさいと父が言ってくれました。
何かあれば、私のコツコツ貯めたお年玉貯金もそっと差し出そうと思います。
そんなこんなで、小市民代表のような私ですが、今日からこの青葉台で何とか頑張らねばなりません!
……ただ、顔はきつくとも雰囲気が貧乏臭いとかでいじめられたりしないか、それだけがとっても心配です。
どうか、どうかどうか庶民にも優しい人達に出会えますように!
切実なお願いです!
小説の舞台となる学校の説明会でした。
次のお話しから主要メンバーが登場していきます!




